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11 乱戦2

前半は女勇者アイラ視点、後半はマグナ視点(ようやく)です。

 胴体部を撃ち抜かれたバジリスクは、そのまま動かなくなった。


 まさしく──瞬殺。


「強い……!」


 アイラは息を飲んだ。


 今までに何度か見たリオネスの強さも圧倒的だったが、セルジュもまた同格の強さを感じる。


 これが、最強の勇者『四天聖剣(セイクリッドエッジ)』──。

 第二階位の自分とは、わずかに一つしか階位が違わないはずなのに……その強さには天地の開きがあった。


 全身がひとりでに震える。


「戦いの気配を感じて来てみたのですが──間に合ってよかったです」


 セルジュが戦場にはそぐわない、柔和な笑みを浮かべた。


「た、助けていただきありがとうございました、セルジュ様」

「感謝します、セルジュさん」


 アイラが深々と頭を下げ、エルザも礼を言う。


「いえ、アイラさんもエルザさんもご無事で何よりでした」


 つばの広い帽子をくいっと上げ、セルジュが笑みを深くする。

 それから、もう一体の超魔戦刃(イクシードソード)──巨大な魔剣デュランダルに向き直った。


「残るはあれですか」

「姉さん、エルザ」


 と、キーラも駆け寄ってきた。

 息が切れている。


「すみません。緊急事態のようだったので、キーラさんを引き離して先に来てしまいました」

「い、いえ、僕が遅いだけなので……」


 はあ、はあ、と荒い息をつくキーラ。

 かなり体力を消耗している。


 といっても、彼も第二階位勇者だ。

 そのスピードは凡百の勇者をはるかにしのぐ。


 単にセルジュが常識はずれの速度でここまで駆けつけただけで、彼が遅いわけでは決してない。


「残るは、あの魔剣のような姿のモンスターだけですね」


 セルジュが弓を構え直した。


「超魔戦刃──帝国の改造兵士のようです、セルジュ様」

「なるほど、あれが」


 アイラの説明にうなずくセルジュ。


「とりあえず排除しておきましょうか。その後でゆっくりとリオネスさんを探しましょう」

「排除? 舐められたものですね!」


 魔剣から無数の光刃が飛んだ。


「【最大装弾精密連射(サウザンドアロー)】」


 すかさずセルジュが777本の矢を放ち、それらを迎撃する。


 先ほどラースを倒した一転集束突破型の攻撃から、今度は対多数迎撃型の攻撃への切り替え。

 連鎖的に起きた爆発が周囲を覆い隠した。


「確かにあなたの奇蹟兵装の攻撃力はすさまじい。ですが──しょせんは弓。近づいてしまえば──」


 爆炎の向こうから、魔剣が猛スピードで突っこんできた。


「っ……!」


 バックステップするセルジュ。

 だが、それよりも、ラッドが間合いを詰める速度の方が上回っている。


「弓よりも剣の方が有利な間合いで、確実にあなたを仕留めてみせましょう!」


 弓使いの弱点ともいえる接近戦を挑むラッド。

 セルジュもなんとか間合いを離そうと、牽制の矢を放つが、敵はものともせずに突っこんでくる。


「奇蹟兵装アイギス──【輝きの盾】!」


 エルザが叫んだ。


 スキルを再使用するための精神力チャージが終わったらしい。

 ふたたび現れた障壁が、魔剣の突進を阻む。


「し、しまっ……」


 敵の動きが一瞬止まった間に、セルジュはふたたび距離を取った。


「ありがとうございます、エルザさん。とどめはわたくしが──」


 四天聖剣の青年は礼を言って、弓を構え直した。


 これで、決着だ。

 アイラはホッと安堵する──。


    ※


「みんな、無事でいてくれ……!」


 俺はキャロルと一緒にひたすら走っていた。

 俺より先に仲間を攻撃する、と卑怯な行動に出た三体の超魔戦刃を追いかけて。


 先ほどから断続的に爆音や衝撃波の音が鳴っている。


 その音はだいぶ近づいていた。

 そろそろ合流できるはずだ。


 とはいえ、【ブラックホール】が反応していないから、まだ敵とは一キロ以上離れているだろう。


「ああ、もどかしい──」


 俺はなおも走る。

 さすがに息が切れてきた。


 スキルはともかく、俺の体力は冒険者の中でもそれほど高くない。


「これは……!」


 と、キャロルが顔をこわばらせた。


「どうした?」

「禍々しい気配が近づいてくるのを感じるのです」


 キャロルの顔は青ざめていた。


「さっきの三人とは、別の──もっと、不気味な匂いが」

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   ※ ※ ※


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