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67話、太郎左衛門尉を助けろ!






俺が担当した公家の家周りが終わり、宿所として使わせてもらっている東福寺に帰ると、丁度じいと鉢合わせた。


「じい、どうであったか?」


「当たり障りなくお納めできましたぞ。」


「よし。これで朝廷工作も終わったな。あとは、太郎左衛門尉を待つだけか。」


「にございますな。」





鹿之助は、まだ胤栄に槍をご教授してもらっている。


「胤栄殿、鹿之助の腕前はどうにございましょうかな?」


「鋭い槍にございますぞ。十文字槍も初めて使うとは思えませんな。飲み込みが早い。」


「殿!お手合せを!!」


「う〜ん、五助、相手をしてやれ。」


「え?なぜ私が、、、。」


「銘酒を手に入れたのだが?」


「や、やります!やります!鹿之助殿、お手柔らかに頼みますぞ!!!」


「はっははは。五助殿は、酒に目がないようじゃな。」


じいが豪快に笑う。




「やぁーーー!!!」


「おぉ、これは鋭い槍だ。先刻の鹿之助殿の槍と比べ鋭さが増している。」


と言いつつ五助は鹿之助の槍をいなす。





「しかし、じい、太郎左衛門尉は遅いな。」


「何をされておるのだろうな?」


「太郎左衛門尉殿は最後に、半家の山科内蔵頭様の邸宅予定だったかと。」


「山科内蔵頭、、、山科言継様か!?」


「にございますな。」


やばいぞ。太郎左衛門尉が危ない!!!






「あ、兵衛少尉殿、寺内を走らないでくだされ!」


「申し訳ありませぬ、恵心様。臣下の一大事故!!」


「ならば仕方ありませぬ。急がれよ。」




「誰か山科卿の邸宅まで案内してくだされぬか!!??」


「拙僧が!!」


東福寺に入った時、掃除をしていた若い僧だ。


「忝ない。」


「馬を2頭連れてきましたぞ。」


「では、案内頼みますぞ。」


僧の的確な案内に、身を任せ馬を飛ばす。


「名は?」


「恵心僧都の弟子、瑶甫恵瓊にございます。」


この若い僧、安国寺恵瓊だったのか!!


「故武田兵部大輔殿は竹若丸なる遺児がいたとか。もしや、その竹若丸殿では?」


「!!いかにも。武田兵部大輔が一子、武田竹若丸とは拙僧のことにございます。」


「天下に名高き武田の血を僧としてここ京で絶やすのも勿体なくございませぬか?」


「甲斐の武田本流も若狭の武田も続いておりまする。安芸武田が滅びたところで武田の血は続きまする。」


「大内の為、若狭、そして甲斐と諱を結びとうございます。その時の交渉役を探しておりましてな。」


「そして安芸武田遺児である拙僧に白羽の矢がたったということにございますか。」


「違いますぞ、恵瓊殿。」


「違うとは?」


「恵心殿より授かったその交渉術を遺憾無く発揮してもらいたい。さらに戦場では、我が家中、参謀山中鷹之助に助言を。どうにござるか?」


「大内は武田の仇にございます。」


「その時分は、先代義興公の時代。当代は兵部卿様にございます。そして、兵部卿様に仕えて欲しいのでは無くこの兵衛少尉に安芸武田当主として仕えていただきたいのでございますよ。この藤三郎が兵部卿様には安芸武田再興の許しを請いましょう。」


「なぜそこまで拙僧を気にかけてくださるのですか?」


「それは武田殿の機転をこの藤三郎が見抜いたからにございますよ。自分で言うのはなんですが、人を見る目は水鏡先生にも勝るとも劣りませぬよ。武田殿はその智弁で、乱世を掻き回す相をされておる。」


「ふふ、水鏡先生ですか。分かりました。この恵瓊陶兵衛少尉様の家臣に加わりましょう。」


「良くぞ申した、武田源太郎護重。」


「!源太郎護重、陶兵衛少尉様家臣として、励ませていただきまする!!!」


「源太郎、お前の智辯期待しておるぞ。」


「ははっ!」





ここで良いタイミングで山科卿の邸宅に着いた。


安芸武田氏遺児、安国寺恵瓊。藤三郎は恵瓊を還俗させ自分の家臣としたようです。



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