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なんでも吸い込む! ブラックホール!! (´・ω・`)ノ●~~~~(゜ロ゜;ノ)ノ あらゆる敵を「しゅおんっ」と吸い込んで無双する!!!  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第6章 SSSランク冒険者編

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8 四天聖剣リオネス

「空間震動現象──か。厄介なことが起きてるみたいだねぇ」


 勇者アイラ・ルセラの目の前にいる勇者──ベアトリーチェ・ディレイドは、言葉とは裏腹に楽しげな顔だった。


 まるで占い師のように顔の下半分をベールで覆い隠している。

 ウェーブのかかった艶やかな黒髪に、切れ長の瞳。

 神秘的な雰囲気の美女だった。


 アイラは双子の弟であるキーラや最強の勇者である四天聖剣(セイクリッドエッジ)リオネスとともに、彼女を訪ねてやって来た。


 目的は、先日の魔族軍との戦い後、異空間に消えたと思われる冒険者マグナ・クラウドの捜索。


 世界で唯一の『空間操作能力』を備えた奇蹟兵装を操る第三階位勇者ベアトリーチェならば、その行方をつかめるかもしれない、ということで上層部から命じられたのだ。


 多数の魔獣が生息し、最近ではヴェルフ帝国の勢力圏内でもあるこの辺境地域に、彼女は一人で住んでいる。

 そして、勇者ギルドからの招集にも応じず、自由気ままに生きている。


 ゆえに、彼女に依頼をするときは、こちらから出向くしかない。

 ここに来るまでに魔獣や帝国兵と何度も交戦した。


 もっとも、それらはすべてリオネスが一蹴し、大きな苦労もなくここまでたどり着いたわけだが──。


 ぎおおおおおおおおおおんっ!


 遠くから、獣の咆哮が聞こえてきた。

 同時に、大勢の兵らしき声が。


 それらの声はどんどんと近づいてくる。


「ヴェルフ帝国の連中と対抗勢力の戦闘か。私が出よう」


 リオネスが席を立った。

 東部大陸風の道着を身に着けた、秀麗な顔立ちの青年である。


「あたしたちもサポートを──」

「不要だ」


 アイラがそれに続こうとしたところで、リオネスは手を上げた。


「お前たちはいざというときのために、ベアトリーチェを護衛しておけ。超魔獣兵(イクシード)ごとき、私一人で事足りる」


 言って、さっさと部屋を出てしまうリオネス。

 アイラは窓のカーテンを開けて外を見た。


「あれは──」


 息を飲んだ。


「偉大なる皇帝陛下が生み出せし超魔獣兵第十一号『豪覇大鬼(グレイテストオーガ)』──敵を蹴散らせ!」


 帝国の司令官らしき男が朗々と叫んだ。


 ぎおおおおおおんっ!


 咆哮を上げ、オーガによく似た怪物が三体、進み出る。


「なんて、大きさなの」


 アイラがうめく。


 何しろ、三体とも全長五十メートルを超えているのだ。

 ずしん、ずしん、と歩くたびに地震のように大地が揺れる。


「リオネス様、やはりあたしたちも──」

「敵が大きすぎます! とても奇蹟兵装が通用するサイズじゃ──」


 アイラがキーラとともに部屋を出ようとする。


「私の言葉が理解できなかったか、二人とも。ベアトリーチェの側を離れるな」


 リオネスは平然とした態度を崩さない。

 手にした槍──『奇蹟兵装ガブリエル』が青い輝きを発した。


「ガブリエル、千神変形(サウザンド)──『長剣(ロングソード)』」


 静かに告げる。

 次の瞬間、槍は剣へと形を変えていた。


 あらゆる武器に姿を変える『特殊型(イレギュラー)』。

 それが『ガブリエル』の特性だ。


「では、デカブツを駆逐するとしよう」


 リオネスは淡々と告げ、進み出た。




「つ、強すぎる……!」


 部屋の窓から戦況を見守っていたアイラは、ごくりと息を飲んだ。


 相手のサイズが規格外だろうと関係ないと言わんばかりに、リオネスは超魔獣兵たちを切り刻んだ。

 動けなくなるまで、数千数万数十万の斬撃を繰り出して。


 けた違いの攻撃力に加え、圧倒的な手数。

 攻撃一辺倒の戦闘スタイルが、リオネスの真骨頂のようだった。


 超魔獣兵といえば、英雄クラスのSSSランク冒険者ですら数人がかりでようやく立ち向かえる相手だ。

 それをまとめて三体、苦もなく倒すとは。


 さすがは最強の四天聖剣の一人。

 さすがは最強の奇蹟兵装の一つ、『ガブリエル』──。


「大した敵じゃない。しょせんはただのデカブツだ」


 こともなげに告げ、奇蹟兵装をしまうリオネス。


 秀麗な顔は涼しげだった。

 息一つ乱していない。

 返り血の一滴すら浴びていない。


「──とはいえ、ここから出られないのは困ったことだ」


 と、わずかに眉を寄せた。


「外部と連絡が取れん。マグナ・クラウドの捜索のために追加情報が欲しいところだが──」


 もちろん、彼一人なら帝国が相手だろうとたやすく活路を切り開ける。

 が、ベアトリーチェはここを動こうとしない。


 リオネスが場を離れた隙をついて帝国が襲ってきた場合、アイラとキーラだけでは防ぎきれないだろう。


 かといって、逆にアイラとキーラが情報を求めて外に向かったとしても、無事にたどり着ける保証はない。

 超魔獣兵ですら苦もなく狩れるリオネスが特別なのであって、やはり帝国は恐るべき相手なのだ。

 第二階位勇者のアイラやキーラをもってしても──。


「話の続きだ、ベアトリーチェ」


 リオネスが部屋に戻ってきた。


「マグナ・クラウドの行方には、その空間震動現象が関係しているのか?」

「うーん、どうだろうねぇ。ただ、マグナとかいう冒険者よりも、あたしにはこの現象の方がずっと興味深いよ。何せこれは──神の力の顕現だからねぇ」

「神の……力?」


 アイラは驚いてベアトリーチェを見つめる。


「単なる天変地異程度にはとどまらないよ。空間震動の果てに、おそらく『アレ』が現れるはずさ……ふふ」


 彼女は薄く笑ったまま、黙して答えない──。


    ※


【ブラックホール】によって巨大な尖塔は跡形もなく吸いこまれた。

 真下にいた人々の被害はゼロだ。


「ふう、間一髪だな」


 今のは、本当にギリギリだった。

 俺一人の力では救えなかった。


 とっさに、俺に身体強化呪文をかけてくれたアンのおかげだ。

 あとで礼を言っておこう。


 周囲を見回すと、建物の倒壊は一段落したみたいだ。

 上空の赤い渦巻もいつの間にか消えている。


 とりあえず、落ち着いたか……な?

 と、


「な、な、な……!?」


 クルーガーがやって来て、あ然とした顔で俺を見た。


「あ、あんた、なんだその魔法は──いや、異能系のスキルか?」

「これが俺のスキル【虚空の封環(ブラックホール)】。能力は『吸いこむ』こと」


 俺は端的に説明した。

 周囲を見渡し、他に危険な箇所はないか確認する。


「信じられん威力と効果だ……!」


 クルーガーはまだ呆然としている様子だ。


「けど、あんたはあくまでもSランクだ。認めたわけじゃないからな」


 ぷいっとそっぽを向くクルーガー。


「まあ、さっきのはすごかった……少なくとも俺の魔法よりも。だから、さっさとSSSランクまで上がってこい。その……待ってるからよ」


 照れくさそうに赤らんだ頬を、指でぽりぽりかいている。


 いや、それって俺のことを認めてくれたんじゃないのか?


 ……ツンデレさんか、こいつ。

※次回は明日の昼ごろに更新予定です。

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