~守部~
♪ BGM : ハンター×ハンター- Anxiety
トンネルの終わりが見えてきた。アグニズは先陣を切って進んでいた。その燃える頭が、松明の役割を果たしてくれていた。登れば登るほど、どんどん空気は重くなり、ナニカの存在を強く感じるようになっていた。そのジンは、一行のものよりはるかに強力であった…
「アンタたち、何が起こってもいいように準備しておきなさい。」とパリが険しい表情で告げた。「この先にハルの石があるかどうか分からないけど、大きな障害が待ち受けてるはずよ。」
ここまで来たら後には引けない。アプルは不安で、お腹のあたりがざわざわするのを感じた。恐怖が胃を締め付けた。でも友達が周りにいる。彼らがいなければ、もうとっくに逃げ出していただろう…それ以前に、ここまで辿り着けたかどうかも怪しい…
グレーイは、目の端でその様子を観察していた。話しかけようかと思ったが、言葉が途中で迷子になってしまった…先ほどアグニズと並んで歩くアプルを見て、思わず取ってしまった態度を後悔していたのだ。一方でアグニズは、決然とした足取りで歩みを進めていた。石のことしか頭にないようだ。もし見つければ、父親であるカザンに初めて勝つことになる。彼の胸中が、今どれほど燃え上がっているかは、想像に難くない。
そうして歩いているうちに、いつの間にか、トンネルの終着点へと辿り着いていた。そして、彼らは目の前の光景に、ギョッとして足を止めた。そこにあったのは…扉だ。木の扉で、石で縁取られた、新しく、なめらかな、ただの扉。現実味がない…取っ手は指輪の形をしており、来訪者を中へ誘おうとしている。なぜこんなところに扉が?その疑問だけが、頭の中に浮かんだ。
「こ…ここに入る前に、ちょっと作戦会議をした方がいいんじゃない…?」とアプルがぶるぶる震えながら言った。
「今更そんなものしたって、何になる?」と石炭のエルムが、自信たっぷりに言った。
目がキラキラと輝いている。どうやら今はアグニズではなくザグニの時間らしい…間違いなく、この扉の後ろにいるナニカと対峙する準備は、バッチリなようだ。そして冷たい金属の取っ手を引き、一行は中に入った。
扉の向こうは別世界だった。広大な空間、高い天井…まるで巨大な獣の巣穴のようだった。
しかし、なぜかグレーイはこの場所に見覚えがあった。そうだ、幻覚で見たのと同じ場所だ!しかし、何かが違っている…洞窟の腐敗臭がここでは最高潮に達していた。アグニズが進もうとしたその時、パリが石炭を止めた。
広大な空間の奥、アプルは冷や汗をかいた…引き返そうと思ったが、振り返ると扉が消えていた。そこにあるのは、分厚い石の壁だけだ。暗闇の中に、二つの赤い目が輝いていた。縦に黒い線が走っている。
「なんだ、俺様が怖いのか?」
その声がみんなの脊髄に響いた。既に頭のてっぺんから爪の先まで硬直しているアプルは、叫びたい気持ちをやっとの思いでこらえた。
突如、ザグニが火の球をその生き物めがけて投げつけた。その発火性の球は、その生き物の顔の近くで止まり、まるで大きなランプのようにその顔を照らした。お陰でみんなが、その顔をじっくり見ることが出来た。
それは、ここに棲みつく邪悪な霊でも、みんなが想像していたものでもなかった。それは…巨大な蛇、だった。緑色のトゲだらけで、眼差しは光線のように鋭い。マジマルだ。
しかし体中、黒檀色の尖った竜骨状の鱗で覆われている。まるでドラゴンだ!
口を開け、鋭い歯と二つに分かれた細い舌を見せた。まるで笑っているかのように見える。今日の食事が目の前にいることを喜んでいるのだろうか。アプルにはそう見えた。誰も動こうとしなかった…ザグニ以外は。
「怖がるのも無理はないな。」鼻にかかった陰険な声が、再び話し始めた。「俺様の名はアテリス。この場所の守部だ。ここまで貴様らが来れたのは、そこにいるペテン師のお陰だな?まあ良い。少し楽しませてもらおうか…」
ペテン師?パリのことか?ここにいる唯一のマジマルはパリだが、みんなが、この自称守部の幻覚から抜け出すのを助けたのも、またパリだ。その時、ザグニが炎をさらに強めながら、蛇に向かって歩み寄った。
「俺らにくだらねぇ幻覚を見せたのは、てめえか!?」と石炭は叫んだ。「まあ、そんなことはどうでもいい。しかし守部さんよぉ、てめぇがここにいるってことは、ハルの石もここにあるってことでいいんだろうな?」
「その通りだ!」アテリスは嘲笑った。「どうやらお馬鹿さんではなさそうだ。そうだ、その石は俺様の後ろにある。よく見ておけ…これが貴様らに見せてやる最初で最後の機会だ!」
メラメラと炎に包まれながら、大蛇を見てプッと挑発的な態度で吹き出した。少し浮かび上がって確認ると、蛇が言っていることが本当であると分かった。そこには巨大なメンヒルのようなものがあった。一方、カルシネ大陸で取れるような、ただの火山岩にも見えた。
「これがハルの石か?」とザグニが尋ねた。
答える代わりに、守部は尾でその石を叩いた。すると石は、まるで黒い絵の具を垂らされたかのように突然暗くなった。そして、まるでランプが石の奥底に入っているかのように、石から何十もの赤い光が放たれた。その光は、まるで心臓の鼓動と同じように、どくん、どくん、と瞬いていた。
何か神秘的で不気味なものが、この中で待ち構えているようだ…本当に伝説の石と対面したのだ!
「貴様ら、ハルの石を易々と手に入れられるなどと、思ってはおるまい?」と巨大な蛇が尋ねた。「貴様らは俺様のルールを破り、そしてこのアテリス、貴様にそれを後悔させてやる!」
「ルールって言った!?」パリが怒鳴った。我慢が限界に達していた。「そんなことどうだっていいんだよ!何様のつもりだ!?神か!?てめぇはただのインチキで馬鹿な蛇じゃねぇか!」
「貴様、俺様に口答えするのか?」と、パリの横やりに苛立ちながらアテリスが言った。「貴様、呪われたフクロウよ。貴様はここにいるべきではない。なぜこのエルムどもと一緒にいる?」
「あんたに答えを教えてやる義理はないわね!」パリが続けた。「よく覚えておくことね!あんたは自分がハルの石の守部だと言うけど、あんたは何者でもないのよ!」
「ああ、貴様に一つ言っておくが、その神こそが俺様にこの石の守部という役割を与えたのだ。神が俺様に精霊を使える能力を授けた。俺様は誇り高きマジマルだ!
「エルムどもの堕落した心が、貴様には見えぬか!?簡単に俺様の幻覚に引っかかるなんて、無様もいいとこだ!俺様たちはこんなつまらない連中と一緒にいる必要はないのだぞ!」
「よくもまあ、ベラベラと言いたいことが出てきやがる。」ザグニが口を挟んだ。
ニヴォーラの妹、カリニもこの大蛇、アテリスの幻覚に囚われ、アグニズと同じように自身を制御できなくなったことは、火を見るよりも明らかだ。どれだけのエレムを殺してきたのかまでは分からない…だが、このマジマルは精霊を操る、恐るべき才能を持っていることは確かだ。桁外れの強さであることが想像できる…
アテリスがザグニと問答している間、グレーイは石をじっと見つめ、低い声でそっとパリに話しかけた。
「これが本当にハルの石で、幻覚じゃないってどう証明するんだ?」
「幻覚じゃない。」エルム型になってるフクロウが囁き返した。「間違いなく、これは幻覚なんかじゃない。この石は他の物とは違う。奇妙なオーラがこの石から出ているのを感じる。思っていたよりずっとヤバそう…」
パリだけがその「オーラ」を感じ取ることができた。これまでに感じてきたどのオーラにも似つかないものだ。石の中には何か、説明しがたいものが住んでいるようだ…そう、何か生きているものが…
ザグニの方は、アテリスを挑発し続けていた。その目つきを見ると、火のエルムが行動を起こすのは時間の問題だと分かった。ザグニは完全に石炭の体の主導権を握っており、敵を倒す事しか頭にないようだった。
「このクソミミズ野郎が!」とアグニズは叫びながら炎を激しく燃え上がらせた。「ぶっ潰してやる!」
「確かに、神があんたに力を与え、石へ導いたようね。」パリが付け加えた。「でも…どう言えば分かるかな?あ、そうそう、あんた哀れよ!本物の守部の魂を持ってないじゃない。まあいいわ、すぐに思い知らせてあげる!」
アテリスは笑い出し、その笑い声は長く続いた。その笑いは大蛇自身よりも恐ろしく、アプルはパリに糊付けされたようにピッタリと寄り添っていた。グレーイはニヴォーラと、その体験談のことを考えて、激怒した。トゲの生えた蛇から発せられる恐ろしいジンを感じ、この戦いは困難なものになることを悟った…しかし、全力を尽くすと心に決めていた!
ザグニの炎は、ありとあらゆる方向に揺らめき続け、背中の上部まで燃え広がっていた。まるで今にも爆発するのではないか、というくらいに火花がバチバチと散っていた。
「貴様らのようなゴミくずに気に入られなくて良かった。」とアテリスは静かに言った。「判決を言い渡す時が来た…貴様らを死刑に処する。」
ハルの石の守部、アテリスと一行が向き合った。
そしてこの敵は、彼らが思っているよりもずっと手強い相手だった…




