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失恋した直後に死んだら俺にハーレムができました。恋人達は俺が守る!!  作者: ゆうきぞく
第十三章 転生戦士激闘編 序章
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ついに始まろうとする興但市での激闘


 「なるほどねぇ。つまりきみの恋人は沙羅のチームの転生戦士と鉢合わせたのか」


 「ああ、お陰で彼女は命こそは無事だったが大きな怪我をするハメになった」


 仁乃が興但市の転生戦士と激突したその日、加江須は板垣に早速連絡を取っていた。そして翌日に加江須は早速板垣とコンタクトを取って顔を合わせていた。

 二人は近くの喫茶店へと足を運んでおり、そこで彼は自分の恋人の身に起こった出来事を目の前の板垣へと話していた。

 

 まさか番号を渡したその日に電話が来るとは思ってもいなかった彼は想像以上に沙羅のチームが積極的に行動している事を知り少し頭を抱えていた。


 「まさかアイツ等がそこまで大胆に行動するとはな。勧誘だけならまだしも攻撃を仕掛けて入院送り、最悪死を与えようとしているとは……」


 確かに沙羅のチームが最近になって過激さを増していた事は分かっていたつもりであった。だがどうにも自分の認識は甘すぎた様だ。まさか勧誘を断られたからと言って攻撃まで仕掛けて来るとは……。

 渋い顔をしていると加江須は板垣に話し掛ける。


 「お前の言う通りの連中だったな。まさかこんな力づくの勧誘をしてくるとはな……」


 「ああ…でも少し妙なんだよな……」


 板垣が口にしたセリフが気になり首を傾げる加江須。


 「何が妙なんだよ? お前の言った通りの連中だったぞ?」

 

 「……確かにあいつ等が多少は乱暴な部分があるチームである事は事実だ。でもここまで大それた行為を敵対チームでもない相手に実行するか? と言う事なんだ……」


 抗争している自分達のチームの人間相手ならいざ知らず、何のかかわりもない転生戦士相手にそんな理不尽な行為を働けば不用意な怒りを買う事だって十分あり得る。現に板垣とこうして話している加江須は恋人をやられた報復として沙羅と阿蔵の二人と矛を交えるつもりらしい。

 確かに自分達だって勧誘を行っているので自分のチームに加入できない様に断られた相手を病院送りにすると言われれば納得のできる部分も少し苦しいがある。だがそれにしても……。


 「(まさか沙羅のチームの奴等何か切羽詰まっているのか?)」


 沙羅のチームがここまで強引な手段を取る理由も気にはなるがそれよりも今は目の前の少年の話の方から片付ける事にする板垣。


 「それで、改めて訊くけど本気なのか? 君が興但市に乗り込んで奴等について調べる、そして戦うと言うのは?」


 「ああ本気も本気だ。だから頼む、お前たちのチームと一緒に行動させてくれないか?」


 加江須が板垣と直接話をしている理由はまさにこれだった。

 今現在、板垣のチームは憎き沙羅のチームと対立している。ならば沙羅のチームについて情報を得るなら彼等と共に行動する事が一番の近道だと判断したからだ。だからこそ彼は最初に断っていたチーム勧誘の話を受ける事にしたのだ。もちろんあくまで一時的な加入ではあるが。


 「お前たちが沙羅のチームに勝利を確信できるまでは戦力として働く。だから代わりに供に行動させてくれ」


 「こちらとしては大変ありがたい申し出だ。ただ一応言っておくよ。相手のチームは今の君の話を聞く限りでは俺の予想以上に容赦を捨てている様だ。下手をしたら命を失う可能性もある。それでも俺と共に興但市に来るのか?」


 そう言うと板垣は急に目つきを鋭くする。まるで研がれたばかりの刃物の様な鋭利な眼光は並の相手ならば気圧されて萎縮してしまうだろう。だが加江須は微塵も動揺する様子も見せず負けず劣らずの鋭い眼光を返す。


 「勿論危険な戦いに身を投じる事になる事は覚悟の上だ。だが一つだけ言っておくが俺は死ぬつもりはない。愛する恋人達を残して死ぬなんて御免だ。生きて勝ち残る覚悟がある」


 沙羅達に対する怖気もなければそれどころか必ず勝って生き残る覚悟を見せる加江須を見て板垣は気を緩める。そしてニヒルな笑みを浮かべながら加江須の覚悟に賞賛する。


 「随分と肝の据わった高校生だ。目の奥を見れば今の君が強がりでなく本気で言っている事がよくわかるよ。しかし君の覇気を見て思ったが久利君はこれまでどれだけの戦いを繰り広げて来たのかな? 並大抵の戦いだけで身に付く覚悟と覇気じゃないぞ」


 「まあ…確かに何度も死闘を繰り広げてはきたかな…」


 板垣もゲダツとの生きるか死ぬかの戦いを繰り広げて来た戦士だ。だからこそ彼から放たれる覇気を肌で感じて直感で理解した。この目の前に居る少年は何度も死線を乗り越えて来たのだろうと。

 

 「まあこちらとしても戦力が増える事は喜ばしい事だ。そう言う訳なら俺達のチームのアジトまで案内するぞ」


 こうして加江須は興但市を根城にしている沙羅達のチームと本格的に敵対行動を取る事が確定。その為に彼等と相対している板垣のチームへと一時的な加入が決定した。


 「ところで話を聞く限りじゃお前の恋人達も転生戦士なんだよな? その娘達はどうする気なんだ?」


 「ああ、それについてはな……」


 板垣と話をする前日に加江須は恋人達へとこんな話をしていた。



 ◆◆◆




 『明日俺は板垣と会って興但市へと乗り込ませてもらえるように話を付ける気だ。だが相手の情報を知るためにもまずは俺が独りで興但市に赴く。その間に皆はこの町の護衛を頼むよ』


 加江須のこの提案には氷蓮が異を唱えるが彼等が戦うべき相手は何も同じ転生戦士だけではない。いや、そもそも転生戦士同士での戦いと言う事がおかしな話なのだ。転生戦士とは本来は人の中に蔓延る悪感情の塊たるゲダツと戦う事が使命なのだ。そして悲しい話だが人間が居る以上はゲダツは生まれて来るものだと加江須は半ば諦めている部分もある。


 『この焼失市内のゲダツを俺が抜けた分、お前たちに任せたいんだ。それに沙羅達のチームの転生戦士がこの焼失市内にまだ潜んでいる可能性もある。そう考えると今この焼失市内には出来る限り戦力を置いておきたい』


 そう言われると恋人達は口を塞ぎかける。だがそれでも氷蓮はまだ納得いかなかったのか尚も食い下がろうとする。


 『でも加江須一人で敵である転生戦士チームの拠点がある興但市に行かせるのは……せめてもう1人くらいは同行すべきだろ』


 その反論に今度は加江須が眉を寄せて考え込んでしまう。

 確かに自分にとっては興但市は未知のエリアだ。いくら向こうには板垣以外にも転生戦士が複数人居るとは言えだからと言ってその者達を心から信じていいものだろうか? 

 しばらく長考していた加江須であったがここでようやく答えが出る。


 『分かった。それなら俺以外にもあと1人だけ同行してくれないか?』


 加江須がそう言うと真っ先に立候補したのはやはり氷蓮だった。

 彼女としても仁乃を傷つけた沙羅達には強い憤りを感じておりこのまま黙って留守番と言うのは我慢が出来なかったのだろう。


 こうして興但市には加江須と氷蓮の2人が乗り込む事となったのだった。


 だがその際に加江須には一つだけ不安点があった。


 『興但市ねぇ……ふ~ん…そこにあの沙羅達は居るのね♪』


 そう言いながら不気味にほくそ笑んでいたのは最悪の転生戦士の狂華であった。




 ◆◆◆




 「………」


 あの時の光景を思い返していて加江須は胸中の不安が拭いきれなかった。あの戦闘狂である狂華も狙いは自分たちと同じ沙羅達ではある。だがあの戦闘狂いのイカれるバーサーカーが乗り込んでくる事が果たして吉と出るか凶と出るか未知数なのだ。確かにラスボの戦いの時は彼女も自分たちの邪魔はせず陰でラスボの組織の壊滅に動いてはいたが……。


 さすがにあの女の事を黙っている訳にもいかず板垣にも彼女の事を話しておいた。


 「おいおい随分とヤバい女が居たもんだな。まあ刺激欲しさに戦いに魅了されるヤツが居てもおかしくないのかもな……」


 板垣も狂華の話を聞いて多少は驚いていたようだった。だが思いのほかすんなりと受け止めたので少し疑問を感じているとその答えを彼が教えてくれる。


 「実は沙羅のチームにも居るんだよ。その女と同種のタイプの転生戦士がな……」


 そう言いながら彼はどこか遠い眼をし出した。


 「……もしかして戦った事があるのか?」


 「ああ、その時にちょっと深手を負ってな……」


 そう言いながら板垣はシャツをまくり上げて腹部を見せて来る。すると横腹には肉を抉られたであろう痛々しい傷跡が刻みつけられていた。


 「その傷は…」


 「今言った沙羅のチームの1人にやられたもんだ」


 どうやら転生戦士の中には狂華と同類のタイプも居るみたいだ。だがもしそうだとするならやはり相手のチームは中々にヤバイ連中だと言う事も改めて理解できた。だがだからと言って怯むつもりなどはない。


 「(すぐにお前達の方まで顔を出してやる。その時は覚悟しておけよ沙羅、阿蔵……!)」


 自分の怒りを改めて強く思い返して覚悟を固めていると板垣がある質問をして来た。


 「ところでさぁ、個人的に一つ訊いておきたい事あんだけどいいかな?」

 

 「ん? 俺に答えられる事なら何でも訊いてくれ」


 そう言うと板垣は少しニヤつきながらこんな質問を投げかけて来た。


 「さっき俺の恋人達とか言っていたけど……なに、君って複数人の恋人居るの?」


 「え、あ…ああ」


 「それって浮気なのかな?」


 「だ、断じて浮気とかではないぞ! ただ俺はあいつ等5人を平等に愛しているだけだ!」


 「(うおお……まさかの5股とは……)」


 見た感じでは少し暑苦しい部分もあるが真面目そうなタイプだと思っていたので少し意外そうに思う板垣。それと同時に彼を自分達のチームに彼を連れて行く際の不安点が一つあった。


 俺達のチームに居る〝あいつ〟が5股なんてしている男を連れて行ったとなると面倒ごとが発生するかもな……。


 そんな事を考えながら板垣はチームメンバーの1人の女性の顔を思い浮かべていたのであった。



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