表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/54

隣に寄り添って座ります。




「今日はきみのお母様が来ていたんだって?」


「ええ、お茶をしてお帰りになりました。」


帰ってきた夫を玄関で迎え、一緒に居間のソファでゆっくりした。


「相変わらず、お綺麗なんだろうね。」


夫の言葉に、わたしは小首を傾げてほほえんだ。


夫はわたしのすぐ横に座っていて、その手はわたしの手に、そっと重ねられている。

あれ以来、わたしたちの関係は、新婚でもなかったくらいの距離感で、常に身体の一部が接している。



母の肌は、わたしのような大きな娘がいるとは思えないほど張りがあり、シミが一切ない。

その秘訣を聞くと、母は少女のように、ころころと笑った。


「ふふ。美しさなんて、見せ方ひとつよ。女はみんな女優なの。つまりね、自分を美しく効果的に見せるコツを分かっているってこと。」


女はみんな、と言うが、自分にそれが出来ているとは思えない。

母のように美しい女性だからこそ、そう言えるのではないか。


母には多くの信奉者がいる。


あの父の侍従でさえ、親子ほどの年齢差があるにも関わらず、母を見るときの瞳がうっとりとしている。

彼のそれは幼い頃からで、彼とよく一緒に遊んでいたというのも、彼から母へのただのアピールだったのだ。

「お嬢様が、こんなことをおっしゃっていました。」と事あるごとに母に話しかけていた。

彼は、母の前ではわたしの独り言でさえ「なんて言ったの?」と拾うくせに、母の見ていないところでは、わたしが話しかけてもしょっちゅう無視していた。



「数日こちらにいて、王宮の各方面の方々に会っていかれるそうです。」


夫の聞きたいことはこれだろうと当たりをつけて情報提供した。


もちろん、夫は母の信奉者というわけではない。

母の立ち位置はなかなか特殊なもので、その動向は常に各貴族から注視されている。


母はこの国の北西にかつて存在していた古の王国の、王の末裔なのだ。

滅びた古の王国だが、各国の文化のルーツとして、今でも敬意を払われている。


画家や作家、詩人がこぞって母を題材に取り上げたがるのは、その美しさだけが理由ではなく、神秘的な佇まい、悲劇的な歴史もあってのことだ。


男のロマンを掻き立てるらしい。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ