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5 決意と対峙

 毒の息だろうと、魔眼だろうと、俺の【虚空の封環(ブラックホール)】はすべてを吸いこみ、封殺する──。

 残る初老の男がどんな攻撃手段を持っているかは分からないけど、まず大丈夫だろう。


 あとは、どう対応するか。

 モンスターの類なら討伐すれば終わりだけど、奴らは人間としての知性を持っているみたいだからな……。


 三人の兵士たちは、明らかに気圧された雰囲気だった。

 一キロ以上の距離を置いても伝わるくらいに。


 俺のスキルに圧倒されている──。


「……ラッド、あんたも攻撃しろよ」

「いえ、無駄でしょう」


 ラースの言葉に、ラッドと呼ばれた初老の男が首を左右に振った。


「あれはあらゆるものを吸いこむようです。お二人の攻撃が封殺される以上、私の攻撃も同じ結果をたどるでしょう。無駄な消耗は避けるべきかと」

「……ちっ」


 舌打ちしたラースが俺をにらむ。

 一キロ以上離れているっていうのに、その眼光にはすさまじいプレッシャーが宿っていた。


「いい気になるなよ。俺たちは究極の生体兵器──『超魔戦刃(イクシードソード)』だ。どんなスキル持ちだろうが、たかが人間に後れを取ってたまるか!」

「あたしたちにはまだ奥の手があるのよ」

「お二人とも……私たちの任務は」

「任務任務ってうっせーよ」

「戦いたいのよ……強い奴を見ると、抑えきれなくなるの」

「……超魔戦刃のサガからは逃れられない、ということですかね。まあ、実を言うと私も」

 ラースとラシェルに苦笑するラッド。

「戦ってみたい、というのが本心ですが」

「じゃあ決まりだな」

「やるわよ」

「皇帝陛下には申し訳ありませんが、『あの力』を使ってみましょうか──」


 そして、彼らの声が唱和する。


「『超魔戦刃(イクシードソード)魔想解放(コードアシュタロート)』」




 三つの光が、弾けた。




「これは──」


 三人の超魔戦刃たちの姿が変化する。

 人の姿から、巨大な魔獣の姿へと。


 ぐるるるるるおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!


 咆哮とともに衝撃波がほとばしった。

 森の木々がなぎ倒され、爆炎があちこちで上がる。


「こいつら──」


 あっという間に奴らの周囲数キロが荒野と化す。

 いきなり滅茶苦茶する連中だ。


「『魔想解放(コードアシュタロート)』──これがあたしたちの本来の姿よ」


 ラシェルが変身した、身長十メートルほどの巨人が告げた。

 女性らしい艶めいたボディラインに、無数の蛇が寄り集まった髪。

 まさしく蛇魔女(メデューサ)が巨大化したような姿だ。


「人間型のときよりも、攻撃の出力は上がってるからな。覚悟しやがれ」


 体長十メートルほどの毒竜(バジリスク)の姿をしたモンスターが、ラースの声で告げる。


「すべてを切り裂いて御覧に入れましょう」


 刀身が十メートルほどの光り輝く魔剣(デュランダル)の姿をしたモンスターが、ラッドの声で言った。


「あまりの破壊力から、陛下には軽々しい発動を禁じられています」


 と、ラッド。


「ですが、この姿になった以上──すべてを殲滅するまで、我々は止まりません」

「全部ぶっ壊してやるよ、ひひひ」


 くそ、あんな威力の攻撃を際限なく出されたら、【ブラックホール】で守られている俺やキャロルはともかく、他のみんなが巻き添えになる。


「巻き添えが心配?」


 ラシェルが俺の気持ちを読み取ったように笑った。


「狙うなら、俺を狙えばいいだろう。正面から来いよ」


 俺は嘲笑交じりに三体を見据えた。

 挑発は苦手だけど、そんなこと言ってられない。


「そんなに俺が怖いのか」


 奴らの注意を俺に引き付けるんだ。


「怖い? あたしたちは兵器よ。そんな感傷は持ち合わせていない」

「俺たちはただ破壊のためにだけ存在してるんだよ」

「喜怒哀楽──人間だったころには、そんな感情も持っていたかもしれませんが、改造された今はもう何も感じません」


 三体が順番に告げた。


「誰が犠牲になろうと関係ない。全力の攻撃をぶつけるだけ──あなたを倒すために」


 ラシェルの言葉は、どこまでも冷たい。


「……よく分かった」


 俺は奴らを見据えた。


「お前たちが敵だ、ってことが」


 人間の姿をしていたから、迷いが生じた。

 だけど、その迷いは吹っ切れた。


 あくまでも、あいつらは『兵器』だ。


 だったら──仲間を傷つけられる前に、俺がこいつらを倒す。


「まさか味方に見えたのかよ?」


 ラースが嘲笑する。


「俺たちの間にあるのは、殺すか殺されるか──それだけだろうが」

「なんで、俺を狙う──」


 思わずたずねた。


「邪魔だからよ」


 ラシェルが答える。


「我らがヴェルフ皇帝陛下は世界をその手につかもうとしているお方。そのための侵略戦争を全世界に仕掛けるつもりです。その対抗勢力となる強い力は」

「等しくあのお方の邪魔になります。ゆえに、私たちは帝国に属しないすべての強き者を排除します──」


 ラシェルの言葉を継いで告げるラッド。


「今後の戦いのためにも、まずはお前の戦闘データを取らせてもらうぜぇ」


 楽しげに笑うラース。


「なら、俺は──俺や仲間たちに仇為すお前たちを排除する」


 黙って殺されてなんて、たまるか。


 世界のために戦う、なんてのはピンとこないけれど。

 俺自身やキャロルたちを守るためなら──。


「戦う。この力で」


虚空の封環(ブラックホール)】で──。

【18.12.15追記】4話同様に超魔戦刃たちのセリフ回しを修正しました。大筋は変化なしです。

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