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【完結】源氏物語溺愛逆行絵巻―紫の上を失った光る君は、もう一度春へ戻る―  作者: 木風
第十五帖 明石

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明石③

光る君は紫の上の髪に指を通し、耳にかかる艶やかな黒い絹糸を優しく整えながら、低く甘い声で囁きました。


「あなたの髪……雪よりずっと、黒く、深く、そして美しい」

「っ……恥ずかしい……そんなふうに言わないで……」


紫の上の頬が一気に火鉢より熱くなる。

光る君はその横顔に、そっと唇を触れました。

それはほんの、羽のような口づけ。

触れたか触れないかの、甘い触れ合い。


「恥ずかしいほどが、いいんだ。あなたが俺の言葉でこんなにも赤くなるのを見ると……

どれだけ深く愛されているか確認できて、また言いたくなる」

「……ほんとうにいぢわる……」


そう言いながら、紫の上は光る君の袖をきゅっと握りしめ、二度と離れまいとするように胸へ寄り添います。

光る君はその身体を腕の中に力を込めてしっかりと抱き込み、静かに息を整えました。

それは、確かな愛の成就でした。


まるで永遠を誓う約束のように、二人の指先は自然と絡まりました。

外の寒さとは反対に、二人の間に流れる体温のなんと暖かいこと。

それは衣が徐々に滑り落ちても、より一層の熱を持ち始めるのでした。


外の雪は静かに降り続け、世界が音をなくすほどの白い夜の中で、光る君と紫の上は、一つの、揺るぎない温もりを共有しながら、寄り添うだけで満ちてしまう『夫婦の時間』を重ねていったのです。


外の雪は夜半になっても降り止まず、静寂がまるで厚い絹のように邸を覆っていました。

紫の上は、光る君の腕の中で寄り添いながらも、その胸の奥で、どうしても言葉にできない小さな、しかし鋭い痛みを抱えていました。


数日前から耳にしていた、世間を騒がすあの噂。


『女三の宮を断ったのは、紫の上が懐妊したからだ。

地位の高い北の方を娶るべき時機を逸した』

『恋に溺れて帝の意向に逆らい、政治を曲げたのでは』

『正式な迎え入れの前に内々に契りを交わしたせいだ』


すべて事実ではない。光る君の愛の深さゆえだと、そんなのはわかりきっているのです。


ただ、ほんの少しでも、自分の身分が低いことによって、

あの方の負担になっていないだろうか。

自分の身分が低いせいで、陰で光る君を貶める者がいるのではないか。

紫の上は、光る君の衣をそっと握りしめ、かすかに呼吸を震わせました。

光る君はそのわずかな、しかし見逃さぬ変化に気づき、

静かに紫の上の頬へ手を添えました。


「……紫。あなたの鼓動が、胸が痛む音がする。

何を考えていた?隠し事は無しだよ」

「……噂を、少しだけ耳にして。私のせいで、あなたが……

不当に評価されているのではないかと……」

「紫」


その優しく、しかし重みのある声に、紫の上は堪えきれず、

ゆっくりと目を伏せると、名を呼ぶ声が、それ以上の自責の言葉を許しませんでした。

光る君は紫の上の肩をゆっくりと抱き寄せ、額をそっと自分の胸に押し当てさせます。

その鼓動は、力強く、揺るぎないものでした。


「そんなこと、二度と言ってはだめだよ」

「でも……身分が……」

「紫、あなた以外の妻は不要だからよ。身分など関係ない」


胸の響きが、その言葉の重みと共に直に伝わると、紫の上の指先がわずかに震え、光る君の衣を縋るように強く掴みました。


「……俺は、あなたを傷つけることは、絶対にしないよ」

「……あなた……」

「紫。俺はあなたさえいればいいんだ。この世のすべてと引き換えにしても」


光る君はその頬に唇を寄せ、ひとつ、ふたつ、不安の熱を奪うように、雪が溶けるように触れてゆきます。

その言葉、その仕草一つで、紫の上に積もった不安と羞恥の雪も溶け始め、紫の上は小さく震えながら光る君に抱きつき、まるで失いたくない温もりを確かめるように頬を寄せました。


「……あなた。私、ずっとあなたと……この温もりの中で」

「うん。ずっと一緒に。この夜が明けても、永遠に」


外の雪は、音もなく降り積もり、まるで二人を守るように夜を白く包んでゆきます。

光る君の腕の中で、紫の上はようやく胸の痛みを手放すことができたのです。

その夜、二人の結びつきは、噂や勅命など比べものにならないほど深く、静かに、一つの魂のように溶け合ってゆきました。

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よろしくお願いします( *・ㅅ・)*_ _))ペコ

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