3 再会と組分け
「アイラ、キーラ、無事でよかった」
俺たちは双子勇者と再会することができた。
さすがに激しい戦いを潜り抜けてきたらしく、二人のマントや肩当てはあちこちが切り裂かれ、焼け焦げ、ぼろぼろだった。
「……ふん、第二階位勇者にしては随分と苦戦したようね」
鼻を鳴らすエルザ。
口調はともかく、その表情には安堵の色があった。
やはり同期だけあって心配していたんだろう。
「お二人とも怪我してるのです。今、あたしが治すのです~」
キャロルが、ぴょこん、と尾を振って、二人の元に歩み寄った。
「いきますよ~、『治癒の輝き』!」
呪言とともにキャロルの尾にホタルのような淡い光が灯った。
その光が二人の元へ移動し、弾ける。
「治った──」
アイラとキーラの傷はすっかり元通りのようだ。
なんか、以前よりも治癒能力が上がっているような……?
「えへへ、あたしもこの間のクエストでたくさんの人を治療したりしたので、ちょっとレベルアップしたみたいなのです」
キャロルが嬉しそうに微笑む。
新たな奇蹟兵装を授かったエルザといい、成長してるんだな。
なんだか、自分のことのように嬉しい。
「お二人は、リオネスさんと一緒ではなかったのですか?」
セルジュがたずねる。
「それが……ベアトリーチェさんを奪還するために帝国兵と戦っていたんだけど、その途中ではぐれてしまって……」
「リオネスさんは帝国の兵士と一騎打ちになって、すごいスピードで移動しながらこの森の中に入っていったんだ。僕らもそれを追ったんだけど、行方はつかめなかった」
アイラとキーラが左右に首を振る。
「面目ないわ」
「ごめん」
「とりあえず、あなたたちが無事だったし、リオネスさんはこれから全員で探せばいいでしょ」
落ちこむ二人にエルザが言った。
「それは、そうだけど……」
「第二階位勇者がそんな豆腐メンタルでどうするのよ。しっかりしなさい」
エルザが、ふん、と鼻を鳴らす。
「……そうね」
「……だね」
勝気な発破が効いたのか、双子勇者がそろって顔を上げた。
「では、次はリオネスさんの捜索ですね」
と、セルジュ。
「森の中は広いので、三組に分かれましょう。見つけた組は合図を」
「合図ってどうするんだ?」
「わたくしの『風』をあなたたち全員にまとわせておきます。それを通じて、わたくしに念話を送ってください」
俺の問いにセルジュが答えた。
「念話……離れていても通信できるってことか」
「そういうことです」
なるほど、じゃああとは組分けだな。
「三組ということは二人ずつの組、ということなのです?」
「二人っきり……か」
キャロルとエルザが顔を見合わせていた。
それから俺をチラリと見る。
ん、なんだ?
「では、簡単なくじを作ります。それで組分けをしましょう」
と、セルジュ。
そうして、俺たちは三組に分かれ、森の中をそれぞれ進んでいった──。
「ふふふふふふふ」
キャロルがさっきから上機嫌だ。
「どうした、キャロル?」
「ふふふふふふふふふふふふふ」
顔がにやけていた。
「どうしたんだよ、一体?」
「いえいえ~、別にマグナさんと二人っきりだから嬉しいとか浮かれてるとか、まあそれはあったりするんですけど、えへへへへ」
「???」
だから、なんの話なんだ?
組分けによって、俺はキャロルと、エルザはアイラと、セルジュはキーラと、それぞれ組を作り、三方に分かれて森の中を探索することになった。
さて、リオネスをどうやって見つけるか。
「──何か、いるのです」
キャロルがぽつりとつぶやいた。
「えっ」
「たぶん1キロ以上先に……ものすごいプレッシャーを感じるのです」
キャロルは獣人だけあって、人間よりもずっと感覚が優れている。
彼女の視覚や嗅覚などが、それを感知しているのか──?





