8 初めての邂逅
【書籍化のお知らせ】
本作が双葉社・モンスター文庫様から書籍化されることになりました。8月30日発売予定。イラスト担当は、ちた先生です。
これも応援してくださった読者の方々のおかげです。本当にありがとうございました。
書籍化の詳細は別途報告させていただきます~!
「こうして話すのは初めてだな、マグナ・クラウド」
ルネと名乗った魔族が言った。
ん、こいつは俺のことを知っているのか?
「以前に九尾の里に派遣されたときに、お前の戦いぶりを見せてもらった」
と、ルネ。
ニヤリと獰猛な笑みを浮かべる。
「【ブラックホール】。あらゆるものを吸引し、問答無用で打ち倒す──圧倒的なスキルだよな。最強ってのは、お前のために──お前が振るう力のためにあるような言葉だ。俺はそう思ったんだ」
「えっ?」
「魔界のパレードで魔王様や最高幹部である魔軍長を見たときも、ここまでの気持ちにはならなかった。お前は──すごい奴だよ、マグナ」
キラキラと憧れのまなざしで俺を見るルネ。
なんだ、なんだ?
魔族のくせに、俺のファン……?
妙な奴だった。
「そうそう、僕との訓練中も君の話ばかりしていたからね、ルネくんは」
楽しげに笑ったのは、飄々とした雰囲気の中年兵士──ラグディアだ。
「君に──マグナくんの強さに、憧れているんだよ」
「……ふん」
ルネは小さく鼻を鳴らした。
その頬が、わずかに赤い。
勝ち気な態度は崩していないが、実は照れているんだろうか。
「どう、よかったらルネくんと手合せしてみたら?」
と、ラグディア。
敵のくせに、妙にフレンドリーな奴だ。
前回は戦場で会ったからか、もうちょっとピリピリしていたけれど。
「手合せか……面白いじゃねーか!」
ルネが嬉しそうに叫ぶ。
「俺はラグディアとの訓練で圧倒的に強くなった。今なら、お前のスキルに対抗できるかもしれない」
剣を抜くルネ。
身の丈を超える、鉄板のように幅広の大剣だった。
それを片手で軽々と振り回し、構える。
なんだか、妙な流れになってるぞ。
いや、そもそも──。
俺はラグディアに視線を移した。
「ルネのことはよく分からないけど、お前は帝国の兵士だろ。俺とは敵同士じゃないのか」
「んー……まあ、そうだけどさ。いきなりこんな空間に迷いこんだし、とりあえずは情報収集っていうか」
ラグディアは相変わらず飄々としている。
「たとえば、君をいきなり殺して、ここから永遠に出られなくなる──なんてオチはごめんだからね」
「あなたたちは、なぜここに現れたのです」
フレアが話題を変えてたずねた。
斬りつけるような瞳で、ルネとラグディアを見据えている。
俺に対しての柔和な笑顔から一転、凛々しくも厳しい表情だった。
美人なだけに迫力がすごい。
「さあ? 僕にもよく分からないんだよ」
ラグディアが肩をすくめた。
「俺はこいつと戦闘訓練をしていた。その途中で突然あたりが光に包まれたかと思ったら、ここにいた、ってわけだ」
と、ルネ。
「てっきりお前が俺たちを呼んだのかと思ったが」
「いや、俺のスキルにそんな能力はない──よな?」
ちらっとフレアを見る。
もしかして、俺が知らないだけで【ブラックホール】にはそんなスキル効果が秘められていたりするんだろうか?
空間移動そして召喚。
フレアはあいまいな笑みを浮かべ、首を左右に振った。
「理由は分からないが、とにかくせっかく会ったんだ。一手ご指南願いたいな」
ルネが大剣を構え直す。
いや、ちょっと待て。
俺はここでは限定的なスキルしか使えないんだが……。
「──なるほど」
フレアは何事かを思案した様子で、俺に近づいてきた。
「ん?」
「少し付き合ってあげてはいかがでしょう、王よ」
と、俺に耳打ちするフレア。
「えっ?」
「レッスンツーです。スキルへの語りかけと精密操作。それをより実戦に近いシチュエーションで、ね」
にっこり笑ったフレアの狐耳が、ぴょこん、と可愛く揺れた。
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今回もカンザリン先生の素敵なイラストや書き下ろしエピソード(書籍版でしか読めない外伝)を2編収録しています。
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