6 天軍兵器の脅威
「今度こそ魔族どもを残らず吹き飛ばしてくれよう!」
「先ほどに倍する威力の神気弾でな!」
六体の天軍兵器がふたたびオーラを発する。
さっきの光弾をまた撃ってくるつもりなんだろう。
「『メガサンダー』!」
魔王が雷撃の呪文を放った。
「今度は雷系の最強呪文……しかも、ほぼノータイムで連発……!?」
エルザが驚愕の声をもらす。
確かに、無尽蔵ともいえるすさまじい魔力だ。
魔王の雷は、十キロ先にいる天軍兵器たちに向かって浴びせられ──。
「……この程度では、やはり駄目か」
うめくフリード。
最強の雷撃呪文は天軍兵器六体のオーラに阻まれ、霧散してしまったのだ。
「次元鏡面防御ですね。六体分の出力を全開にして、周囲の空間をねじ曲げる防御フィールドを展開しているようです」
と、ステラ。
「メガ系呪文でも、おそらく効果は薄いでしょう」
そのときだった。
「合体形態『光の王』に移行する」
六体のうちの三体──『天想覇王』たちが告げた。
次の瞬間、三体は一つに融合し、より巨大なシルエットが出現する。
十二枚の翼を生やした、純白の騎士である。
「だが、この形態ですら一度は魔王に敗れた。ゆえに──神よ、我らにさらなる力を!」
『光の王』が叫んだ。
──最終合体、承認!
空の彼方から、荘厳な声が響き渡る。
十二枚の翼を広げ、『光の王』が飛び上がった。
そこに三体の天想機王が吸い寄せられていく。
それぞれがいくつものパーツに分解し、まるで鎧のように『光の王』の各部に装着された。
背中からは『雷の王』の長大な翼が。
両手足には『氷の王』の九つの頭が絡みつき、籠手や足甲に。
そして胸元には『土の王』の、竜の顔が。
一回りほど巨大になった『光の王』が大地に降り立った。
地響きとともに、大量の土くれが吹き上がる。
くおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおんっ!
咆哮が響く。
ただそれだけで──吠え声一つで、周囲の空間に亀裂が走った。
さっきまでとは比べ物にならないほどの、強烈な『力』の気配を感じる。
「我は……『超光の王』! 魔界のすべてを滅ぼす聖なる兵器なり!」
振り下ろした剣から、虹色の衝撃波が放たれた。
「『メガウインド』!」
魔王は風系の最強呪文を放つ。
衝撃波が、その風を切り裂き、魔界の大地を両断する。
「ちいっ、『ラグナボム』!」
魔王は高火力呪文を連発した。
衝撃波を相殺するものの、前方には巨大なクレーターができていた。
「あれが王都に放たれたら──住民は全滅だ」
うめく魔王。
苦々しい声には、王都の住民に対する思いが込められている気がした。
魔族を、守りたい。
ただその一心で、魔王は天軍兵器と戦っている──。
「接近して『収斂型・虚空の斬撃』で空間ごと切り裂くしかない……来い、冥帝竜」
呼びかけると、空から巨大な竜が飛んできた。
「こいつに乗って、あのデカブツまで近づく。お前たちは攻撃の余波を受けないように下がっていろ」
魔王が言った。
単身であの天軍兵器と立ち向かうつもりなんだろう。
だけど──、
「俺も手伝うよ」
進み出る、俺。
「マグナ……?」
人間だろうと魔族だろうと。
人間界だろうと魔界だろうと。
誰かを守りたい、という思いに変わりはない。
相手が魔王だろうと関係ない。
俺は、こいつの助けになりたい。
自然と、そんな気持ちが湧き上がってきたんだ──。





