64話、部屋探し
ーーーーー天文二十四年五月十七日ーーーーー
丹波を経て、京に入った俺たち先遣隊の任務は大内上洛本軍の宿所の確保、公家への献金、そして朽木へ逃れた公方足利義輝の護衛だ。義隆は管領代として君臨した先代大内義興のように、「公方を京へ」との意思だ。
何があるか分からないと俺率いる500に朽木で公方の守護にあたらせるという訳だ。
まずは、宿探しからだ。義隆も例外ではなく大内家は代々、寺社の保護を行ってきた為、坊主や神官、公家からの覚えが良い。特に、義隆は「末世の道者」と呼ばれている。
しかし、京にはいくつもの寺がある。どの寺に頼むべきか、、、、。
しかし、折角京まで上京してきたのだ。何か得なければ。
今の時期なら、、京都五山の一つにあの男が修行しているだろう。
若年の僧が境内を掃除している。
「大内家人、陶兵衛少尉にござる。住持殿はいらっしゃるか?」
「これは、大内様の御家人で。住持をお呼びいたします。」
少しの時を待つと、1人の老僧が歩いてきた。
「東福寺住持、竺雲恵心にございます。」
「大内家人陶兵衛少尉隆護にございます。」
この人物、元々毛利元就の推挙で、大内氏の菩提寺の住職も勤めていた人物だ。
「尾張守殿のご子息にございますな。大きゅうなられたものです。」
「お久しぶりにございます。」
「此度は宿所探しにございますかな?」
「その通りにございます。しかし、兵部卿様の宿は愚か、私たち先遣隊の宿も見つかっておりませぬ。」
「であれば、拙僧が尽力致しましょう。そうじゃ、兵衛少尉殿、槍はお好みにございましょうか?」
「槍にございますか。戦場では握りますな。」
「であれば、槍が得意な拙僧の友人が来ております。ぜひ手合わせなさるがよい。」
「ほう、恵心様の御友人で、槍の名手と。」
「それは、凄い腕前じゃよ。」




