37話、神西の意地
疲れました。
「この甚太郎、殿のご意思に感服致しました!!!!皆の者!!!何としても我らが主、陶藤三郎様をお守りするぞ!!!!!!」
俺の目の前は、敵味方入り交じって切り結んでいる。
甚太郎も、もう指揮を取れずにいる。
「皆の衆!!よう聞けぇい!!!我らは敵の倍を超える!!!!ならばどうすれば良いかわかるであろう?囲んで殺すのよ!!!!」
「生きて帰れ!死してはならぬ!!帰って皆で酒を飲もうぞ!!!!」
「「「「「応!!!!!!!!」」」」」
そうだ。俺には鼓舞しか出来ない。だが鼓舞はできるのだ。乱戦の中に入っても、俺の近くに来る敵は味方達が払ってくれる。
そして1人、また1人と神西兵が倒れてゆく。
「むむ、藤三郎殿じゃな!!!久しゅうござる!!!!!この乱戦の中に入ってくるとは。大将としてどうなのか!!!!」
「ふふ、三郎左衛門殿こそ!!!御家を残し降伏すべきであったであろう?」
「ふっはっはっはっはっ!まさにその通りよ!!!!戦国武者なら御家を残さねば、じゃが漢として引けぬ時もあるというものよ!!!!」
「あぁ、その通りだ!!!三郎左衛門殿のその意地、藤三郎の意地でひねり潰してやろう!!」
「いいよるわい!我こそは、出雲の住人にて、尼子修理太夫様が郎党、小野好古公が後裔、神西三郎左衛門国通なり!!!いざ尋常に勝負!!!」
「大内兵部卿様が郎党、百済斉王が後裔にて、陶尾張守が嫡子、陶藤三郎隆護なり!!!この勝負勝たせていただく!!!」
三郎左衛門は薙刀を、俺は槍を扱う。
三郎左衛門が俺に薙刀を打ち付け俺が払い、俺が三郎左衛門に槍を突きつけそれを三郎左衛門が払い流しを何度も何度も続けてゆく。
しかし、三郎左衛門は、甚太郎の作った防陣を被害なしで穴を開けた訳では無い。彼自身、傷だらけでかけてきたのだ。
俺との経験の差があろうと、年齢と、傷には勝てない。
経験の差もそれでほとんど埋まってしまっている。
「神西三郎左衛門が子、神西又三郎をこの末武新衛門が討ち取ったり!!!!!」
本陣に構えていた、新衛門が大きな声を張り上げる。
「くっ!又三郎!!!!」
今だ!!!
三郎左衛門の隙をつき、彼の首に槍を突き立てる。
「ぐっ、無念!!!お前の最初の首がこの三郎左衛門か。首を取れ。」
「三郎左衛門殿、並びに又三郎殿は手厚く弔わせていただく。」
こうして、神西親子は、戦国の世に散っていった。
神西三郎左衛門さん。この人は尼子復興軍の一員です。息子の又三郎さんは、三郎左衛門さんの死後、小早川隆景さんに使えることになります。
神西三郎左衛門の死に様、美しくかけたんじゃないかなと個人的には思います。
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