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【完結】源氏物語溺愛逆行絵巻―紫の上を失った光る君は、もう一度春へ戻る―  作者: 木風
第九帖 玉鬘

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玉鬘①

挿絵(By みてみん)

朝の光が、御簾の向こうの几帳を透かし、淡い金砂のように寝所へ差し込んだ。

紫の上は、深い眠りからゆるやかに目を開けると、視界の最初に映ったのは、すぐ隣にある逞しい光る君の胸板であった。


そして、その腕が——昨夜の約束どおり、いや、それ以上に、

まるで宝物を守るような確かさで、自分を抱き寄せたまま眠っている。


——昨夜は夢ではなかった。本当に、こんなにも近くで……


そう悟った瞬間、紫の上は耳の奥まで一気に熱が昇るのを感じてしまいます。


そっと身をよじり、距離をとろうとした、そのわずかな気配。

光る君の手が、温もりを失うのを惜しむように、寝ぼけた力で彼女の背をきゅっと引き寄せる。


「あ……っ」

「……紫」


深い夢から引き戻されたような掠れた寝言。

それだけで、紫の上は胸をぎゅうっと締めつけられ、堪えきれぬほどの鼓動を感じ、思わず布団に顔を埋めて眠ったふりをしてしまいます。


……どうしよう。おにいさまの、この腕の中で、目覚めの時まで眠ってしまうなんて。


嬉しい。その幸福な事実に、心が舞い上がる。

昨夜のすべてを知られていることが、恥ずかしく、ただただ羞恥に苛まれる。

けれど、やはり心から満たされた、確かな幸せに浸っている。

胸に溢れる懐かしい感情たちが、春の水音のように絶え間なく揺れて、とめどなく胸を満たしていく。


恋を自覚した朝は、寝所の御簾越しに見える景色さえ、

世界そのものがいつもより眩しく、そして鮮やかに感じるものなのだったのです。


光る君が目覚めたのは、紫の上がそっと離れようとした拍子に、衾がふわりと揺れたときであった。


腕の中の温もりが遠ざかった気配に、光る君は即座に目を開き、そこに、布団から半身を出し、羞恥で固まっている紫の上を見つけた。


「……紫?朝からそんなに慌てて、どうしたの」

「なんでも、ないの……!

ただ……昨夜のことを思い出してしまって」


蚊の鳴くような小さな声。

湯に茹だったような頬。

その全てが、光る君の胸の奥で、大切なものを包むような温かさを広げた。


同時に——

光る君の胸の奥で、抑えていた獣じみた衝動が、ずきりと疼くのを感じました。


……危なかった。あと一刻でも理性の綱が緩んでいたら——


腕の中で眠る紫の、まるで絹のような肌の温もり。

抱き寄せたとき、折れてしまいそうなほど細い肩。

すぐ側で聞こえていた、安らぎに満ちた規則正しい呼吸。

そして、無垢なまま、安心しきって胸に頬を寄せてきた、あのいじらしい仕草。


そのひとつひとつが、光る君の心に、甘く鋭い衝動を呼び覚ますのです。


『抱いてしまいたい。このまま一つになりたい』


その危うい願望が幾度も胸を焼き、そのたびに光る君は、唇を噛み殺すように堪えようと必死に理性を抑えつけます。


紫はまだ幼い。

今焦れば、あの未来を呼び寄せてしまう——

なのに……この愛らしさに触れて、どうして心が静まっていられようか。


昨夜の自分が、どれほど綱渡りのぎりぎりで踏みとどまっていたかを思い返し、寝台の上でひっそりと天を仰いだ。

今朝の光はやけに眩しく、胸の内だけが静かに燃えていた。


一方の紫の上は、恥ずかしさという名の熱に全身を浸し、

布団の端を幼子のようにきゅっと握りしめていた。

この、いっそ罪深いまでの可愛らしさが、さらに光る君の強靭な理性さえも危機に晒してくるとは、紫の上は想像もできるはずもない。


光る君は、胸の奥に渦巻く欲望を覆い隠すように、低く抑えた声で名を呼んだ。


「……紫」


びくん、と肩を小さく震わせる紫の上。

光る君はゆっくりと近づき、頭のてっぺんにそっと手を置く。

撫でるというより、触れただけで壊れそうな宝物を確かめるように。


「……なぁに?おにいさま」

「昨夜、あなたがそばにいてくれたおかげで、

驚くほどよく眠れたよ」


その言葉だけで、紫の上は耳の先まで真っ赤に染まり、

布団に顔を埋めてしまった。

光る君は微笑みながらも、胸の内ではひたすら嵐のような葛藤を押し殺す。


……この子を救い、守るために、この過去へ時を遡るしたというのに、俺の方が先に、彼女の魅力に惑わされてどうする……しっかりしなければ。


その必死の我慢と『鋼の理性』は、紫の上には、ただただ限りなく深く優しい愛情にしか映らないのである。

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よろしくお願いします( *・ㅅ・)*_ _))ペコ

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