表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/168

7 剣と盾1

引き続き女勇者アイラ視点です。

「奇蹟兵装の使い手──勇者ね、あなたたち」


 蛇髪の女巨人がアイラたちを見下ろしている。


 身長は十メートルほどだろうか。

 一見して黒いレザースーツのようにも見える体表はグラマラスで、異形の艶めかしさを漂わせている。

 ウェーブのかかった長い髪は一本一本が蛇になっていて、不気味にうねっている。


 まるで蛇魔女(メデューサ)を巨大化したような姿。


「ただのモンスターじゃなさそうね」


 隣でエルザがつぶやいた。


「モンスターと一緒にしないでほしいわね。あたしは超魔戦刃(イクシードソード)ラシェル。ヴェルフ皇帝陛下に生み出された超常の存在よ」


 女巨人が名乗る。


「帝国の改造兵士……ということかしら」


 つぶやくアイラ。

 もしかしたら、リオネスと交戦したラグディアの同類かもしれない。


「出会った早々で悪いけど──死んでもらえるかしら」


 ラシェルが淡々と告げる。


 その声には一片の感情もこもっていなかった。

 まさしく──兵器のような声音。


「死ね、とは穏やかじゃないわね」


 アイラはキッと女巨人を見上げる。


「あたしは第二階位勇者、アイラ・ルセラ。改造兵士ごときに後れは取らないわよ」


 すでにいつでも戦闘に移れるよう、全身の筋肉をたわめ、奇蹟兵装の柄に手をかけていた。


「いえ、先に聞いておこうかしら。あなたたち、この辺りで一人の兵士を見なかった? 黒髪に飄々とした雰囲気の中年男よ。名前はラグディア」


 と、たずねるラシェル。


「いちおう仲間だし、皇帝陛下の命令だから回収しなきゃいけないのよ」


 ──なるほど、やはり彼女はラグディアと同じ種類の改造兵士ね。

 アイラは内心でつぶやいた。


「あたしも聞いておくわ。この辺りで一人の勇者を見なかった? 東方大陸風の道着を身に着けた、三十歳くらいの男性よ。名前はリオネス」

「なぜ、あたしだけが情報を与えなければならないのよ」

「その言葉はそっくり返すわ」


 言いながら、アイラは相手との距離を目測し、微妙に間合いを詰めたり、逆に遠ざかったりする。

 それは相手も同じだ。


 表面上は軽口めいた会話をしつつ、互いに仕掛ける必殺のタイミングと距離を測っていた。


「気を付けて、アイラ」


 背後でエルザがささやいた。


「姿の通りメデューサと同じ能力を持っているとしたら──たぶん石化能力を備えているはずよ」

「石化……ね。ならば、その前に斬り伏せるわ」


 アイラは腰の細剣──『奇蹟兵装アスカロン』を構えた。

 バチッ、バチィッ、と細い刀身から紫色の火花が弾け散る。


 雷撃属性の力を持つ第二階位の奇蹟兵装──アスカロン。

 アイラの技量と合わされば、上位魔族すら打ち倒す攻撃力を発揮する。


「全開で、ね」


 双子の弟キーラもそうだが、アイラは初見の相手にはまず二、三割の力で様子見するのをセオリーとしている。

 余分な消耗を避けるためであり、また生半可な相手には全力を見せたくない、というプライドでもあった。


 だが──この相手にそんな余裕は見せられない。


 アイラの中の本能が警告しているのだ。

 最初から十割の力を出さねば、殺される──と。


「アイラ、私がサポートを──」

「必要ないわ。魔族やモンスターと合成されているとはいえ、しょせんは人間の兵士でしょ」


 エルザの助力を断り、アイラは地を駆けた。

 本来なら二人で戦った方がいい、と分かっていたが、プライドが邪魔をした。


(あたしは第二階位勇者のアイラ・ルセラ! こんな奴、一人で倒してみせるっ)


 メデューサと同じ能力ならば、相手の石化は『魔眼』から発せられるはずだ。

 ならば、常に敵の視界外にいるようにして攻撃すれば、勝てる。


「速い──!?」


 ラシェルが驚愕の声を上げる。


「あなたが遅すぎるのよ。その図体では小回りが利かないのも無理はないけどねっ」


 勝気に叫び、アイラはさらに加速した。


 木々の陰から蔭へ。

 相手の視界の死角を移動しながら、アイラはラシェルの背後に回った。


()った!」


 アスカロンを掲げ、雷撃と斬撃の併用技を放とうとする。

 刹那、


「アイラ、逃げて!」


 エルザの警告が聞こえた。


 とっさに本能的に跳び下がり、手近な木の陰に隠れる。


「っ……!?」


 直後、右足が鉛のように重くなった。

 いや、石のように──というべきか。


 彼女の右足は太ももの半ばまでが灰色に変色している。

 石化、している。


「そんな、どうして……!?」

「あたしの石化能力は『魔眼』に宿っている。だけど──この両目だけに宿っているとでも思ったの?」


 ラシェルの勝ち誇った声。


 アイラはようやく気付く。


 メデューサの象徴ともいえる、蛇の髪。

 その無数の蛇たちの目もまた、石化の魔眼になっているのだと──。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


▼書籍化作品です! タイトルクリックで小説ページに飛べます!▼

☆黒き剣帝 元最強のアラフォー全盛期を取り戻して無双ハーレム

▼ノベマ限定作品です。グラスト大賞に応募中! 応援していただけたら嬉しいです!▼

☆冴えないおっさん、竜王のうっかりミスでレベル1000になり、冒険者学校を成り上がり無双

なんでも吸い込む! ブラックホール!! (´・ω・`)ノ●~~~~ (゜ロ゜;ノ)ノ
あらゆる敵を「しゅおんっ」と吸い込んで無双する!!!

モンスター文庫様から2巻まで発売中です! 画像クリックで公式ページに飛びます
eyrj970tur8fniz5xf1gb03grwt_p5n_ya_1d3_y





ツギクルバナー

cont_access.php?citi_cont_id=314270952&s

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ