5 最強の魔族1
前回更新から随分と間が空いてしまいましたが(汗)、更新再開です。
帝国が放った最強の刺客──『超魔戦刃』のラウルとラーバスを退けたリオネスたちは、引き続き帝都の地下道を進んでいた。
途中で合流したマグナはキャロル、エルザとともに別ルートで帝都に向かっている。
【ブラックホール】で暴れれば、かなり目を引くことになるはずだから、陽動になるだろう。
その間にリオネスとSSSランク冒険者の魔法使いクルーガー、武闘家レイアの三人で地下道から帝城を目指す。
目的は、捕らわれた勇者ベアトリーチェを救い出すこと。
すでに自分たちの侵入は皇帝にバレているだろう。
それでも行けるところまでは行くつもりだった。
「帝城は、近い──」
リオネスは気を引き締め直した。
城が近いということは、当然警備も厳重になるということだ。
目的である勇者ベアトリーチェ奪還に向けて、ここからが正念場だった。
敵の切り札である超魔戦刃や、他にも皇帝の側を固める猛者たちが差し向けられてくるかもしれない──。
「あれ? マグナ・クラウドって人はいないの~?」
無邪気な声が響いたのは、そのときだった。
「なんだ──」
いつの間に現れたのか、一人の少年がそこに立っている。
年齢十歳前後くらいの愛らしい顔立ち。
背中から伸びる真紅の翼は天使を連想させた。
だが──その全身から押し寄せる激烈な威圧感は、少年が天使などではなくむしろ悪魔なのだと知らしめてくる。
「誰だ……お前は」
リオネスは最大級の警戒をもって問いかけた。
四天聖剣である自分ですら、彼の接近にまったく気付くことができなかった。
ただ者ではない。
左右にいるクルーガーとレイアからも緊張している気配が伝わってきた。
「名前はポルカだよ。鳳炎帝、なんて仰々しい称号もあるけどね」
少年が無邪気に笑う。
「な、何……!?」
鳳炎帝。
それは、魔王の側近であり最強クラスの魔族である『七大魔軍長』の中でも、隔絶した力を持つと噂される魔族の称号だ。
「まさか、こんな小さな少年が……!?」
リオネスが彼を見据える。
もちろん、魔族なのだから見た目通りの年齢とは限らない。
だが、一説には魔王よりも強いとされる『鳳炎帝』のあどけない顔立ちは、リオネスを大いに戸惑わせた。
「ん、どうしたの? 僕の顔に何かついてるかな?」
ポルカはニコニコ顔だ。
まるで邪気のない、朗らかな笑顔。
いかにも人畜無害そうな笑顔。
だからこそ、不気味だ。
底知れない何かを感じる。
「マグナ・クラウドはものすごく強いって聞いたからさ。戦ってみようと思って~。魔界には僕にかなう相手はもういないし、ここに来ても『人類最強』とか偉そうにしてた四天聖剣でさえ、僕に手も足も出ないし……もう退屈で退屈で~」
あっけらかんと笑うポルカ。
(四天聖剣を倒した、だと)
リオネスが表情をこわばらせた。
「まさか、お前はセルジュを──」
彼が帝国の手の者だとしたら、国境線沿いでセルジュと交戦したのだろうか。
「セルジュ? そんな名前だったかな~? 弱い奴の名前は覚えてないや」
ポルカが肩をすくめた。
「確か二人がかりで火や土のスキルを使ってきたはずだよ」
「……コーデリアとラーバインのほうか」
リオネスがうめいた。
それぞれが『火』と『土』の熾天使級奇蹟兵装を操る四天聖剣である。
それが二人まとめて、彼に倒されたというのか……。
体が、ひとりでに震えだす。
リオネスは、己が恐怖していることを自覚した。
今まで、どんな敵を相手にしても抱いたことのない感情だ。
今まで、どんな敵を相手にしても負けるなどとは微塵も思わなかったというのに。
(私は……この魔族に勝てないかもしれない……!)
あるいは生まれて初めてかもしれない不安や恐怖、プレッシャーが、全身を鉛のように重くしていく──。
次話も今日中に投稿予定です。章のラストまで書き溜めてあるので連日投稿していくと思います。
なお本作品はこの章で完結となります。あと10話程度ですが、お付き合いいただけましたら幸いです。
また本作品と並行して、『元世界最強のアラフォー『黒き剣帝』、スキルで全盛期の力を取り戻して無双ハーレム』という作品も更新中ですので、そちらもお読みいただけると嬉しいです。下のリンクから作品ページに飛べます。





