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高嶺の花なんかじゃないんだからねっ!  作者: 日々一陽
第4章 もみじの願い
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第4章 第11話

◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 家に戻ると店の灯りが付いていた。


「一平くん遅かったね。ご飯はもういいの?」

「あ、うん。お腹いっぱい。昔の友達と盛り上がっちゃってさ」


 さくらさんに何食わぬ顔をしてウソをつく。


「よかったわね。もうお風呂はいただいたから入ってね」


 僕は戸締まりをすると、さくらさんと聖佳を残して家へと向かう。


「聖佳ちゃんの情報って見やすくてわかりやすいわね」

「はい、画面に重要と思う順に出しますからね。名前に性別、年齢、今までの注文履歴に来店時間、お店で粘った時間、趣味に家族構成、さくらさん派かもみじさん派かまで全部分かりますよ。さくらさんに教えてもらったことはちゃんと全部覚えましたし……」


 さくらさんと聖佳は週末からのリハーサルをしている最中だ。

 みんなこの店のために頑張ってくれてるんだ……


 居間に入ると灯りを付ける。

 すっきりと片付いた食卓、僕が読みかけた雑誌だけがぽつんと載ったソファーのテーブル。父と一緒の時は雑然としていたこの部屋は、気持ちいいほど綺麗になった。

 決して自分をよく言わないさくらさん。

 あの女を憎んで、自分の父を恨んで、自らを薄汚れているとまで言い切ったさくらさん。

 でも、僕は彼女ほど綺麗な人を他に知らない。

 勿論それは見た目の話なんかじゃなくて。


 もみじの願いは叶えてあげたい。

 そのためには、僕が素直になればいい。

 父の国外追放劇は、あの女だけが悪いって訳じゃない。

 真相は、父とあの女との痴話ちわげんか。

 ホントにもう犬も喰わなきゃ、ネコも喰わないふざけた話だ。

 ドックフード以下だし、マタタビ未満だ。


 だけど……


 窓の外には通りを行き交うたくさんのヘッドライト。

 長年見慣れた光景をただぼんやりと眺めながら、想い出すあの約束。


 そう、僕は大切な約束をした。

 これだけは絶対に、何があっても果たさなきゃいけない約束を。



 第4章 完




 【あとがき】


 いつもご愛読ありがとうございます。


 先日本屋で待ち合わせをしたんですけど、相方が大幅に遅れて一時間以上本を物色しました。正直僕はあまり本を読む方じゃありませんが、読みたい本がほとんどないことに愕然としました(ここで言う「本」とは小説のことで、雑誌やコミックス、新書や実用書などは除きます)。しかしそれは本の所為でも本屋さんの所為でもなく、僕が一種の変人だからだと思います。


 昔は本屋さんに行くとたくさんの本たちが「わたしを買って!」と訴える錯覚に陥ったものです。好きな作家さんもいました。その作家さんの本は見つけ次第片っ端から買いました。流行作家さんでしたので100冊は優に超えたでしょう。しかし、それがどうしてでしょう、今や買いたい本がないんです。僕が変人な上にわがままになったんでしょうけどね。ただ、何というか「気取っている本」が増えた気はします。それは中身の話ではなく見た目の話。まあ、気取って悪いわけじゃないんですけどね。


 と言いながら一冊買ってきました。ハッキリ言いましょう。男性が買うのはとても躊躇われる淑女向けレーベルです。でも面白い! うん、素晴らしいよ、ベリーズ文庫!


 さて本題です。

 ついに「ツインフェアリーズ摘発」の全貌が見えてきました。

 その、あまりにばかばかしい理由。でも、何も知らないさくら。

 そんな中、ロボコンは決勝戦へと進んでいきます。


 次話「さくらの想い出」もお楽しみに。


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