13 帝国中枢部
超魔獣兵。
帝国にとって世界侵攻への主力兵器といえるモンスターたち。
一体で一軍に匹敵し、最強のSSSランク冒険者とすら互角以上に渡り合う最強の生物兵器。
もしもこいつらが量産されたら、どんな国も太刀打ちできないだろう。
「これ、もしかして大量に作ろうとしているのです?」
キャロルが青ざめた顔でつぶやいた。
「そんなことになったら帝国が世界征服しちゃうわよ……」
エルザも同じく青ざめた顔。
「そんなことはさせない」
俺は右手を前に突き出した。
しゅおんっ……!
【ブラックホール】の威力は相変わらず絶大である。
すべてのモンスターが一瞬にして吸いこまれた。
「ひ、ひいいい……」
近くにいた、白衣の男たちがいっせいに腰を抜かす。
たぶん超魔獣兵の開発者なんだろう。
「殺さないで……殺さないでぇっ!」
絶叫が響いた。
すすり泣きがそれに交じっている。
「い、いや、殺さないから」
俺は慌てて言った。
「ただ、この施設は破壊させてもらう。超魔獣兵を量産させるわけにはいかないから」
俺はスキルの詳細設定をいじり、今度は機器だけを吸いこむことにした。
しゅおんっ……!
あっという間に超魔獣兵の生産に必要な機器類がすべて【ブラックホール】内に吸いこまれる。
結構大掛かりな魔導機械だったし、また一から作り直すにしてもそれなりの時間がかかるだろう。
これで当面は、超魔獣兵の量産なんて真似はできないかな?
だといいんだけど……。
「おのれ……余の世界戦略の切り札を」
恨みがましい声が背後から聞こえた。
振り返ると、十メートルほど前方に漆黒のローブをまとった男がいた。
床から二メートルほどの地点に浮いている。
フードの奥にあるのは、精気に満ちた顔つき。
ぎらつく瞳が俺たちを傲然とにらんでいた。
「お前……は……?」
俺はそいつを見据えた。
反射的に拳を握る。
問いかけなくても分かっていた。
この気配。
この威圧感。
間違いなく、こいつの正体は──。
「余はこのヴェルフ帝国の皇帝である! 控えよ!」
ヴェルフ皇帝──。
俺は驚いてそいつを見据える。
「我が帝国の切り札ともいえる超魔獣兵の工房を──」
皇帝は怒りの表情だった。
「おまけにラグディアも手も足も出せずに敗れた模様。よくもやってくれおったな、マグナ・クラウド」
「世界侵略戦争なんてさせるわけにはいかないからな」
「汝ごときに、余の野望を邪魔させるものか──消えよ!」
皇帝が右手の錫杖を振った。
そこから雷撃がほとばしる。
「伝説の最上級呪文『メガサンダー』だ。弾け散れ、侵入者ども!」
迫る雷撃は、しかし俺の前面に展開された【ブラックホール】にあっさり吸いこまれて消える。
「──な、なんだと……!?」
皇帝が後ずさる。
「やはり、そのスキル……無敵か」
「あんたはベアトリーチェっていう勇者を捕らえているんだよな。そいつを渡してもらう」
俺は皇帝に詰め寄った。
ラグディアが帝城の最上部に彼女を移送させたはずだ。
皇帝が多分、その身柄を確保しているんだろう。
「ベアトリーチェだと」
後ずさる皇帝。
「なるほど彼女の奪還が目的か。分かった、汝の望み通り返そう」
ん、やけに素直だな。
「その代わり、我が配下にならぬか」
「えっ?」
「汝の力はあまりにも惜しい。余の下で最強の戦士として仕えよ。さすれば、この世のあらゆる富も栄誉も思いのままだぞ」
皇帝が誘ってきた。
以前にも天使から『天軍』に入れって言われたり、勇者ギルドから最上級待遇を提示されたり……けっこう俺ってモテモテかもしれない。
「……だが断る」
というか、承諾する理由がない。
「いったんこの中に入っていてくれ。状況が落ち着くまで、な」
俺は【ブラックホール】に皇帝を吸いこんだ。
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