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【完結】源氏物語溺愛逆行絵巻―紫の上を失った光る君は、もう一度春へ戻る―  作者: 木風
第十四帖 藤裏葉

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藤裏葉①

挿絵(By みてみん)

几帳の内はまだ二人の余熱と淡い香を残し、紫の上はゆっくりと瞼を震わせて開いた。


身を起こそうとした、その瞬間。


「あ……っ」


じん、と腿の付け根から腰にまで甘い疼きが走り、紫の上は思わず布を握りしめて身を縮めた。

光る君はそのわずかな動きを、一瞬で捉える。


「紫。無理はしないように。痛む?」

「……すこし……だけで……」

「少しじゃない顔だ。ほら、横になって」


壊れ物のようにそっと抱き起こされる腕があまりにも優しく、紫の上は恥ずかしさで耳まで紅に染まる。

昨夜の熱がふっと蘇り、胸の奥がまた甘く震える。


光る君は肩まで布を掛け直し、紫の上の髪を指でそっと梳く。


「すまないね。加減ができず……優しさが足りなかった」

「そんな……私は、嬉しかったから……」


その囁きは、涙にも似た幸福を含み、光る君の胸に激しい熱がこみ上げる。


「紫。今日は、あなたの世話は全部、俺がするよ」

「そん、なっ……おにいさまのお手を煩わせるなど……」

「それが妻を労わる務めだよ。

この三日籠りの間だけの……俺の特権だ」

「嬉しい……けれど……恥ずかしすぎて……」

「恥ずかしい?」

紫の上の肩がぴくりと跳ねる。


「……な、なにを……やめて……」

「昨夜の紫のことなら……朝までだって語れるけど?」

「~~っ!!」


顔を真っ赤にし、布団に潜り込む紫の上。

光る君はその震える肩をそっと抱き寄せ、甘く囁く。


「そんなに可愛いのに……誰に自慢すればいい?」

「っ……おにいさま……っ!」


羞恥も痛みも、幸福も、胸の奥の甘さも。

すべてが、初めてを迎えた朝の証のように、几帳の内側に静かに溶けていった。


布団に潜り込もうとした紫の上を、光る君がそっと抱き寄せた。


「逃げても無駄だよ。今日も一日……紫をこの腕から離すつもりはないから」

「……っ……そんな……は、離れたいわけでは……」


かすかな声が胸の奥に触れると、光る君はその一言を宝物のように噛みしめ、静かに瞳を閉じた。


それからの数刻――

紫の上は光る君の腕の中で眠ったり目覚めたりを繰り返し、

痛むところには清らかな香油をそっと指で塗られ、冷えぬように布をかけ直され、一口ずつ食事を口元へ運ばれる。


紫の上が少しでも身を起こそうとすると、


「だめ。横になっていなさい。今だけは……

夫の俺に全部、甘えて」


その声音は優しさで満ちていながら一切の逃げ道がなく、

紫の上は声にならない頷きで従うしかなかった。


やがて、日暮れ前。

紫の上がそっと囁く。


「おにいさま……今日、一日中、ずっとそばにいてくれて……幸せで……」

「紫。幸せに『したい』のではない。

幸せに『し合いたい』んだ、あなたとは」

「……し合い……?」

「そう。あなたがくれた愛のぶんだけ……

いや、それ以上に。全部、返したい」


光る君が紫の上の指を一つずつ丁寧に開いていくと、紫の上の瞳が涙で潤む。

唇が震え、小さな手が光る君の衣を、ぎゅっと掴んだ。


「……では……もう少し……このまま……そばに……」

「うん。明日の朝も……その先も。

俺の命が尽きるまで、全部あなたのそばにいる」


夕映えが几帳を淡い紅に染める中、ふたりは静かに寄り添い続けた。


――そして夜。


几帳の内は灯火の橙に満ち、紫の上はまつげを震わせながら、

光る君の肩へさらに深く身を寄せた。

痛みは残るはずなのに、光る君の腕に抱かれると、その痛みすら甘い思い出の続きのように感じられる。


こうして、『三日籠り』の二日目は、献身と涙と溺れるような甘さに包まれて、静かに過ぎていった――。

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よろしくお願いします( *・ㅅ・)*_ _))ペコ

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