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盗みの犯人を探します。




ドレスを新調したので、ドレスに合う指輪を見ようと、いつも使っているものとは別の、しまってあった宝石箱を取り出した。


蓋を開くと、あるはずのものがなくなっている。


指輪が二つ、なくなっていた。

一つは夫から、一つは母から贈られたものだ。


最近開けていなかった宝石箱なので、いつなくなったのかは分からない。


部屋に出入りする使用人を招集し、立ち並ばせた。

指輪がなくなったことを伝えると、困惑した表情で、顔を見合わせる。

一人ひとり、順に質問していく。

しかし、全員が否定した。


夫は数日戻らない予定だ。

使用人を監督する執事が前に進み出た。

「わたくしに一度お預けいただけませんか。」

視線をずらすと、使用人たちの視線がわたしに集まっていた。


執事に任せた犯人の捜索は、思うように進まなかった。

本気で探しているのかも疑わしい。

誰も彼も怪しく見えてくる。

使用人や出入りする人間の動きを、じっと観察した。


しかしそんなことをすれば、屋敷がうまく回っていかないのは当然で、使用人はわたしの目を避けるようになった。


それが分かっていても、どうしても見つけなければならない。

問題は、母からもらった指輪のほうだ。

犯人がなにを思ったのか知らないが、よりによって、あの指輪とは。

あれは装飾は他のに比べて地味だが、古の王に由縁のあるもので、母から託された大切なものなのだ。



最近まで屋敷に出入りしていた者に話を聞くために、少し離れた町へ出向いた。

たずねると、彼女は知らないと首を横に振った。


気落ちして、ぼんやりと近くの宝飾店に入った。

偶然入った店だったが、店内に並んでいた指輪の中に、探していた指輪を見つけた。

すぐさまそれを買い、売りにきたのは誰かと聞いたが、店主は黒髪の若い女の子ということしか分からないと言った。


思い浮かぶ顔があった。

いつも反抗的な態度を取っていた、黒髪の少女だ。

彼女は、夫に心酔していた。


執事には本当のことを伝え、それ以外の者には「探していたものが見つかった。」とだけ話した。

例の黒髪の少女は、顔を青くしていた。



黒髪の少女は、屋敷の裏口からひっそりと去っていった。




わたしの中の伯爵の見た目ですが……。

世界史の詳覧に載っていた絵画の右端にいる尊大なスーツの男を想像しています。

ビアード キングストン アポン ハル の画像です。

女を侍らせてますし。

あごをくいと上げて目を細めるこの顔。

伯爵もやります。

たぶん。

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