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2 第二波、襲来

 赤い渦巻が回転を速めた。


 雷鳴が、轟く。

 真紅のスパークが無数にひらめき、大気を爆裂させる。


 そして──、


「何かが、出てくる……!?」


 俺は渦の中心部を見据えた。




「愚かな人間どもよ……」

「讃えよ……神を讃えよ……」




 響いたのは、厳かに告げる声。


 同時に、渦の中から巨大な影が二つ、現れた。


 黄金に輝く鳥のような怪物。

 九つの頭を持つ蛇型の怪物。


 いずれも金属質の装甲に覆われた、無機物的なデザインのモンスターだ。

 いや、あるいは魔導兵器の類だろうか。


 二体は、いずれも全長五十メートルほどはあった。


 一体が王都の南に、もう一体は王都の東に、それぞれ落下する。


「見たこともないモンスターだな……」


 つぶやく烈風帝クルーガー。


「いえ、モンスターではありません……」


 震える声で告げたのは、蒼の聖女アンだ。


「モンスターじゃない?」

「あの二体からは、聖なる気配を感じるんです。神の力の気配を」


 アンは青ざめていた。


「まるで、わたしたちに神の裁きでも下しにきたような……そんな、気配です」

「神の、裁き……」


 つぶやく俺。




 ──次の瞬間、黄金と蒼の輝きが視界いっぱいにあふれた──。




「っ……!?」


 続いて爆発と衝撃波が吹き荒れる。


 鳥型の放った雷と、蛇型の放った氷の塊が同時に炸裂したのだ。

 周囲の建物は、一区画分くらいがまとめて吹っ飛んでいた。


「──って、思いっきり町を壊してるんだけど!?」


 叫ぶ俺。

 全然、聖なる存在っぽくないぞ!


「相手がなんであれ、王都を守るのが先決じゃのう」

「二手に分かれて迎撃するのがいいだろう」


 ヴルムさんとブリジットが言った。


「正体が分からない以上、戦力は均等に分けよう。鳥型はヴルムさん、ブリジット、マグナ、蛇型はクルーガー、レイア、アンに──それぞれ任せたい」


 と、バーンズさん。


「あたしもマグナくんと一緒に行くわ」


 シャーリーが言った。

 すでに天馬に乗っている。


「四人は重いけど、全員あたしの天馬に乗って」




 俺たちは鳥型の元まで天馬で移動することになった。

 シャーリーの背に俺とヴルムさん、ブリジットがまとめてしがみついているから、かなり窮屈である。


 スピードもそれほど速くない。

 といっても、徒歩でいくよりはマシだけど。


 敵との距離は三キロ以上はあるだろうか。

【ブラックホール】の射程距離である500メートルまでは、まだ遠い。


「脆弱なる人間……だが、ごくまれに強者が存在する。それこそ神の駒となる者。我はそれを選別する……」


 鳥の怪物がうなった。

 バチッ、バチッ、とその巨体からスパークが散り、周囲の建物が爆散していく。

 と──、


「な、なんだ、こいつは!?」

「化け物……!?」

「ええい、魔物退治は冒険者の務めだ! いくぞ!」


 目をこらすと、十数人の冒険者たちが鳥の怪物に立ち向かっていた。


「あれは──」

「私たちをサポートするために、ギルドがSSやSランクの冒険者を用意していたはず」


 俺の問いに答えるブリジット。


「いずれも精鋭ぞろい。簡単にはやられない」

「うわぁぁぁぁぁぁっ……!?」


 全員が、怪物の羽ばたき一つで吹っ飛ばされた。


「……相手が悪かったみたいだ」

「……だな」


 顔を見合わせるブリジットと俺。


「シャーリー、もっとスピードは出ないのか」

「四人乗せてるから、これが精いっぱいよ!」


 俺の問いに答えるシャーリー。


 鳥の怪物が翼を大きく広げた。

 バチッ、バチッ、と周囲にスパークがまき散らされる。


「さあ、消し飛ばしてくれよう」


 まずいぞ、冒険者たちに雷撃を食らわせるつもりか!?


「なら、ワシが下りるとしよう。ここまで近づけば、走ったほうが速いわい」


 言って、ヴルムさんが飛び降りた。


「ひゅうっ、ふぉぉっ……」


 細長い独特の呼吸とともに、


 どんっ!


 地を蹴り、一気に加速するヴルムさん。


 速い!


気功武闘法(きこうぶとうほう)──長い時間はもたないだろうけど、短時間に限れば天馬で移動するより速く到着する」


 ブリジットがつぶやいた。

 ヴルムさんはみるみるうちに、敵との距離を詰める。


「将来有望な若いモンをいたぶるのはそれくらいにしてもらおうかのう、デカブツ」


 大きく跳び上がったヴルムさんが、双剣を怪物に繰り出した──。

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