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高嶺の花なんかじゃないんだからねっ!  作者: 日々一陽
第5章 さくらの想い出
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第5章 第12話

◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「全国高校生ロボットコンテスト、決勝戦を開催いたします!」


 トランペットによる勇ましいファンファーレが鳴り響く。

 さあ、いよいよだ。


 選手入場の声と共に勇壮なマーチが流れだし、僕ら選手団は整然と行進を開始する。

 会場である巨大なドームには満員の観客が詰めかけ、全国吹奏楽コンクール金賞のメンバーによる弾けるような生演奏の中、我が星ヶ丘ロボット部はプラカードを持った女生徒を先頭にセーラー服に身を包んだ聖佳が続く。長い黒髪に白い花が可愛い髪留めが映える。そんな彼女を見ながら僕とさくらさんも進んでいく。きっとこの大歓声の誰ひとりとして僕らを応援してはいない。だけど僕らは絶対に優勝する。


「聖佳ちゃ~~んっ!」


 えっ?

 横断幕?


 岩本に竹本、林、菊池、それに山本さんに梅川さん。クラスメイト達が「かわいいよ、聖佳ちゃん」と書かれたピンクの横断幕を掲げて声援してくれている。目立つ! 聖佳が応えてキッスを投げる。どこでそんなこと覚えたんだ、聖佳!


 今日は僕らの復讐の日だ。応援なんて勿体ない。


「ありがたいわね」

「ああ、うん。だね」


 さくらさんと小声で交わす。


「ほら、あそこ」


 さくらさんの視線を追う。

 会場正面の貴賓席、野球のバックネット裏に当たる特等席に彼女の姿はあった。


「朝風総理!」


 5時間後、彼女はここで大恥を掻く。

 彼女の政治生命もあと少しの命。

 さくらさんが待ち望んだその瞬間のために僕も聖佳も全力を尽くすんだ。

 でも少しだけ心が痛い。


「あれっ? あれはもみじっちじゃない」

「ええっ?」


 朝風もみじ、総理のひとり娘であり僕の妹。

 いつものように昨晩も彼女を駅まで見送った。

 もみじは何も知らない、そんな彼女を僕は裏切ることになる。

 彼女にだけは話してしまいたい、もみじならきっと分かってくれるはず……

 そんなことを考えながら駅への道を歩いていると、彼女はぽつりと呟いた。


「さくらさんに嫌われた」


 閉店間際に突然「朝風総理は許せない、大嫌い、だから貴女も大嫌い」と言われた、と言うのだ。彼女はすごく落ち込んでいた。どうしてそんな話を蒸し返すのかと。


 だけど……


「ああそうだ。君のお母さんは浮気とか不倫とか大嫌いって言うけど、だからって彼女の家庭を壊す権利なんかないよ。僕は彼女を、さくらさんを応援するよ」


 驚いたように僕を見たもみじはたった一言「どうして……」と呟いたっきり顔を上げることはなかった。

 辛かった。

 彼女はあのあと泣いんじゃないか。

 だけど、今日のことを考えると僕も恨まれる方がいいんだと思った。

 きっとさくらさんがそう考えたように……


 入場行進を終えると、ロボットによる選手宣誓、そして華々しく決勝戦の幕が開いた。




 第5章 完




【あとがき】


 いつもご愛読ありがとうございます。


 へたれな一平と大胆なさくら……

 得てしてラノベ主人公(男)は鈍感で朴念仁ぼくねんじんで女心が分からないヤツと相場が決まっているのですが、これはあながち小説の都合だけによるものでは無いと思う今日この頃。

 実際、自分自身を振り返っても高1頃までは「ネンネ」なのです。女の子がお洒落に気を使い、格好いいビジュアル系にうつつを抜かす頃、髪の毛はボサボサで制服の汚れも気にしない。そもそも異性への興味より悪友とのマンガ談義に生き甲斐を感じる自分…… 決して異性への興味がないわけではないのですが明らかに幼いわけです。


 だから一平がさくらの完璧な裸体を前にへたれであったとしても、それは決して作者の都合だけってわけじゃないのです。はい、そう言うヤツなんです一平は。


 さて、次章。


 いよいよ、さくらと一平が待ち望んだ復讐の一日が始まります

 朝風総理のおでこにXXXな言葉を描いて大恥を掻かせる……

 それがさくらが描いた復讐劇。

 しかし、それはとても困難なミッションで。


 果たしてさくらと一平、そして聖佳は日本の総理を相手に作戦を完遂できるのでしょうか?

 その暴挙を前にもみじの反応は?

 そして朝風総理は?


 次章「総理のおでこに落書きを!」、是非ご期待ください!



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