1 決戦への出立
かなり間が空いてしまいました(汗
13章スタートです。
「戻ってきた……のか」
俺はラエルギア王城の客室内に立っていた。
そう、【ブラックホール】の内部世界──『虚空の領域』に入る直前にいた場所だ。
ラグディアとの一戦を終え、俺はすぐにここまで戻ってきた。
一緒にいたルネは、同じように彼が直前にいた場所へと戻しておいた。
で、
「今は、いつなんだ?」
窓の外を見る。
すでに外は明るかった。
「……少なくとも夜じゃないな」
場所に関しては、元の位置に帰って来られるんだけど、時間については戻ってくるときに多少のズレが出るかもしれない、と『領域』の管理者【虚空の焔】──フレアが言っていた。
あの日の翌朝にキャロルたちが帝国へと出発したはずだから、なんとか合流したい。
窓の外を見た感じ、すでに昼近くか、あるいはもっと──。
「『領域』に入ったときから、あまり時間が開いてなければいいんだけど……とにかく急ぐか」
不安に思いつつ、俺は客室を出た。
数時間の開きで済めば、まだマシだ。
もしも数日、あるいは数週間も開いていたら──。
いや、不安は置いておいて、とにかく進もう。
それにキャロルやエルザは、あの人類最強戦力──『四天聖剣』のリオネスやSSSランク冒険者のクルーガー、レイアと一緒なんだ。
よほどの強敵が現れないかぎりは、まず大丈夫だろう。
俺は古代遺跡の地下を進んだ。
もともとの手はずは、このルートから極秘裏に帝都へ潜入し、勇者ベアトリーチェ奪還任務に移る──というものだった。
計画通りに進んでいるなら、この遺跡を進んでいけば、キャロルたちと合流できるはず。
道中は、順調だった。
しゅおんっ……!
しゅおんっ……!
しゅおんっ……!
【ブラックホール】のおかげで罠のたぐいも、群生しているモンスターも、全部瞬殺である。
キャロルたちは罠を解除したり、モンスターで足止めされたりしながらの道程だろうから、それをフリーパスできる俺のほうが格段に速いはず。
案の定、数時間進むと前方に彼女たちを発見した。
無事に合流を果たす。
「マグナさん、よかった……来てくれたのです!」
「遅いわよ、マグナ!」
キャロルとエルザが歓声を上げる。
「悪い、遅れた」
俺は頭を下げ、それからリオネスたちに向き直る。
「ここからは俺も一緒に行くよ」
「こちらも消耗している。あてにしているぞ、マグナ・クラウド」
リオネスが微笑した。
あれ、なんか妙に表情が柔らかいような……?
もっと、『冒険者なんて足手まといだ』みたいなキャラだったはずだけど。
「強敵との戦いで、仲間と連携することも大切だって、ちょっとは分かってくれたみたいでな」
と、これはクルーガー。
「そうそう。ボクたちがいなきゃ、リオネス負けてたし」
「いや、それは大いに異議がある。私は一人でも勝っていた。多少苦戦したことは認めるが……」
プライドの高さは変わらず、か。
俺は内心で苦笑した。
「けど、隠密行動は難しくなったんじゃないか? 超魔戦刃が待ち構えていた、ってことは、俺たちの行動は皇帝に予測されてるってことだろ」
と、俺。
「それにリオネスたちが超魔戦刃を倒したことは、たぶん皇帝にも伝わってるだろうし……」
「ああ、ここからは正面突破も織り交ぜて行く」
リオネスが言った。
「だが、ベアトリーチェの奪還任務はどうする。もともと隠密行動をしていたのは、極秘裏に彼女の下まで潜入するためだ」
クルーガーがたずねた。
「『織り交ぜて』と言っただろう。正確には、正面突破に切り替えた──と見せかけて、実際には別動隊が引きつづき隠密行動をとり、ベアトリーチェを奪還する。つまり」
「二手に分かれる、ってことか。で、正面突破組は陽動に徹する」
「そういうことだ」
俺の言葉にうなずくリオネス。
じゃあ、俺は派手に陽動をすればいいわけか。
「さっそく【ブラックホール】の力を見せてやる」
フレアとの修行で対人能力を磨いた、新しい【ブラックホール】の──。
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