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【完結】源氏物語溺愛逆行絵巻―紫の上を失った光る君は、もう一度春へ戻る―  作者: 木風
第十三帖 朧月夜

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朧月夜②

夜はさらに深く沈み、清らかな布の下でふたりの影は静かに重なり、魂がひとつに溶け合うように、距離という概念がなくなっていった。

紫の上は満たされた安堵の涙をひとすじ落とし、光る君はその雫を指で掬い取りながら、優しい声で問いかける。


「痛かった?身体に、無理をさせてしまったね」

「……違うの……おにいさまが……好きで……

気持ちが、あふれてしまっただけ……」

「紫……あなたはこんなにも、泣いても美しいから、

俺は困ってしまう」


光る君の声音には、先ほどまでの官能の色ではなく、胸の奥から滲み出る深い愛の震えがあった。

その低く熱い響きは、所有欲というより『守る誓い』そのものに近く、紫の上の頬はふたたび桜色に染まる。


「……ずっと言えなかったけれど。北山であなたを見つけたあの日から……俺は、自分のものにしたくて仕方がなかった」

「……おにいさま……」

「誰にも触れさせたくない。この世の光にすら見せたくない。

永遠に……俺だけのものだ」


抱き寄せられた肩が震える。

それは恐れではなく、愛されることへの昂ぶりと、歓喜に耐え切れない震え。


「愛しい紫。思い出すだけで……

何度でも求めてしまいたくなる」

「……っ……」


言葉そのものは優しい愛の囁きなのに、執着の熱があまりにも濃く、紫の上はその激しい愛に堪えきれずに目を伏せました。


あとはもう——

布の下で絡む指。

一つになって沈むように寄り添う身体。

ふたりがひとつになるたび、布の下で混ざり合う甘い音。

愛しすぎて彼女の喉から漏れた小さな声。

名残惜しさに震える腰を抱き寄せる腕。

影が重なってはほどけ、ほどけてはまた深く絡む夜。


静寂の中にこぼれ落ちる、小さな声。

紫の上が最後にひとつ涙を落とし、愛の余韻に身を委ねると、ようやく、夜は静かに底へ沈んでいった。


やがて——


光る君は腕の中にある温もりをゆっくりと確かめるように目を開いた。

紫の上はすべての愛を受け止め、静かに眠っています。


細く、守るべき肩にかけた衣は、激しかった夜の余韻を隠すように滑り落ち、その無防備な姿は、まるで

『ようやく、この世の罪を越えて得た宝』

のようでした。


……ようやく、この温もりに触れられた……


八年分の渇き、過去への悔恨が胸の奥でふっとほどけていく。

幼さゆえに触れられなかった小さな手。

理性を守るため抱きしめられなかった細い肩。

罪の意識だけで胸が詰まり、名前を呼ぶことさえできない夜。


十六夜の月のように儚い日々を、八年間も……

よくぞ、己の情欲を制して耐えたものだ……


それは自嘲でも、理性への誇りでもない。

紫の上の未来と命を守るために選んだ、最も長く、最も苦しい愛だったのです。

そして、そのすべての忍耐が今、この腕の中の幸福として結実している。

光る君は紫の上の柔らかい重みを抱き寄せ、そっと腕に力をこめた。


二度と。

本当に二度と、誰にも、逃がすものか——。

独占という言葉を超え、魂の底から湧き上がる愛の熱。


眠る紫の上が、昨夜の痛みを訴えるように、眉を寄せる。

その表情さえ愛しくてたまらず、光る君はそっとその眉に触れ、指先で優しく撫でた。


「紫……もう、怖いものは何もない。俺がいるから」


その指先は、愛の誓いそのもののように温かかった。

その囁きは、紫の上が眠っているのを知りながら、それでも抑えきれず零れ落ちた『愛の誓い』だった。

光る君は、静かに寝息を立てる紫の上を見つめ、そっと息を吐く。


……十三のあの日。

手を伸ばせば、穢れの多い己の愛で、この少女を壊してしまうと……それだけが怖かった。

幼い身体を欲望のままに抱きしめたいと思ってしまった、

あの罪深い己が、たまらなく嫌だった。許せなかった。

『愛している』と言う資格すら、自分にはないと、本気で思っていた。


だからこそ、六条(ろくじょうの)御息所(みやすどころ)との因果も、葵の上の死も、全てを見つめ直した。

十七の紫が熱にうなされ、命の淵で泣いた夜——

理性など捨てて抱いてしまいたかった。

が、あの時衝動のままに触れてしまえば……きっと時を遡る前と同じく、紫の清らかな未来を奪っていただろう。


八年間守り続けたのは——

紫のためであり、同時に『罪深すぎる己の愛』から紫を守るためでもあったのでした。

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よろしくお願いします( *・ㅅ・)*_ _))ペコ

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