59話、再会
「して、兵衛少尉殿、どのようにこの酒を美味くなさるのか?」
「まぁ、見ていてくだされ。」
俺は、屋敷から持ってきた少量の炭を7樽に入れていった。
「ん?炭を入れるのでござるか?」
「その通りです。まぁ、試しに飲んでご覧なさい。」
左衛門太夫は、うかがわしい顔をしておれを見てくる。
「ん!?色が澄んでおりますな!!むむ!!美味じゃ!!!!いつもの酒の匂いが和らいでおりますな〜!!これならいくらでも飲めそうじゃ! 」
この居候は柄杓でもう1杯すくおうとしている。
「左衛門太夫殿、これは民たちに出すものですよ。後で左衛門太夫殿にも、お出ししますので。」
「面目ない。では、この樽を、庭でよろしいか?」
「はい。庭に持っていきましょう。」
天文二十三年八月十日
ーーーーー若宮城ーーーーー
「では、この度集まってくれた皆今宵は無礼講じゃ!!飲み明かそうぞ!!!!」
「「「「「おーーーー!!!!」」」」」
「兵衛少尉様、お約束にございます。」
「おぉ!!そなた達は、あの時の!!」
九人の男たちが杯を持って歩いてきた。
その男たちの顔には見覚えがある。月山富田城で、俺に付き従い駆け抜けた9人だ。おれが十騎駆け藤三郎と言われる所以だ。
「豊井村の佐兵衛にございます。」
「その弟、利兵衛にございます。」
「生野屋村の与作にございます。」
「温見村の利助です。」
「来巻の仁衛門。」
「山田村の田吾作にござる。」
「大藤谷村の助六と申します。」
「瀬戸村の権兵衛にございます。」
「大島村の庄右衛門です。」
「皆、息災で何よりだ!」
「兵衛少尉様、兵衛少尉様は、ここ若宮城を離れられたら兵たちを置いていかれるのですか?」
「ん?どうした佐兵衛。父上におまかせする予定だが。」
なかなかの強さの俺の直下兵団は、俺が出雲へと赴任するにあたって、父に率いさせてくれと懇願された。
「どうか、我らを連れて行ってくだされ!!」
「!!しかし、家のことは大丈夫なのか?」
「我らは元々、次男や三男など、家も継げぬ者たち。であれば、殿のために命を散らせてとうございます。」
「なんと勿体ない臣下を持ったのだろうか!であれば、そなたらに名を。」
「「「あ、ありがたき幸せにございます!!」」」
ちゃんと考えないとな。
「まず、佐兵衛は、豊井佐兵衛護久と名乗れ。」
「ははっ!」
「利兵衛は豊井利兵衛護国と名乗れ。」
「有難く!」
「与作は、生野与太郎護正と名乗れ。」
「勿体なくございます!」
「利助は、温見利助護忠と名乗れ。」
「はっ!」
「仁兵衛は、来巻仁兵衛護路と名乗れ。」
「承知!」
「田吾作は、山田田吾護武と名乗れ。」
「ははっ!」
「助六は、大藤谷助六郎護亘と名乗れ。」
「御意に!!」
「権兵衛は、瀬戸権兵衛護敏と名乗れ。」
「はい!」
「最後に庄右衛門は、大島庄右衛門護則と名乗れ。」
「ありがたき幸せにございます!!」
千鳥足で、五助が歩いてくる。
「おぉ!これは、富田城の9人ではないか!」
「我ら、兵衛少尉様の直臣となったのでございますよ!!」
「であれば、我らは同じ兵衛少尉様の家臣ということか!」
「そうなりますな!」
「まぁ、五助も来たことだし、皆で酒を飲もう!!」
「「「「「応!!!!」」」」」
うん、いい飲みっぷりだ!!
「お前たちには俺の馬廻りとなってもらいたい。」
「我らそのつもりでまいったのでございますよ!!しかし、まさか名まで与えられるとは、、」
「ふふ、当たり前のことじゃわい。馬廻衆筆頭は、五助だ。これよりお前たちが俺の馬廻衆だから、しっかり俺を守ってくれ。」
「「「「ははっーーーーー!!!!!!」」」」
眠いのでねます。




