表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/168

2 姉弟勇者

 エルザの同期だという双子の姉弟、アイラとキーラ。


 ともに彫像のように端正な顔立ちは、男女の違いはあるものの、造形がそっくりだった。

 姉のアイラは金色の髪、弟のキーラは銀色の髪を、それぞれ肩のところで切りそろえている。


 二人とも動きやすそうな軽装に、大きな肩当てとマント。

 アイラは腰に細剣を差し、キーラは巨大な剣を背負っていた。


「勇者ギルドでは落ちこぼれでも、冒険者業界でも名前を上げてるみたいじゃない」

「君って、冒険者の方が向いているんじゃないかな?」


 双子の勇者がにっこりと笑った。


「放っておいてちょうだい」


 エルザの表情がこわばる。


「……もしかして、仲が悪い相手なのです?」


 キャロルが小声でそっとたずねた。


「苦手なだけよ」


 はあ、とため息をつくエルザ。


「同期といっても、向こうは第二階位の智天使(ケルビム)級奇蹟兵装の使い手。末は、最強勇者の称号である『四天聖剣(セイクリッドエッジ)』まで上り詰めると噂される逸材。対して私は、最低階位の天使(エンジェル)級奇蹟兵装の使い手。差は歴然……でしょ」


 なるほど……彼女にとって『劣等感を刺激される相手』って感じなのか。


「でも、用があるのはあなたじゃない。そっちよ」


 言ったアイラが見たのは──俺だった。


 ん?


「あらためて自己紹介するわね。あたしはアイラ、彼は弟のキーラ。ともに勇者ギルドに所属する第二階位の勇者よ」


 濡れたような瞳や艶然とした笑みには、十代らしからぬ色香があった。


「今日は君を招待しに来たんだ。Aランク冒険者、マグナ・クラウドくん」


 キーラが微笑む。

 こちらも同性さえゾクリとさせるような色気がある。


 姉弟そろって異様に色っぽい双子だ。


「招待?」

「我らが勇者ギルドの本部が、ね。君のスキルに興味があるそうだ」

「今から、あたしたちと一緒に本部がある『大聖堂(カテドラル)』まで来てちょうだい」

「招待って、なんで俺を……?」


 あまりにも唐突な話だった。


「神託が下ったのよ」


 アイラが厳かに告げる。


「あなたは──神と魔の戦いに、大きくかかわる者だそうよ」




「『大聖堂』があるのは神聖王国セイロード。ここからなら約三日の行程ね」


 セイロードって、ここから国を二つくらい隔てた場所にあるよな。

 さすがに遠いぞ。


「だいたい、勇者ギルドに来い──なんて、いきなり言われても」


 俺は困惑していた。


 そもそも冒険者と勇者は、基本的にかかわりのない職種だ。

 強大な魔族が現れたときに共闘することも、まれにあると聞くが。


 俺だってエルザと出会わなければ、一生勇者とかかわることさえなかったかもしれない。


「彼と戦いを共にしてきたあなたたちも一緒に、ね」


 そんな俺の戸惑いを無視して、アイラがキャロルとエルザを指さした。


「三人そろってギルドの総本部に来てほしいんだ。どうかな?」


 と、キーラ。


「神託とは、神の意志。勇者であろうとなかろうと、逆らうことなど許されないわ」


 アイラが俺を見据えた。


 神託って、なんで俺が……?

 意味が分からなさすぎる。


「気が進まないようね」


 アイラが眉を寄せた。


「神託に逆らう気?」

「まあまあ、姉さん」


 険しい表情のアイラをとりなすように、キーラが微笑んだ。


「こう考えたらどうかな? たとえば、君は──自分のスキルをどこまで知っている?」

「えっ」

「たぶん、そのスキルは君にとっても未知の部分が大きいんじゃないかな。なぜ、これほどの威力があるのか? なぜ、突然身についたのか? なぜ、自分が選ばれたのか? このスキルの根源はなんなのか──」


 キーラの言葉に、俺は押し黙った。


 確かに、気になるのは事実だ。


 俺は自分のスキルについて、知っているようで、何も知らないのかもしれない。

 彼女たちについていけば、【ブラックホール】について何かが分かるかもしれない。


 以前に垣間見た【ブラックホール】の中にいる何者かについても。


「どうかな? 知りたくない?」


 俺の内心を見透かしたようにキーラがたずねる。


 ごくり、と息をのんだ。


「マグナさん、あたしはあなたの決断に従うのです」


 キャロルは真顔だった。


「キャロル……」

「だってマグナさん、知りたそうな顔してるのです。スキルのことが気になる、って。それを解き明かせるかもしれないなら、行ってみたい──って」

「けど、遠いぞ」

「いいじゃない。連日のように討伐してるんだし、ちょっとくらい休んでも」


 エルザが悪戯っぽく笑う。


「私も『大聖堂』にはちょっと興味あるかな」

「……じゃあ、行ってみるか?」

「なのです」

「いいわよ」


 ──というわけで、俺はキャロルやエルザとともに、その『大聖堂』という場所に向かうことになった。




 世界中で八万を超える勇者たちを束ねる国際組織、それが勇者ギルドだ。


『大聖堂』はその総本山ともいえる場所。

 本来なら、部外者はもちろん勇者であっても、限られた者しか立ち入れないんだとか。


 そこで俺たちを待ち受けるのは、一体なんなのか──。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


▼書籍化作品です! タイトルクリックで小説ページに飛べます!▼

☆黒き剣帝 元最強のアラフォー全盛期を取り戻して無双ハーレム

▼ノベマ限定作品です。グラスト大賞に応募中! 応援していただけたら嬉しいです!▼

☆冴えないおっさん、竜王のうっかりミスでレベル1000になり、冒険者学校を成り上がり無双

なんでも吸い込む! ブラックホール!! (´・ω・`)ノ●~~~~ (゜ロ゜;ノ)ノ
あらゆる敵を「しゅおんっ」と吸い込んで無双する!!!

モンスター文庫様から2巻まで発売中です! 画像クリックで公式ページに飛びます
eyrj970tur8fniz5xf1gb03grwt_p5n_ya_1d3_y





ツギクルバナー

cont_access.php?citi_cont_id=314270952&s

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ