84話、忠義の家臣
ーーーーー天文二十四年六月六日夕暮れ・長門国大寧寺ーーーーー
まずは、主君・御屋形様を救出することには成功した。御屋形様に付き添った兵は30。杉家の100騎、冷泉家の50騎程が、玉祖神社にいたことを考えると御屋形様は、次世代に託していたのかもしれない。
「内藤様、新屋形様と御令弟様はご無事なのでしょうか?」
「亀寿丸様と亀鶴丸様は、我が曾孫藤三郎の居城、神門川城を通過して富田城に入った頃合であろうな。」
「神門川の方は抜かれぬのか?」
「私の手勢、600と大爺上の兵2000が篭っております。三好10000騎と言えど抜けますまい。」
「そうか。その方の城が防長の生命線じゃからな。亀寿を三好に害させてはならん。あくまでもこの儂に大友の目を向かせなけれ、、「伝令にござる、、」
伝令が父の重臣・野上隠岐介じゃないか。
「隠岐!いかがしたか!!」
「あぁ、、若様、、、、。殿が、、、尾張守様が、、、、。」
「もしや!?」
「討死なされました、、。」
、、、、。父が史実で祖父殿に厳島の戦いにて敗れ、自害を果たすのが天文二十四年十月。四ヶ月程早まったと言えど、寿命は変わらなかったか。享年三十五。史実と違うことは、御屋形様に忠をなし死した事だ。
「隆房が、、、。西国無双が何を晒しておるのじゃ、、。いつまでも儂のそばにおってくれれば、、、。」
その言葉と裏腹に、御屋形様は膝から崩れ落ち、顔から覇気が消え失せている。
「御屋形様!!父上は、御屋形様に殉じたのでございまする!!!父の忠を無駄になされるな!!!隠岐、父上の兵は如何程残っておるか!」
「、、、。御先代様のご采配により残っている兵は2500にございます!!!御先代様から兵衛少尉様に、家督は兵衛少尉様に、喪にふくすのは御屋形様をお救いしてからに致せとのご遺言にございます!!!殿!!この隠岐にご指令を!!!!」
「ならば、隠岐、皆に伝えよ。陶当主とその主、大内兵部卿様は無事であると。そして、ここにおる故粘ってくれと。1500を率い直ぐにそちらへ駆けつけると!!!」
「ははっ!!!!一言一句、間違えず伝えて参る!!!!!」




