1 虚空の封環と史上最強の魔王1
書籍版1巻発売を記念して、本作と同じ世界を描いた作品『』とのコラボ番外編を書いてみました。
『愛弟子~』に導入部、本編は主に『ブラックホール』側で、という感じです(『ブラックホール』サイドだけでも意味が通じるように書いてあります)。
『愛弟子~』は下部リンクから作品ページに飛べますので、よろしければ~!
『ブラックホール』『愛弟子』本編となるべく矛盾しないように書いていきたい……矛盾してたら、パラレルってことで一つ(´・ω・`)
時系列は……はっきり決めてませんw 愛弟子~の方は8章終了後です(´・ω・`)
俺の【ブラックホール】は戦いを重ねるごとに、レベルが上がっていく。
威力や効果なども、それに比例して強くなっていく。
もしかしたら──強くなりすぎたんだろうか。
俺が『彼ら』に出会ったのは、それがきっかけだった。
その日、冒険者としてモンスター退治のクエストを受けた俺は、いつも通りに【ブラックホール】で瞬殺した。
──と、そこまではよかったんだけど。
ぎゅお……んっ。
「これは……!?」
景色が、おかしい。
今まで深い森の中にいたはずなのに、突然周囲の木々が異様に歪み始めたのだ。
地面も激しく揺れている。
空が割れていく。
「な、何が起きているのです……!?」
おびえた顔で周囲を見回すキャロル。
「ち、ちょっと、マグナ……どうなってるのよ?」
エルザも不安げな顔で背負った盾──奇蹟兵装を構えている。
「俺にも分からない……なんだよ、これ……!?」
次の瞬間、俺たちは見知らぬ場所に立っていた。
黒い空と大地がどこまでも広がっている。
まさしく、暗黒の世界。
遠くからは雷鳴が聞こえた。
時折、稲光が周囲をまばゆく照らすのが、また不気味だ。
「魔界──」
キャロルが息を飲んだ。
「えっ」
「あたしの里は魔界と通じていて、子どものころにちょっとだけ見たことがあるのです。ここはたぶん……魔界だと思うのです」
「魔界って……あの魔界だよな?」
突然のことに驚きより呆然としていた。
魔族の住まう、暗黒の世界──。
おとぎ話では聞いたことがあるけど、もちろん訪れたことなんてない。
あるわけが、ない。
「その魔界なのです……ひええ」
うなずくキャロル。
おびえからか、狐耳がせわしなく動いている。
うう、もふもふして落ち着かせてやりたい。
こんなときなのに、ムズムズとした衝動がこみ上げる。
隣を見ると、エルザがソワソワしている。
俺と同じ衝動に駆られてるんだろうか?
だって、もふもふだもんな。
当然のことだ、うん。
「太陽がいっさい差さない、暗黒の世界……と聞いたことがあるのです」
「確かに太陽が出てないわね」
エルザが空を見上げて言った。
空は、一面の曇天だ。
不気味な気配を含んだ空気が周囲に漂っている。
瘴気ってやつだろうか。
「もしかして……」
キャロルがハッとした顔になった。
「何か気づいたのか?」
「いえ、まさか……なのです」
キャロルが首を左右に振る。
「ただの思いつきなのです。確証はありませんし……」
「思いつきでもいいから教えてくれ」
「私も気になるわ」
「きゃんっ、脈絡もなくもふもふするのはだめなのです」
エルザがさりげなくキャロルの狐耳を触っていた。
「あ、ごめんなさい。不安を和らげるために」
ずるいぞ、エルザ。
俺だってもふもふしたい。
うおおおおおおおおおおおおんっ。
突然、咆哮が響いた。
ぼごぉっ!
前方の地面が盛り上がり、弾け、その下から何かが出現する。
銀色の装甲に覆われた、四足獣。
獅子を思わせる顔つきとタテガミ。
赤く輝く双眸が、俺たちをにらんでいる。
「なんだ、こいつ。魔族か……?」
「いえ、ちょっと匂いが違うのです~」
と、キャロル。
「魔族じゃないわ。自律型の奇蹟兵装よ」
エルザが険しい表情で告げた。





