79話、半蔵の旅路①
今回は、服部半蔵視点です。
ーーーーー天文二十四年六月某日・近江国坂田郡ーーーーー
やっと、殿からのご指令を一つ済ませること出来た。
陶家の当主は尾張守様であり、兵衛少尉様のお立場は嫡男であるが、我が主は兵衛少尉様のみ。
お武家で我ら草の者をあんなにも気にかけてくださる方はおらん。さらに我が息子、弥太郎の槍働きを認めてくださるとは、より一層、兵衛少尉の御為に忠を尽くさねばな。
ここでは、怪しまれぬよう配下の手練6人と共に修験装束に身を包み、近江国を歩く。
「旅のお坊様。」
ん?やけに年寄りだ。村の長老か?
「なんにござろうか?」
「山に妖怪が出るんだが、妖怪を払いことが出来るだか?」
「拙僧、比叡山にて天台宗を学び、各地の霊山から霊山に渡り歩いております。払えるかは分かりませぬが、試すだけ試しましょう。」
「ありがてえ、ありがてえ。」
「酒と、塩を用意していただきたい。」
「塩と酒だな。」
「ええ。して、妖怪とはどのような妖怪なのでしょうか?山と言うからには天狗の類にござろうか?」
「酒を盗み、家畜を貪り、むすめっこを攫うだ。」
酒呑童子の類だろうか?面白い、伊賀の忍術で鬼など生け捕りにしてくれるわ。
「妖怪の姿を見たものは?」
「おら、この目にむすめっこを担いで大鎗を持ったどでかい化け猿だべ。」
猿、、、。猿など伊賀で熊を相手にした儂の相手では無い。
「引き受けましょうぞ。最法、金剛杵を。最光、最認、それぞれ酒と塩を持て。」
「「「ははっ。」」」
「ほんなら、お坊様、おらに着いてきてくれぇい。」
「承知いたした。」
長老に連れられ、山を歩くとなるほど。大きな山がある。
「最辺、縄を。」
「ははっ。」
「では、これより結界をはりまする。皆々様は、山に入らぬように。」
「「「わかっただ。」」」
「地、海、空、金、仏、法、念、破っ!!!!!」
よし。ここまで来れば、村人たちも来ぬであろう。
「では、最法、念仏を唱えよ。」
「何が最法にございますか。頭、ふざけるのも大概にしてくだされ。」
「ふっ、言うようになったな。では、猿狩りと行こうか。」
頑張れ!半蔵!やっちゃえ半蔵!!




