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高嶺の花なんかじゃないんだからねっ!  作者: 日々一陽
第2章 おっぱいスキャンダル
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第2章 第11話

◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 自分の部屋に入ると、窓の外に星空を見上げる。


 なるほど、彼女の躾けがいい理由はよく分かった。

 総理の娘に相応しいようにと厳しく躾けられたから、どこからどう見てもお嬢さまにしか見えないわけだ。

 口をついて出てくる言葉は下ネタオンパレードだけど……


 さて、そのお嬢さまは食後にちゃんとお勉強をする。

 今まで家では宿題すらあまりしなかった僕だけど、彼女を居候いそうろうに迎えたお陰でこれから毎日お勉強に精出すことになりそうだ。

 だけど、彼女と一緒なら、それがちっともイヤじゃないから不思議だ。


「今度の中間試験、数学が悪かったら一平くんの責任ね」

「ひどいなあ、せっかく真面目に教えてるのに。それに中間ってまだ3週間先だよ」

「もう3週間前よ」


 さすがクラス一番の秀才は言うことが違う。


「ところで一平くん、あのお邪魔ムシが化け猫を被ったような女についてだけど」

「お邪魔ムシなんだ」

「そうでしょっ! 何の連絡もなくやってきて、ふたりの晩餐の邪魔をしたのよ。あのお邪魔ムシがいなかったら一平くんは鶏もも肉が2枚食べられたのよ!」

「いや、十分足りたよ。それよりさ、彼女は君がここに住んでることに気がついてたよ」

「えっ?」

「引っ越しのトラックが来たの、見てたんだって」

「まったく油断も隙もポロリもない女ね。それで? 一平くん脅迫とかされたの?」

「まさか。それ以上は何も言わなかったよ」


 僕の言葉に小さく嘆息し、俯くさくらさん。


「そう…… あの、ごめんなさい、押しかけて来ちゃって。ヘンな噂とか立つと困るわよね。やっぱり明日から別々に登校しましょうか?」

「どうして?」

「どうしてって、わたしはあの鳥海翔一郎の娘なのよ。「顔よりおっぱい」「3度の飯よりおっぱい」「地震かみなり火事おっぱい」とまで言われた、あの恥ずかしく汚らしいおっぱい星人のむすめ。わたしの中にはあの父の、忌々しく汚らしい父の血が流れているのよ! わたしなんか! わたしなんかと……」

「何を言ってるんだ? 君は君、お父さんはお父さん、おっぱいはおっぱい、じゃないか?」


 僕の渾身こんしんの慰めギャグにも、彼女が浮かべた笑顔は寂しげで。


「そうね、ありがとう一平くん。でもなぜかしら、わたし、ちょっとだけ分かるのよ。どうして父が母を裏切ったのか。それが例え一瞬であっても、酒に酔った勢いだったとしても、あんなに綺麗だった母をなぜ裏切ったのか、可愛く優しく父に尽くした母をどうして裏切ったのか…… だから……」

「だから?」

「ふふふっ、そうよっ! だからわたしは大きなおっぱいが嫌いなのよっ! おっぱいビッグバンが許せないのよ! あのグラビア女優も、あの総理も、そしてあの総理の娘も大嫌いよっ! この世から大きなおっぱいなんか撲滅してやるわ! ねえ一平くん、一平くんはおっぱい星人? 大きいことはいいことだって信じてる? もしそうなら今ここで……」

「あっ、違うよ、僕は小さくても残念でもさくらさんみたいな、その、ペッタンコな……」

「なんですって~っ!」


 ひどい目にあった。

 僕は生涯、女の前で、おっぱいについて語ることはないだろう……

 …………


 まあいいか。

 寝よう。


「は~あっ!」


 この壁の向こうにはさくらさんがいる。

 僕の手なんか届くはずのない、美しく気高い高嶺のさくらさんがいる。

 まだ、すごく不思議な気分だ。

 

 ……


 母さん……

 何も記憶もない母のことを突然に考え始めたのも彼女の所為せいだろうか。

 アンドロイドの晶子ちゃんを僕の母だと言ってはばからなかった父。

 その嘘をずっと受け入れてきた僕。

 勿論そんなことは小学生の僕でも嘘だと分かってた。

 でもきっと、語りたくない何かがあるのだろうと思って……


 それなのに今夜は、あれこれと母のことを考えてしまう。

 17年前のあるとき、父を愛し、父が愛した僕の母を。

 父も語らず、僕も知りたいと思わなかった、まだ見ぬ母のこと、を。




【あとがき】


いつもご愛読ありがとうございます。第二章はいかがでしたか。


二畳院さくらのあまりにあまりな過去、そしてまだ謎を残したままの一平の過去。

過去のことはどうであれ今に目を向けると、一平は二畳院さくらという類い希な美貌を誇るぴちぴちのJKと同棲を始めたわけで、そのおっぱいがどうであっても、何とも羨まけしからんヤツなのですが、彼女の部屋に夜這よばいをかけるわけでもなく、並んで座っただけで鼻血ブーとか、本当に情けないヤツですね。はあ~っ。


さて、この章を通しての主題。それは「おっぱいは大きい方がいいのか否か」でした。

いや、普通は大きい方がいいでしょう。そう言う意味でさくらはザンネンなのですが、しかし、ザンネンにも根強いマニアはいるわけです。果たして一平は巨乳派なのか、それとも貧乳派か? その答えは次章を待っても分かりません!


話変わって。

お気づきの方も多いと思いますが、この物語の登場人物の名前には、とある共通点があります(ただし、苗字だけのモブ(岩本、竹本、吉田)を除く)。


 赤月一平、二畳院さくら、朝風もみじ、朝風明希、鳥海翔一郎、十和田きらら


一部その手のマニアか、ある程度年配の方にはすぐに分かるかも知れません。

そんなの簡単、分かったよ! って方はぜひぜひ感想欄へ勝ち名乗りを!


さ~って、来週のさくらさんはっ?


さくらともみじ、ふたりのウェイトレスの、その圧倒的戦力で順風満帆なツインフェアリーズ。しかし、そんな店にとんでもないピンチが訪れる。本気になった朝風総理。そのあまりに恐ろしい策謀に一平たちは対抗することができるのか? そしてついに明かされる一平の過去とは……


次章「ふたりの妖精」も是非お楽しみに。



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