4 過去と現在からの襲来1
俺とキャロル、エルザの三人は突然、未来の魔界……と思われる場所に迷いこんでしまった。
原因は不明だ。
とりあえず元の世界に戻る方法を探し、魔界を進んだ。
そこで出会ったのが、フリードと名乗る魔王と魔軍長のステラ。
フリードの話では、俺たちの世界の魔王エストラームは、過去の魔王なのだという。
つまり、ここは未来の世界ってことだ。
『人間界に戻る方法はないのか?』
そうたずねたところ、魔界から人間界に行くのは比較的簡単だという答えが返ってきた。
ただし──問題が一つあった。
仮にここから人間界に戻ったとしても、そこは俺たちのいた世界じゃない。
未来の人間界である。
元の場所に戻る、という根本的な解決にはなっていないのだ。
かといって、ずっと魔界に留まるよりは、たとえ未来の世界でも人間界に移動しておくべきだろうか。
フリードやステラは俺たちに敵対する感じではないけど、すべての魔族がそうだとは限らない。
魔界に留まれば、いずれ強大な魔族に襲われるかもしれない。
「時空を超える方法があれば、お前たちが元の世界に戻ることも可能だろう。だが、俺の手持ちの呪文の中には、時間移動系のものはなさそうだ」
魔王フリードが言った。
空中に無数の文字が浮かび上がっているが、もしかして、これは魔王が使用可能な呪文のリストだろうか。
ざっと見ただけで数千個はありそうなんだが……。
さすがは、魔王って感じだ。
「せめて、お前たちがこの時代にやって来た方法が分かれば──そうだ、ステラの『眼』で何か分からないか?」
と、美少女魔族の方を向く。
「……ステラ?」
彼女はキャロルをジッと見つめていた。
性格にはその狐耳と尻尾を。
「ん? もしかして、モフモフしたいの?」
エルザがキョトンと首をかしげた。
「えっ、そうなのです?」
キャロルもキョトンと首をかしげた。
「な、ななななな何を言うかっ!? 私は、別に、その……触ったら気持ちよさそうだな、とか、そ、そんなことは考えていないっ」
ステラが明らかに動揺している。
おお、分かりやすい……。
「んー、お近づきの印に少しモフモフしますか?」
キャロルがステラに近づいた。
「な、何? いいのか?」
「えへへ、あんまり触られるとくすぐったいので、ちょっとだけなのです」
「では……」
ステラがおそるおそるといった感じでキャロルの狐耳に触れた。
「おお、柔らかい! オリヴィエと同じくらい気持ちがいい」
「オリヴィエ?」
「私と同じ魔軍長に九尾の狐がいるのだ……前にちょっとだけ、もふもふさせてもらったことが……もふもふもふ」
説明しながら、ステラはうっとりした顔でキャロルの狐耳をもふっている。
うう、羨ましい。
「そういえば──」
俺はここに来たときのことを思いだしていた。
「モンスター退治のクエストを受けて、スキルを使ったんだけど……その最中に魔界に迷いこんだんだと思う」
「スキル、か」
「俺のスキルは【虚空の封環】っていって、なんでも吸いこめる──」
俺が言いかけたそのとき、
ごごごごごごごごごごごごごごごっ!
突然の轟音が鳴り響いた。
この感じは──。
「似てるぞ、俺が魔界に来たときと──」
周囲の空間が、歪み始めていた。





