77話、忠義の家臣
あっ、高田七右衛門は架空の人物で、波多野宗高の通称はこちらの創作です。
ーーーーー天文二十四年六月一日ーーーーー
将軍方、赤井家、波多野家の連合軍は波多野元秀率いる5000の兵と合流し、13500で内藤宗勝が籠る八上城を囲むことに成功した。
「七右衛門以下、殿の将の首を送り届けよ。」
「ははっ!」
「そうだな、源太郎。お前が使者として行ってこい。」
「え、拙僧は元は修行僧の身。自分の身を守るすべを身につけておりませぬ。」
え、ってなんだよえ、って。
「行けるのか、行けないのか?」
「行けませぬ。」
「主命だぞ。」
「郎党は家族。」
こいつ!!でも男に二言はないって言うし、、、。
「よし。五助、鹿之助着いてこい。俺自ら八上城へ出向く。」
「「ははっ!!」」
あんな文官よりよっぽどこいつらの方が役に立つ。安芸武田氏の再興をお願いしないぞ?
ーーーーーーーーーー
高田七右衛門を初めとする五つの首を持って、八上城まで馬を走らせる。
やばい、門番たちに弓を向けられてる。お願い!撃たないで!!!!
「勝手に弓を構えるな!!名のある将とお見受けする!!!貴殿の名をもうされよ!!!」
「大内家臣、陶兵衛少尉にござる。後ろに控えるのは、私の家臣、湯浅五助と山中鹿之助。忠臣高田七右衛門殿以下五将の将の首をお返しに参った!!門を開けられよ!!!!」
「高田の首。門を開けよ!!!」
守将の号令で門が開かれる。
「わざわざご丁寧に。七右衛門の首、感謝いたす。」
「高田殿の忠義敵ながらあっぱれにございました。野に晒すのは、その忠義に申し訳ない故、首をお返しに参った。」
「七右衛門も草木の陰から喜びましょう。」
「高田殿は本当に良き武者でござった。」
五助がしみじみと呟く。
「申し遅れました。某、松永弾正に仕える、高山図書にござる。」
高山図書、、、。高山?右近?いや、まだ右近はまだ赤ん坊だろう。その父親か?
「図書殿、ご子息がおられますか?」
「なぜお分かりでございますか?」
柔らかい口調で問うてくる。やはり右近の父親で間違えないようだ。
「その目は優しき父の目でございますからな。私も奥の腹に子が宿ってっていますので。」
「元気なお子なら良いですな。鬼子母神のご加護を得られましょう。某も和子の出産の際は鬼子母神に手を合わせたものです。」
確か右近は父子でキリシタンだったはず。しかし聖母マリアを口に出さないということはまだキリスト教と出会っていないのか。
「備前守の元へご案内致しましょう。首は兵に運ばせまする。」
大和からの同僚の首を持ってきたといえども、高山図書からすると俺は敵将。やはり信心深い人なのだろうな。
「備前守様、友照にござる。」
「おぉ、友照か。大手門に何かあったか?」
へ〜友照って言うんだ。
「いえ、陶兵衛少尉殿とそのご家臣を連れてまいった。」
「何!?通してしまったものは仕方がない。お通しせよ。」
「では、兵衛少尉殿、ご家臣のお2人も中へ。首を持って入れ。入ったら下がって良い。」
高山友照も武官と言うよりは文官チックな顔だが、内藤宗勝も昨日見た時と違い、事務仕事が似合いそうな顔付きだ。
あっそうだ。こいつ一応元は天龍寺の下司職(下級役人)だった。
「陶兵衛少尉にございます。」
「内藤備前守にござる。降伏の進めにござるか?」
「いえ、高田七右衛門殿以下五将の御首をお返しに参りました。」
「なんと!!七右衛門の、、、。」
「お身体も、しっかりと供養しています。」
「それは、なんとお礼を言えば良いか、、、。」
「備前守様、真ん中の首桶が七右衛門にございます。」
「七右衛門、、、苦労かけたな、、、。」
「七右衛門殿の最期誠にあっぱれにござった。」
「七右衛門の首を取ったのは貴殿か?」
「いかにも。兵衛少尉様が家臣、湯浅五助にござる。」
「通りであの七右衛門が首を取られるわけよ。しかし、首を取られるのは戦の常。七右衛門も覚悟しておったであろう。」
内藤宗勝は、七右衛門の首桶をじっと見つめる。
「兵衛少尉殿、誠に忝ない。七右衛門も三途の川の前で喜んでおりましょう。礼とは言いませぬが茶を立てまする。」
「茶にございますか。作法が分かりませぬゆえ遠慮させていただく。」
「作法など関係あらぬ。ただ茶を飲み、皆と話をするのです。」
でも、毒とか盛られない?だってあの下克上の代名詞松永久秀の弟だよ?あ、俺、下克上の代名詞の息子だった。
「備前守殿の点てた茶、、、。ぜひ飲ませて頂く。」
「殿!!!」
鹿之助が心配そうな顔でこっちを見てくる。五助は、、、。うん、、ちょっとは心配して。七右衛門に手を合わせたくなるのは分かるけどさ。
「良い鹿之助。」
「であれば、五助殿と鹿之助殿も飲まれるが良い。友照もな。八上城には茶室がござる。」
内藤宗勝との対面、、、、生きて帰れるのか?藤三郎!!!!
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