78話、茶の湯
「敵将に茶を点てる機会があるとはな。あぁ、作法などあってないようなもの。ゆるりとくつろがれよ。」
そう言って八上城の茶室にて内藤宗勝が茶を点てる。
さすがは、茶人松永弾正の実弟だ。流れるような手つきで、湯を沸かし、茶を点てていく。
「兵衛少尉殿は茶はお好きか?正直に答えられよ。」
「苦味が苦手です。」
「承知いたした。」
宗勝は、点ていると茶に無数の気泡が出てくる。
「泡を点てることでまろやかな口当たりになりましてな。苦味が苦手な御仁でも美味しく飲めまする。どうせなら美味いものを飲んだ方がよかろう?」
そう言って俺の前に茶が出される。
え〜っと、どうやって飲むんだっけ。まずはクルクル回すんだっけ?いや、作法なんてあってないようなもの!ぐいっと飲んでやる。
ん!美味い!なんか甘い!!本当にまろやかだ。
「いい飲みっぷりじゃ。ほれ、供廻りのお2人も飲まれよ。」
五助、鹿之助、高山友照が茶を飲み終わったところで内藤宗勝が話を切り出す。
「儂は、若武者・兵衛少尉殿を気に入り申した。ここで、大和の梟雄の弟として兄の補佐をしてきた男から助言をいたそう。」
「助言と。」
「敵は1つにあらず、常に君主を守護すべし。」
「備前様!!」
「ふふふ、ただの助言じゃ。」
友照が何か慌てているがどうしたんだ?
「おぉ、そうじゃ友照。この八上城もいずれ落ちよう。そなたややこがおったな。妻子を連れて出雲へ落ち延びよ。兄者には儂から通しておく。備前守殿。友照は、戦に出ては首を取り、領地では弱き者を慈しむ。そんな男にござる。その才覚はこの蓬雲軒宗勝が保証いたす。どうか友照とその妻子をお頼み申す。」
「私には、内藤の血が流れておりまする。同族の交にございます。その身柄お引き受けいたしましょう。殿。図書殿、この兵衛少尉の家臣の一人となってもらいたい。先祖伝来の地を離れることになるがよろしいかな?」
まぁ、宗勝には内藤の血は流れたないんだけどな。
「備前守様、兵衛少尉様、、、。お二人の御恩一生忘れませぬ!!」
「よしっ、これより高山図書は敵の将じゃ!!妻子を連れてすぐに去れ!!!」
「ははっ!!」
ーーーーーーーーーー
「兵衛少尉様、いや、殿。こちらが我が妻お鞠、嫡子、彦五郎にございます。」
「高山鞠にございます。」
そう言った、高山夫人の腕には、小さな男の子が抱きかかえられている。この子が後のキリシタン大名高山右近か。
「美しい奥方とかわいらしい嫡子だな。」
「殿、妻子が褒められるほど嬉しきことはありませぬが、備前守さm、、、内藤宗勝が申しておったことを覚えておりますか?」
「茶は泡立てるとまろやかになるか?」
「違います!!」
「敵は1つにあらず、常に君主を守護すべしにございます。」
「うむ。摂津より大和に入り謀殺して、大和国主に成り上がった者の弟の言葉とは思えぬな。」
「まだ分かりませぬか?」
「!!!敵は一つにあらず、常に君主を守護すべし、、、、もしや、御屋形様の身に!?」
「そうにございます!!三好の策略では、大内様の軍を畿内に留めさせ、大内家の将が留守となった長門山口を大友と共に攻め寄せると言う策略にございます!!!!更に、詳しいことまでは分かりませぬが、大内家臣にも内通者がおるようにございます!!!!!」
「なんと!!早く戻らねば、御屋形様が!!!皆の者!聞いたか?重症で動けぬ者以外我らは、直ぐに山陰を経由し出雲より山口に入る!!!!小猿よ!!忍衆に伝達し、山陰の各領主に、通行の許可を得よ。」
’御意に。’
「では、俺は他の将たちに離脱のことを知らせてくる!!!!」
な、な、な、なんと!!三好め!大友と密通していたとは!!!!!
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