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脂粉の匂いが鼻につきます。




「また現れたみたいよぉ、自称古の王国の後継者。今度のはどのくらい続くかしらねん。」


友人の言葉を、わたしは目の前のティーカップのそばに置かれたスプーンを見つめながら聞き流していた。


なんだか、今日はおかしい。

脂粉の匂いがやけに気になって、ほとんど化粧もできなかった。

それに、いつもは気にならない彼女の香水や、その甘ったるい話し方までが鼻についてしょうがない。


お菓子に手をつける気にもならないし、紅茶も飲みたくない。


「どうしたのぉ?様子がおかしいわね。」


わたしは伏せていた顔をあげて、力なく顔を横に振った。


「やだ、ほんとに調子悪そうじゃない!早く言いなさいよぉ。」


寝てなさい、と言って見送りも断り、彼女は帰って行った。


ベッドに横になると身体が楽になり、そのまま眠ってしまった。



目が覚めると、あたりは薄暗くなっていた。


階下へ行くと、夫が今のソファに座っている。

「帰ってらしたんですね。」

ぼんやりとしたまま夫に近付き、隣に腰掛ける。

「よく眠っていたね。」

身体がまだだるい。

夫の肩にもたれかかった。

髪も乱れているだろうし、こんなにだらしない姿を夫に見せても平気になるだなんて、少し前には思わなかった。


「もしかして、昨日は眠れなかったのか?」


「そんなことないわ。よく眠れた。でも、最近なんだかすごく眠くて。」


話している間にも、あくびがでる。


「屋敷にいるせいかしら。あぁ、侯爵夫人がね、古の王国の後継者を名乗る人が現れたって言ってたわ。」


「その噂は僕も聞いてる。なかなかいいところまで来ているらしい。」


これまで、古の王国の後継者を名乗る者は幾人も存在した。

しかし、そのどれもが、そこそこ勢力を伸ばすところまでは行っても、後継者として認められる前に失脚してしまう。


よほどの者でなければ、眉唾ものの自称後継者より、身元の確かな古の王の末裔である母とわたしより優先されない。

ただ、わたしも母も、後継者となることを望んでいないので、力のある者が現れれば、この限りではないと考えている。


「時期的なものもあるだろうね。」


夫が言うには、これまで王の直轄領として、比較的軋轢が少ない総督が赴任していたが、彼が病気で今にも亡くなりそうなのだという。


現在の総督より前は、地元の反発により、入れ替わりが激しかったと聞く。


次の総督に対する反発が強まるこの時期に後継者を名乗ることで、より支持を集めているのだと夫は分析していた。




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