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98話、主水

ーーーーーー天文二十四年九月初旬・赤間関・陶隆護ーーーーー



御屋形様よしたかから大内家お抱えの警固衆からお迎えが来ると聞いているが、瀬戸内海の海賊か。「なんとか海賊の娘」という本を本屋でみたことがある。確か村上だったかな。そうだ、村上水軍だ。織田信長に対抗するんだったな。御屋形様よしたかそんなすごいやつも配下にしているのか。どんな人物なのかワクワクしてきた。


冷泉さんたちとはそろそろの合流する手筈になっているが、



「神門川におっても暇ですからな。」

と言って、この男尼子左衛門大夫が着いてきている。

なんでこの人着いてきたんだ。というかいつまで、俺の城で居候をする気なんだ。



尼子左衛門大夫の他に、湯浅五助、井上弥左衛門、が俺の共だ。小姓に可児才蔵、下柘植小猿、山名鹿之介をつけ、交渉役の切り札として武田源太郎も連れて来させた。源太郎は左衛門大夫と違って、自室に籠っていたかったようだ。


そして、今回護衛として忍衆を張らせている。お供の中に入る千賀地半蔵がその息子面白い男を連れてきた。


「ほう、ここが赤間神宮か。本当に赤いのだな、半蔵。」


「うるさい、主水。何度も申すが、我らが主出雲介様の御前じゃ。落ち着かぬか。猿は面だけにせい。」


「失礼な。これは被り物じゃ。この下には、光源氏も驚きの美顔が隠れておるのよ。」


「猿顔同士仲良くいたしましょう!主水様。」


「主水。」


「おぉ、どうかしたか?出雲介様。」


「お前を、忍衆の副官としたが今更後悔しても遅いか?」


「藤三郎殿が気に食わぬならば、この左衛門大夫が引き受けようぞ!儂はどうもこの主水が気に入った。どうじゃ?主水、儂の直臣とならぬか?」


「奉公構は出さぬよ。」


「陶の殿様よりも尼子の旦那の方が見る目があるじゃねえか!そもそも、陶の殿様は聞いていたような鬼面おにっつらじゃねえ。優男って感じじゃねえか。これなら昔見た、出雲阿国歌舞伎にも出れるんじゃねえか?」


「無礼な!」


耳元でうるさいぞ、五助。弥左衛門たちも怖いって。才蔵は慌ててるし、鹿之介は、、刀抜いちゃってる。源太郎はなんかニヤニヤしてるけど。


「ほう、湯浅五助。この俺は尼子左衛門太夫様の家中のものだぞ?左衛門大夫様は陶家の与力といえども、大内兵部卿様の直臣。その郎党の俺を切りつけたとなると陪臣の貴様はただではおかぬな。そこの若造もそうじゃ。」


ぬぬぬっ!こいつ頭が回るのか。伊達に忍びや山賊の頭を、やっていたわけではなさそうだな。





「遅れてすまなんだ!おぉ、なんじゃ御家騒動か!?」


雅なバーサーカーのご登場だ。


冷泉さんは、共に実弟吉安形部豊英と義弟平賀慎太郎清恒を連れてきたようだ。冷泉さんと御一行の後ろに控えるのは、厚東左衛門少尉隆武さん。その横になんかマロ眉いんぞ?


「主ら!喧嘩はやめぬか。麿は血が見とうない。穢らわしいじゃろうが!」


「失礼ですが、判官(冷泉隆豊のこと)殿、そちらの貴人は?」


「前関白二条公じゃ。出雲殿は御目通りしたことがなかったかの。」


「なんと!もうし遅れました!!大内宿老陶家当主、多々良朝臣陶出雲介、、、」


「良い!そんな堅苦しい挨拶良いぞよ。麿はその方の祖父殿には世話になっておるからのぉ。前の戦でも内藤下野守(内藤興盛)の屋形に逃れておった。なんと言ったかのう。ふらんしすこと言ったか。南蛮人がおっておもしろき話を聞かせてもらった。豊後の町はふらんしすこがいうに南蛮のもので溢れるというしな。この目で見とうて参ったのでおじゃる。それに、折角京の戦火から逃げおおせて、山口の小京都をダメにしとうないからな。その方の父君らの戦働きで、小京都は焼けずともの。」

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