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12 乱戦3

女勇者アイラ視点です。主人公どこいった……(´・ω・`)

 動きが止まった巨大な魔剣──超魔戦刃(イクシードソード)ラッドに、セルジュが弓を構える。


「終わりです──【最大装弾一点突破(フルバーストアロー)】」


 放たれた777本の光の矢が空中で寄り集まり、巨大な矢となってラッドに撃ちこまれる。


「ま、まだです……っ!」


 が、敵もさるもの。


「おおおおっ!」


 無数の光刃を放って矢の威力を弱め、致命傷だけは避けたようだ。


 刀身から光のエネルギーを吹き出し、後退するラッド。

 セルジュにはかなわないと悟り、逃走を選んだようだ。

 と、


「逃がさん」


 上空から青い輝きが降り注いだ。


「これは──!?」


 ラッドの、驚愕の声。


「奇蹟兵装ガブリエル──【海竜槍破流水撃ドラゴニックアクアブラスト


 大量の水流が渦巻き、竜のような形をした水圧の刃となって魔剣デュランダルを両断する。


 それが──超魔戦刃ラッドの最期だった。

 爆発する巨大魔剣の向こうから、精悍な顔立ちの男が進み出る。

 青い大剣を肩に担いだ格好で。


「リオネス様!」


 アイラが叫んだ。

 リオネスは軽く手を上げ、


「アイラ、キーラ、無事だったか。それにお前たちは──」

「よかった。どうにか合流できましたね」


 こちらを見回すリオネスに、セルジュが微笑んだ。


「お前たち……私やアイラ、キーラを探しに来たのか」


 事情を察したらしいリオネスは、深々と頭を下げた。


「ラグディアという帝国兵士と戦ううちに、はぐれてしまったのだ。手間をかけたな。すまない──そして、ありがとう」

「こうして無事に合流できてんですからいいじゃないですか。あとはマグナさんやキャロルさんと落ち合うだけですね」

「……マグナ、だと」


 リオネスの片眉がぴくりと動いた。


「噂に聞くマグナ・クラウドか」

「ご存知でしたか」

「……噂だけは、な」


 リオネスはセルジュを意味ありげに見た。


「上層部からも少し、な」

「わたくしもです」


 同じく、意味ありげにうなずくセルジュ。


 ここでは話せないことを視線だけで会話をしている──。

 アイラはそんな印象を受けた。


(上層部は──何かを隠しているのかしら? あたしたちには話さず、四天聖剣にだけ何かを明かしている、とか……?)


 疑念が湧き上がる。


 とはいえ、アイラたち第二階位と四天聖剣では組織内での立ち位置がまったく違う。

 何よりも彼女は上層部の命令通りに動く手駒であることに不満はない。


(気にならない、といえば嘘になるけど……ね)


 ふとキーラに視線をやると、彼もこちらを見ていた。

 たぶんアイラと同じようなことを考えているのだろう。


 双子ならではの以心伝心で、分かる。


(今はとりあえず──任務を果たしたことを喜べばいい。あたしたちは命令を遂行することを第一に)


「今ごろ、マグナとキャロルは二人っきりなのよね」


 エルザがぽつりとつぶやいた。

 勝気で快活な彼女らしからぬ、物憂げな横顔だった。


 おや、とアイラが目を瞬かせる。


「もしかして、エルザ──マグナのことを?」

「っ……! ば、ば、馬鹿なこと言わないでよっ。べ、別にマグナを意識なんてしてな、して、してないんだからっ」


 思いきり動揺していた。

 アイラは思わずクスリと微笑んだ。


「へえ、エルザってそういう一面もあるのね」

「だから、違うの……違うのよう……」


 エルザは顔を赤くして口ごもる。


 当人がなんと言おうと、それは恋する乙女そのもので──。

 とても、微笑ましい。


 あるいは、とアイラが気づいた。

 彼女の心が以前よりも強さを増し、奇蹟兵装の扱いが向上したのも恋心の為せる技なのかもしれない。


 人を想う心が、彼女の精神力を強化した──。

 飛躍した発想だろうか?


 だが、エルザの様子を見ていると、あながち間違いでもない気がする。

 四天聖剣たちの強さを見せつけられ、ショックを受けた部分も少なからずあるのだが──。


(あたしはあたしで、もっと強くなれる道を探さないとね)


 勇者の力は『心の力』。

 自分なりのやり方で、心を成長させていこう。


 そしていつか、自分も四天聖剣に──。




「へえ、ラシェルもラースもラッドも死んじゃったんだ?」




 茂みの向こうから、声がした。

 聞き覚えのある声だ。


「あなたは──」


 アイラはハッと顔をこわばらせる。


 現れたのは──四肢が異様に長く、背から触手を生やした異形の戦士。


 超魔戦刃ラグディアだ。

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