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なんでも吸い込む! ブラックホール!! (´・ω・`)ノ●~~~~(゜ロ゜;ノ)ノ あらゆる敵を「しゅおんっ」と吸い込んで無双する!!!  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第8章 超戦士たちの邂逅編

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4 三つ巴の戦局

今回は魔族ルネ視点です。

「とりあえず、あいつを抑えればいいんだよな!」


 言いつつ、ルネは突進した。


 標的は暴走状態になった改造兵士──ラグディア。

 前方からは、最強の勇者リオネスがルネと同じく突進してくる。


「があっ!」


 ラグディアが剣をめちゃくちゃに振り回した。


 ごうっ!


 人間の限界をはるかに超えた膂力による斬撃が、すさまじい突風を生む。


 ルネもリオネスも大きく後退した。


 ──戦況は三つ巴、って感じだな。


 ルネは頭の中で状況を整理する。


 ここは、本来は帝国の勢力圏内だ。

 国境沿いでの、帝国と他国との戦いの場。


 勇者たちはそれに直接介入しに来たわけではなく、戦いに巻きこまれた際に自衛していただけ。

 要は、降りかかる火の粉を払っていたのだ。


 だが、勇者リオネスは強すぎた。

 帝国にとって虎の子である超魔獣兵(イクシード)を何体も倒され、危機感を募らせた皇帝が勇者の討伐指令を出した。

 そして派遣されたのが秘密兵器ともいうべき戦士ラグディア。


 ──のはずだったのだが。


 そのラグディアが暴走している。

 試作品だけあって、制御が効かなかったのか。


 奴は敵も味方もおかまいなしに殺し、破壊する──。

 そんな雰囲気を放っていた。


「なら──奴を抑えるのに、多少乱暴な方法になってもしょうがねぇよな」

「……楽しんでませんか、ルネさん?」


 後方からミジャスが呆れたような声をかけた。


「気のせいだ」


 ニヤリと笑うルネ。


 試したい。

 戦ってみたい。

 俺の力が、こいつに通じるのかどうか──。


 内心では、そんな闘争心が満ちているが。


「魔族の気配を持つ人間と、そっちは純然たる魔族か」


 と、リオネスがこちらに向き直った。


「二体まとめて斬り捨ててやる」


 ぶんっ、と手にした青い剣を一振りする。

 その刀身が歪み、伸び、長剣サイズから大剣サイズへと変化した。


「斬り捨てるだと? やれるもんならやってみやがれ……!」


 ルネは大剣を構え、言い放つ。


 が、言葉とは裏腹に全身に緊張感が走り抜けていた。


 最強の勇者、四天聖剣リオネス。

 上位魔族どころか魔軍長にすら対抗できるレベルの強さを持つ勇者。


 下級魔族の自分がどこまで渡り合えるか。


(──いや、違う。『渡り合えるか』じゃねぇ)


 大剣を構え直し、じりじりと間合いを詰める。


(倒すんだ。超えるんだ)


 自身を鼓舞する。

 最強を目指すためには、越えなければならない壁だ。


(俺はこいつに──勝つ!)


 と、


「僕を放ったらかしかい? 随分と軽く見られたもんだねぇ……ぐるるるおおおおおっ!」


 ラグディアが咆哮した。

 背中から生えた触手をこちらに向けて振り回す。


 ルネも、リオネスも、まとめて薙ぎ払おうという攻撃だ。


「ちっ、見境がなくなってやがる!」


 ルネはその場を飛び退いた。

 リオネスも大きく後退して触手を避ける。


 少なくとも魔族のルネに対しても、攻撃を躊躇する様子はない。


 いや、あるいは──この場の全員を敵とみなしているのかもしれない。


「ぎゃあっ!」

「がはぁっ!」


 触手の巻き添えを食った帝国兵が十数人まとめて両断された。


「まずお前からだ」


 リオネスが地を蹴った。


「弱い方から叩くのは、戦術の常道──」

「くっ……!?」


 瞬間移動と見まがうほどの速さで、リオネスがルネに肉薄する。

 見て、反応していては間に合わない。


「があっ!」


 ルネは咆哮とともに大剣を振り回した。

 野生のカンだけで敵の動きを予測し、斬りつける。


「──ふん」


 リオネスは数歩、後退した。


「カンは鋭いようだな。見たところ、下級魔族のダークブレイダーのようだが……力量は中位か、上位魔族クラス、といったところか」


 精悍な顔が引き締まる。


「とはいえ、私の敵ではない。仮にお前が上位魔族や、あるいは魔軍長クラスの強さを持っていたとしても」


 青い大剣を上段に掲げた。

 その刀身を青いオーラが覆う。


「っ……!」


 ルネは、息を飲んだ。


 リオネスの姿に重なるように、青く巨大な竜の姿を幻視する。

 先ほどよりもはるかに高まった彼の威圧感が、ルネにそんな幻を見せているのか。


「勇者の中の勇者──四天聖剣(セイクリッドエッジ)が魔族を相手に敗北などあり得ぬ」

「弱い奴から狙う、か。舐められたもんだぜ、この俺も」


 ルネも大剣を構え直した。


 その手が震えている。

 震えが、止まらない。


 こんな感覚は、生まれて初めてだった。


 相手との力量を見極め、戦術的に撤退したことはある。

 自分より強い相手に敗れ、叩きのめされたこともある。


 だが、ここまで明確な『恐怖』を覚えるのは──。


 生まれて、初めてだった。


「化け物が……!」


 ルネは唇をかみしめてうめく。


 恐ろしい。

 逃げ出したい。


 本能が全力で警告を送ってくる。


 まさしく、最強の敵。

 最強の力──。


「ふうっ……」


 ルネは大きく息を吐き出した。


「──いや、違うな。『最強』はこいつじゃない」


 小さく笑う。


「『最強』なら……すでに出会ってるじゃねーか」


 すべてを吸いこみ、瞬殺する力。

 無双の顕現ともいえる、その力に。


 その境地にたどり着くまで、ただ進むのみ。


 ただ、戦うのみ。


 たとえ相手がどれだけ強くても──。


「震えてんじゃねーよ、動け」


 ルネは自身に言い聞かせた。


「動けよ、俺の体……!」


 四肢に力がみなぎっていく。

 恐怖を、闘志が凌駕し、塗りつぶしていく。


「いくぜ、勇者様っ!」


 地面を踏み砕く勢いで、ルネは一気に加速した。

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