第5章 第2話
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閉店後、きららさんを見送ると、さくらさんともみじ、3人でカウンターに並んだ。
「このままじゃダメね」
「ああ、こうやって比べてみるとツインフェアリーズって開放感がないんだな」
今日撮った各店の写真を比べながら。
「うちって外から中の様子がほとんど見えないものね」
「他の店は全面ガラス張りだよね」
「その上、外に大きなディスプレイ置いてメニューとか見せてるし」
「商品の内容も値段も分からないのはうちだけね」
勿論そんなことは最初から分かっていた。だからうちは通りから見えにくいことを逆手にとって会員制を謳ったんだけど……
「やっぱり安心して入ってきてもらうには情報公開が必要よね。あのさ一平さん」
もみじは得意満面に。
「やっぱりここにも中の様子とかメニューとか表示する大型のディスプレイを置こうよ」
「それって前にも言ったけど、すっごく高いんだって。屋外用って普通のモニターじゃダメだろ」
「大丈夫、あたしが何とかするから」
「ちょっと待ちなさい、もみじっち。そんな大金どうするの?」
「あたしの貯金叩いたら何とかなるよっ!」
「貯金、って、ぶたさん貯金箱?」
「今時そんなのないわよ、銀行預金よ! 普通口座よ! 利率はえっと……」
「そこまで聞いてないっ!」
「じゃあ聞いてよ!」
「上から順に言うのよ」
「何の話よ!」
なんなんだ、このふたり。
「ともかく金はあるから心配いらないよっ」
「もみじっちが金持ちなのは知ってるわ。でもそれ200万円超えるんでしょ! あなたの時給で何日分だと思ってるの?」
「えっと、1年分?」
「2年分よ! ねえもみじっち、何のためのバイトなの?」
「趣味?」
平然と応えるもみじにさくらさんは小さく嘆息して。
「監視じゃなかったの? まああいいわ。ねえもみじっち、あなたどうしてそこまでするの? ホントは監視なんかしてないでしょ? ヒマなの?」
「してるわよっ!」
「じゃあどうしてそんな大金を使うの? 監視と関係ないじゃない!」
「でも、あたしだってこの店が大好きだから!」
「あなたまさか、金の力で一平くんを落とそうとか?」
「バカ言わないで! あたしはホントにこの店のためにと思って……」
「いい子ぶりっ子しないでねっ! いくら金を積んでも一平くんは二次元空間に捕らわれたまま、あなたなんかに落ちないわ!」
「だから違うって……」
「まあまあまあまあ、ふたりとも。今日はここまでにしようよ」




