49話、宇山飛騨守
’藤三郎様。’
「小猿か。如何した?」
’修理太夫とその嫡子三郎四郎、大塚与左衛門の讒言により、宇山飛騨守に蟄居を命じました。’
「でかした!飛騨守殿の居城へと参る。甚太郎!!御屋形様に願い出て、伯耆守殿に、この陣の指揮権をお渡しせよ。」
「ははっ。」
「俺は飛騨守殿にお会いする、五助、千代丸他本陣100騎、着いてまいれ。」
「藤三郎様、御屋形様には、、、」
「伯耆守殿の件と共に、お前が申せ。」
「、、、、、」
後は頼んだぞ。甚太郎。
ーーーーー出雲・雲南・宇山城ーーーーー
「陶藤三郎隆護にござる。」
「藤三郎殿のお噂も伺っております。某、宇山飛騨守久兼にござる。」
今、目の前で対面している人物こそ、尼子忠臣宇山飛騨守だ。事実では、毛利による第二次月山富田城の戦いで、三郎四郎こと義久に斬首にされるが、晴久は、斬首にまではしなかったようだ。
「しかし、誠の忠臣飛騨守殿でも、蟄居とは。尼子も終わりにござるな。」
「首を取られなかっただけでもありがたいものにございます。」
「して、飛騨守殿。貴殿の忠心、尼子修理太夫殿にはとどかなかったようにござるが。ここ、宇山城も、尼子の兵に囲まれておったようにございまするしな。」
「も、もしや藤三郎殿、我が城を囲っておった兵を、、、」
「目の前に敵が、入れば切りふせなければ、私が殺されまする。」
「これでは、修理太夫様に示しがつきませぬ!申し訳ないが、藤三郎殿ここにて、」
うん、後ろからオーラ半端ないって。
「藤三郎殿の後ろに座っておられる方は?」
「私の馬廻、湯浅五助と小姓、工藤千代丸にございます。」
「ここで藤三郎殿をと思い立ちましたが、どうやらそれも無理なようにございますな。藤三郎殿は、この飛騨守に降伏を進めにいらっしゃったのでございましょう。」
「よくご存知で。」
「富田城は、将兵が逃げ出していき、いずれ落ちましょう。しかし、どうか、どうか、某の首で修理太夫様、三郎四郎様のお命を、、、、」
「飛騨守殿程の、仁者が首を切られるのは、勿体なきような気がしますが、大内兵部卿様にお伝えしておきましょう。」
「では、御免。」
ザク
「と、藤三郎殿?」
宇山飛騨守は、落とされた髷を見て戸惑う。
「私の、刀が震えて、飛騨守殿の首を切り損ねたようにござる。しかし、飛騨守殿は、宇山飛騨守など、この世におりませぬ。貴殿は剃髪して、兵部卿様の軍門に加われるがよかろう。」
「、、、、藤三郎殿、、、、、」
宇山飛騨守の覚悟をへし折った形にはなったが、飛騨守程の忠臣、ここで命を落とすのは勿体ない。であれば、大内にその忠義誓ってもらえばいいであろう。




