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逃げ道をふさがれました。




最初、わたしの領地へ行こうとしていたが、伯爵がどう出るか分からないこの状況でそこへ行くのは危険だ。

伯爵が騎士たちを使えば、わたしの領地では対抗できない。


あの家令も、せっかく発展した土地が戦場と化すことを懸念し、どんな手段にでるか分からない。

最悪の場合、わたしに見切りをつけ、背中から切られるかもしれない。


伯爵に対抗できると言えば、父のところか。



父の屋敷に着くと、すぐに迎え入れられた。

おかしい。

もともと侍従を使って迎えに来させていたくらいなので、迎えられたこと自体はおかしくないのだが、対応がスムーズすぎる。


父は古風な人間で、夫に従順に仕える妻たれ、と娘に教えてきた。

そんな娘が帰って来たのだ。

それなのに、伯爵の様子を聞こうとする様子もなければ、これまで父からの使いが追い返されたことに対する怒りの言葉もない。


「疲れただろう。部屋で休んでいなさい。」と優しい言葉までかけてくれた。

ますます怪しい。


幼馴染がわたしの部屋に、窓から入ってきた。

「やばいですね。俺たち、お父上に売られました。」


彼の同僚で、親しい者がこっそり警告してくれたらしい。

わたしたちが到着するよりも先に伯爵が訪れ、父と取引したそうだ。

伯爵の条件は、わたしと幼馴染を引き渡すこと。

父の条件は、伯爵がすぐに陛下のもとへ伺候すること。


当初の目的の通りとはいえ、伯爵から見た状況が違う。

引き渡されれば、どうなるか。

姦通の報いはいつも決まっている。

相手の男は死罪、女は良くて幽閉。


「逃げられるかしら?」


幼馴染は、わたしを見つめたまま首を緩く横に振った。

この部屋は見張られている。


伯爵は本気だ。

すぐに動いたということは、わたしを探し出して自分の口で説得するかどうか、迷いもしなかったということか。

最初から、全力でこちらを抑えつけようとしている。


向こうがその気なら、わたしにも考えがある。

というよりも、これしか、取れる手が残っていない。




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