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母后陛下に面会しました。




王宮の庭が手入れをされたので、そのお披露目に、夫婦同伴で出席することになった。


夫が陛下に呼ばれて、近くを離れた。

すると、すすす、と寄ってきた女がいた。


「伯爵夫人、こちらへどうぞ。」

見たことのない顔だ。

宮廷へ戻ったばかりなので、知らない顔もたくさんあるが、地味な女なので記憶にないだけかもしれない。

ついていって良いものか‥‥。


そこへ、口を挟む女がやって来た。

「あら、駄目よ。伯爵夫人は母后陛下がお呼びなの。」

地味な女は、表情を変えることなく、わたしとその女の顔を見比べ、静かに一歩下がった。

「失礼いたします。」


去っていく女の背を見つめていたら、

「あれは王弟妃の侍女よ。」

女が囁いた。


王弟妃というのは、あれか。

母からよくよく気を付けるように言われている相手だ。


王弟妃はかなりの悋気持ちで知られ、しかも占星術に傾倒しているという。


伯爵と結婚する前に、一度は王弟との結婚の打診を受けたことがある。

もしそのことが彼女に知られたら、どうなるか分からない。


さらに彼女は、占星術の有名な占者を北西方面から招くことがあると聞く。

北西方面の人々は占いをよくし、話術に長けているため、この国の貴族でも彼らにどっぷり浸かっているものが多々いる。

それらは秘密結社として公にはされないが、王弟妃もその一員ではないか、と以前から囁かれているのだ。


王弟妃に呼び出されたら断ることもできないので、どうなっていたか分からない。

母后陛下であれば、王弟妃といえども譲るしかない。


「ありがとうございます。」

わたしは女に礼を言った。


「いいのよ、ちょうどあなたを呼びに来たところだから。」

どうやら、王弟妃から逃れるための方便ではなく、本当に呼ばれていたらしい。

「母后陛下がお待ちよ。」



案内されて進む先には、小さな部屋があった。

ここが、母后陛下の居室。

わたしはごくりの唾を飲み込んだ。


部屋に入ると、1人掛けのソファに、白髪の老女がいた。

勢いはないとはいえ、どっしりとした権威のあるおかた。


「ようこそ、いらしたわね。」


こちらへ、と促され、わたしは進み出て、母后陛下の前にひざまずいた。


「あなたのことは、あなたの父母から頼まれています。わたくしはここでそんなに力はないけれど、助けになれたらと思っていますよ。」


手をとられ、それをそっと両手で包まれた。

その暖かい目尻のシワに、わたしはジンと胸が熱くなった。




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