お金がほしい!⑧
(な、なんでこうなった……!?)
会場の視線が一点に集中している。
サルレンジャーの最後の希望となってしまった悠真。
(逃げるわけにはいかない……!)
この場を何とか終わらせなければならない……!!
しかし、目の前の怪人スチール・デストロイヤーは、やたらとしつこい。
「フハハハハ!! 貴様の攻撃など、まったく効かん!!」
悠真の蹴りやパンチをことごとく受け流し、不敵な笑みを浮かべている。
(クソッ、どうすりゃいいんだよ……!!)
悠真は、必死に考えた。
——そうだ!!
必殺技だ!!
ヒーローショーには、必殺技ってもんがある!!
悠真は、猿のポーズを決めると、両腕をクロスさせ、勢いよく前に突き出した!!
「くらえ!!サルビーム!!!」
悠真の全力の声が、会場に響き渡る!!
——しかし。
怪人スチール・デストロイヤーは微動だにしない。
「…………?」
ポーズを取ったまま、キョトンとした顔をしている。
(いや、効けよ!!!!)
悠真は、心の中で絶叫した。
会場がざわつく。
「……サル、ビーム?」
「そんなの、あったっけ?」
困惑する観客たち。
そして——。
客席の最前列で、千鶴と雪が口を押さえて必死に笑いを堪えている。
(や、やばい……!! もう無理だ、帰りたい!!!)
悠真が羞恥心で崩れ落ちそうになったその時——
「よくやった、サルブルー!!」
サルレッドの力強い声が響く!!
「お前のおかげで、ワシらのエネルギーが回復したぞ!!」
気絶していたはずのサルレンジャーたちが次々と復活する!!
「まかせろ!」
「ここからが本番だ!!」
グリーン、イエロー、ピンクがポーズを決める!!
(えっ、そんな設定だったの!?)
悠真が混乱する間に——
「サルファイナルラッシュ!!!」
サルレンジャーたちが一斉に飛びかかり、怪人スチール・デストロイヤーを派手に吹っ飛ばした!!
「ぐわあああああ!!!」
怪人は、見事に大爆発し、川越の街に平和が戻った。
悠真の心に、深い傷痕を残して……!!!




