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さらに欲しい答をもらいます。



「きみが気にしていることに答えをあげようか。」

寝室で夫が思わせぶりに微笑んだ。

「なにかしら?」


すでにベッドにいたわたしに、夫がつかつかと歩み寄る。

近くに来て初めて分かった。

夫は、唇の端を上げているが、怒っている。

理由が分からなくて戸惑っていると、夫は真顔になり「なぜ僕に直接聞かない。」と言った。


合点がいった。

幼馴染が、昼間の会話を夫に話したのだ。

「あれはもう解決したの。」

わたしは慌てて答えた。


「いいや、教えてあげよう。彼女は子どもの父親と結婚して幸せに暮らしている。そうなるように、僕が彼女の両親に話を通して、彼女の夫の仕える先に口利きをした。」


そこまでするなんて、やはり。


そんなわたしの考えを読んだように、夫は言葉を続けた。


「彼女だけではない。僕の屋敷に勤めていた者たちには、全員、その後の世話もしている。大抵は執事が行うが、彼女に関しては、相手が僕の侍従だったし、すでに妊娠していたから、特に配慮したんだ。」


「そ、そうだったの。」


夫の語気の強さに圧倒されて、わたしは細く答えることしかできなかった。


夫は大きく息をついて気持ちを落ち着けると、するりとわたしの隣に滑り込んだ。


「こわがらせてすまない。リラックスして。」

夫の手が、わたしの背を上下にさすった。


「僕に聞けばよかったのに。きみにずっと誤解されていただなんて‥‥。彼女たちの僕に対する恋愛感情は、不安や不満の反動みたいなものだ。きみが当て付けをされていることには気付いていたけど、きみは飄々としていたから、歯牙にもかけないんだと思っていた。‥‥後からきみが本当は傷付いていたんだと知ったけど。まさか僕の子だと疑っていたとはね。どうしてなにも言わなかった?」


疑うどころか、確信していた。

「‥‥。」

「ほら、黙らないで。今でも信用できないかい?」

顔を覗き込まれて、ついと視線を逸らした。

「浮気を認めたことがあったわ。」

「まさか。」

「言ったわ。浮気のことをわたしが言ったら、あれのことか、って。」

ちらりと、夫に視線を向けた。今度は夫が視線を逸らした。

「‥‥あれは、たしかに‥‥きみが初めてそういったことを口にしたから、多少大げさに言った感はある。」

わたしは半眼になった。

「はぁ?」

「あの時ちょうど、さる高貴なおかたの、夜のご事情の相談を持ちかけられていたんだよ。きみがそのことを知って、それで言ってるんだと思っていた。」

「誰なのよ。」

「それはさすがに、秘密。」




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