14 最終局面へ
「ふ、ふざけるな、こんなにあっさり余が……ぬおおおおおおおおおおおおっ!?」
拍子抜けするほど、あっけない決着だ。
まあ、俺は超魔戦刃や超魔獣兵ですら問題にしないスキルを得ているんだ。
いくら皇帝がすごい魔法使いだっていっても、単独で出てきて勝てるはずがない。
頭に血が上ったのか、それとも──。
「やったのです、マグナさん!」
「すごいじゃない、マグナ!」
キャロルとエルザがはしゃぐ。
「はは、ちょっとあっけなかった……」
「これからすごい大決戦が始まるのかと、ちょっと緊張してたのです」
「まさか、ここまであっさりとはねー」
キャロルが微笑み、エルザは少し苦笑している。
まあ、俺も最初に気負ってしまった分、今は気が抜けていた。
「かの皇帝も、さすがに規格外の異能を持つ君には勝てないようだな」
前方で、ゆらり、と闇が揺らめいた。
「もはや使い道もなくなり、君にぶつけてみたが……せめて口八丁で丸めこむくらいの芸を見せればいいものを、なんの策もなく力押しとは」
「お前……は……?」
いる──。
闇の向こう側に。
皇帝なんかとは比べ物にならないほど、強大なプレッシャーを放つ何かが。
「お前は──」
数メートル前方に、金色のローブに身を包んだ魔法使い風の男がたたずんでいた。
──どくん。
心臓の鼓動が急激に高鳴る。
ただの魔法使いじゃない。
気配でわかる。
静かにたたずんでいるだけで、全身の毛穴が開き、ぬるい汗が噴き出してくる。
「お前……は……」
喉がからからに乾いていた。
皇帝を吸いこんで、それで終わりなんかじゃない。
すべてが終わったわけじゃない。
油断なんて、している場合じゃない。
「マグナさん……」
「マグナ……」
キャロルとエルザが俺の左右の腕にしがみついてきた。
二人もまた感じ取ってるんだろう。
目の前の男から吹きつける、異常なまでのプレッシャーに。
「私の名はエストラーム。魔界の王だ」
金色の魔法使いが名乗った。
「魔王──だと」
とうとう、魔界の王が直々におでましとは。
以前にも魔王の側近である『魔軍長』と戦ったことはある。
奴らが人間の世界を侵略するために、たびたび攻めてきているって話は知っている。
だけど、魔王が直々に人間界までやって来たって話は聞いたことがない。
その魔王が──とうとう、この世界に現れた。
しかも、俺の目の前に。
ごくり、と喉を鳴らす。
いくら無敵の【ブラックホール】があるとはいえ、さすがに魔王のプレッシャーは強烈で、普段ほどの安心感や余裕を保てない。
「人間の世界を……滅ぼしにでも来たっていうのか」
俺はかすれた声でたずねた。
「滅ぼす? いや、今回の目的はそれではない」
首を振るエストラーム。
「それはまだ後でいい。今はまず──魔界の戦力を整えることが優先だ」
まだ後でいい、っていずれは侵略する気満々じゃないか。
俺は憮然として魔王をにらむ。
「そんな顏をするな。君にとって素晴らしい提案をしようというのに」
「素晴らしい提案……?」
「私の部下にならないか、マグナ・クラウド」
魔王が唐突に提案した。
「部下……?」
「私の右腕として働いてもらいたい。その暁には、この地上の半分を君にやろう」
いきなりスカウトときた。
天軍や勇者ギルド、ヴェルフ皇帝の次は、とうとう魔界の王からも誘われるとは。
さすがに驚きだ。
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