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【完結】源氏物語溺愛逆行絵巻―紫の上を失った光る君は、もう一度春へ戻る―  作者: 木風
第十帖 常夏

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常夏②

紫の上の頭が光る君の胸元へ沈み、震える子猫のように、

その腕の中で小さな息を震わせている。

光る君は、そのか弱い背を壊れ物を扱うように撫でながら、

呼吸を整えようとする。

けれど心の内側は、押し寄せる波のような感情で満たされ、

収まる気配など微塵もないのです。


……どうしてだ。

……俺は、どうしてこんなにも紫の涙一つ、不安の一つで胸が苦しい?

こんなにも、全身全霊で守りたいと思っている?

他の誰にも、指一本触れさせたくないと執着している?


時を遡る前の光る君もまた、紫の上をこの世の誰よりも愛しておりました。

ですが、同時に、自らの奔放さゆえ、彼女にどれほどの孤独と涙を強いたことか。


けれど今——。

腕の中で震えるこの少女を抱きしめた瞬間、胸に湧いた熱は、

あの頃の未熟で傲慢な情愛とはまるで違う。

それは、もっと切実で、もっと真っ直ぐで、もっと深い。


光る君は、ようやく自らの真実を認めざるを得なかった。


俺は……心の底から、紫を……誰よりも、誰よりも愛おしいと想っている——。


「紫」


情熱と独占の意図を沈ませた声で名を呼ぶと、紫の上は濡れたまなざしを上げる。

光る君は、その澄んだ瞳をまっすぐ見返し、嘘偽りのない言葉を告げた。


「俺の心は……すべて、ただあなたのものだよ」


紫の上の瞳が驚きに揺れ、すぐさま歓喜の光を帯びる。

紫の上の瞳が、驚きと、溢れるほどの歓喜で大きく揺れると、

光る君は、その愛らしい揺れを胸に刻むように見つめながら、

ためらいと情熱の狭間で息を詰まらせ、ゆっくりと紫の雪のように清らな額へ唇を寄せたのである。


——まだ、この清純な娘の唇に触れるには、自らの理性が許さない。

——だが、もう一刻たりとも触れずにいることなどできない。

——この燃える熱情を、確かな印として伝えたい。


だからこそ、額へ落とす、優しくも深い執着を込めた一つの印だけ。


「俺は、紫のものだし、紫のことも、誰にもやらない」

「私も……おにいさまだけで、本当に十分なの」


紫の上はその言葉に、安堵と喜びの涙をこぼしながら笑みを咲かせた。

二人は互いの愛の自覚を確かめ合うように抱きしめ合い、

長い間、離れられなかった。


その夜、紫の上の胸には初めて『独占』という名の熱が灯り、

光る君の心には、時をも超えて蘇った、かつてとはまるで異なる深い『恋』の自覚が宿っていた。


二つの想いは、見えない鎖のように静かに、そして激しく絡み合い、この夜、確かに芽吹いたのです。





恋文騒動から幾日が過ぎたある日のことです。

紫の上は、自らが身を焦がすような恋をしているのだという揺るぎない自覚とともに、光る君のそばにいるだけで、心の芯までじんわりと温かくなるのを感じていた。

その温かさは、日を重ねるほど深まり、彼女の心身を静かに溶かしてゆくばかりです。


そして——。

素直に甘えれば、光る君がどれほど嬉しそうに、そして必死で受け止めてくれるのか。

紫の上は、それをもう知ってしまったのです。


その夜、女房たちが控えの間へ下がり、部屋の灯りを行灯ひとつへと落とし、静寂が満ちた頃。

紫の上は、雪のように柔らかな夜着の袖を胸の前で揃え、

猫のように布団の上へちょこんと座して待っています。


御簾の向こうから、光る君が迷いなく向かってくる気配——

それだけで胸の鼓動が早鐘のように跳ねてしまいます。


寝所へ入ってきた光る君は、彼女の可憐な姿を見て微笑み、

静かに問う。


「紫?今日も眠れないの?」


紫の上は、小さく、けれど迷いのない頷きを返し、前夜と同じ場所——

布団の隣を、控えめでありながら確かな期待を込めて、


ぽん……ぽん……


と布を叩くのです。


「おにいさま……早く、いらして?」

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よろしくお願いします( *・ㅅ・)*_ _))ペコ

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