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指輪を夫に見せます。



わたしは勇気を出して「実は‥‥。」と夫に指輪を見せた。

明らかに、やっかいごとの臭いがする。

できれば見なかったことにして、意識の外に置いておきたいのだが、気になりすぎて眠れなくなってしまったので、相談することにした。


「母后陛下からいただいた絵に描いてあるのと、同じ指輪です。母から譲られました。」

「他には、きみのお母様からなにか聞いていないのか?」

「古王国に関係のあるものだとしか‥‥。こんな、王位の証として使われるほど重要なものだとは、何も。」


夫はあごに手を当てた。

「宝剣は、例の自称後継者が所有しているという噂だ。そして王笏は、秘密結社が正当な王に引き渡すために保管していると聞く。王冠と指輪については、行方が分かっていないと言われているから、あえて秘密裏に引き継がれていたんだな。」


わたしはお腹に手を当てた。

「わたしは‥‥この指輪を、わたしの子にも託すことになるのでしょうか。」

「きみはどうしたいと思っているんだ?」

「わかりません‥‥。わたし自身は、古王国に関わらずに暮らしたいと思っています。でも、多くの人がいまだに古王国に囚われていることを思うと、未来の可能性までつぶしてしまっていいものか‥‥。」


「そうか、ということは、きみは子どもにも、古王国に関わってほしくないと思っているんだな?そして、未来の可能性までつぶしてしまう方法をとりたいと思っている。」

わたしは目を見開いた。

夫の言う通りだ。

わたしは、絵を燃やし、この指輪も破壊してしまいたいと思っている。

争いの種になりかねないものを、この世に残しておきたくないのだ。


しかし、これは、一度失われれば二度と戻らない。

きっと過去には、この指輪や古王国の遺品を巡って、命を賭けた者もいただろう。

先人たちの思いを、わたしの代で断ち切ってもいいのだろうか。


王位の証として聞いていた指輪と、自分が母から譲られた指輪が、これまでつながらなかったのだが、ここへ来てこの指輪が自分の手元にあるのがこわくなってきた。


「きみのお母様が詳しく話さなかったのは、きみに余計な重荷を与えたくなかったんじゃないかな。余計な話は聞かせずに、自由な心で判断するように、と。きみのお母様は、古王国から一歩引きながら、関係を断ち切ることができなかった。自分にはできなかったから、娘に。その希望を託したんじゃないかと思うよ。」




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