76話、丹波の鬼たち
「兵衛少尉殿援軍忝ない!!」
「悪右衛門(荻野直正)殿との漢の約束にございますからな。」
丹波の赤鬼こと荻野直正は下瀬与六郎が放った矢文に呼応し2000の兵を引き連れ、幕府方1500騎と共に内藤宗勝率いる5000挟撃をした。
「矢文では無くご配下の忍に文を届けさせれば良かったのでは?」
「忍も武者も我が郎党。その郎党は家族も同様ですよ。」
「郎党は家族。良き言葉ですな!しかし、援軍本当に忝のうござる。」
「いやいや、これも5000の兵を送られた波多野殿のお陰にございます。波多野殿が派兵して下さなければ、城方3000と、こちら方1500の合わせて4500で2倍程の兵の相手をせねばなりませぬからね。」
「その通りにございますな。波多野殿にはなんと礼を申せば良いか。」
「その通りにございます。内藤宗勝を追い出した折には、西丹波を赤井家が、東丹波を波多野殿が収められれば良いのです。そして、力を合わし外敵を駆逐するのです。」
「今までの遺恨なく、分割統治できるだろうか。」
「目先のことより、目の前のことにございます。内藤宗勝は居城、八木城に籠り我らと対峙することでしょう。波多野殿は、明確にこちら方の姿勢を見せたことで後戻り出来ませぬ。後は、赤井家、波多野家、そして公方様の兵(藤三郎ら)で八木城を包囲するのみにございます。幸い、八木城は、丹波の中央に位置します。完全に八木城は陸の孤島となりましょう。」
「ですな。しかしまずは、此度の援軍の将に礼を申したい。悪右衛門だけで行くのは気が引ける故、着いてきてくれませぬか?」
好きな子と話せない中学生男子かよ。
「分かりました。共に参りましょう。」
ーーーーー波多野勢の陣ーーーーー
真ん中に、大将の芥川孫十郎が床几に腰を下ろし、左側の上座に副将、波多野宗高が。その向かいには、これまた強そうな武将が腰を落ち着けている。
芥川孫十郎の後ろには、ずらりと生首が並ぶ、、、。首実検が終わった後だろうか。そうか、芥川孫十郎は元々は三好家と同じ細川京兆家の家臣で、三好一族。三好家臣と面識があってもおかしくはないか。
「陶兵衛少尉です。此度の赤井家の将、荻野悪右衛門殿を連れてまいった。」
「おぉ、噂に聞く丹波の赤鬼殿にございますか!これはこれは!!」
孫十郎は床几を立ち意気揚々と、直正へ声をかけるが、波多野の将たちは複雑そうな顔をしている。
ドスンッ!
「荻野悪右衛門直正にござる。此度は、援軍誠に忝ない。」
直正は、胡座の姿勢から頭を下ろした。
「!!荻野殿、頭をお上げなされ!!!我らも三好の専制には我慢ならなかった故、兵を挙げただけにございます。」
「総左衛門(波多野宗高)殿、、、。」
「全くにござる。折角、この越中守が松永孫六の首を取ったというのに、赤鬼の涙など見れば、楽しみにしておいた酒もぬるくなる。」
右側に座る男が口を開いた。
「ぐっ、籾井殿、、、申し訳ない、、、、、。」
これが男泣きってやつか。籾井、、、越中守、、、波多野、、、あっ!この丹波の青鬼こと男籾井教業だ!!!赤鬼と青鬼が揃い、さらに丹波鬼までいる。波多野宗高は、漆黒の鎧を見に待ってるから黒鬼ってとこか?てか、籾井教業って実在してたんだ。
「荻野殿からの礼もですが、もう一件で私は参りました。」
「八上城を囲うのですな。」
「さすがは越中守殿。察しがお早い。」
「主より、使者が参り、もう八上城へと向かっているようにございます。兵数は5000。我ら5000騎と、京からの兵衛少尉殿らの精鋭が1500騎、そして赤井家責められたばかりですからな、う〜む、2000騎ほどで13000ほどの兵数になりましょうか。」
「総左衛門殿!!赤井家からは5000の兵を出しまする!!!!」
「なりませぬぞ、荻野殿。赤井家は内藤の攻撃を受けたばかり。まずは、黒井城を初めとする城とその城下の復興に尽力ななされよ。」
「誠に忝ない、、、。」
こうして、8500の兵は、内藤宗勝が籠る八上城へと、足を向けることとなった。
3びきの大鬼。
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