7 勇者と冒険者2
二体の超魔戦刃から黒いオーラが立ち上る。
そして──、
「融合……合体!」
二体の声が唱和した。
彼らが発するオーラが混じりあい、超魔戦刃の体自体も輝きに包まれ、一つに溶け合い──。
閃光が、弾けた。
「ま、まぶしいのです~!」
キャロルは思わず悲鳴を上げた。
特に、人間よりもはるかに視力がいい彼女は、目に強烈な痛みを覚える。
やがて、その輝きが徐々に薄れていき──。
「あれは──!」
驚きの声を、誰かが上げる。
キャロルはゆっくりと目を開いた。
まだ痛みが残る目に、少しずつ視界が戻ってくる。
そこには、小柄な少年が立っていた。
ラウルの面影を残しつつも、ラーバスの精悍さを併せ持ったような野性味あふれる少年。
身にまとう黒い衣。
その背からは翼が生え、額には第三の瞳が開いている。
「貴重な超魔戦刃を二体費やし、合体させることで誕生する超戦士──融合合体・超魔戦刃」
合体ラウルともいうべき少年が告げた。
「一度合体すれば、二度と元には戻れない。ただし、それだけの代償を払う価値がある。この強さには──」
同時に、彼の姿が消えた。
「がっ!?」
リオネスの、苦鳴。
すさまじい勢いで突進した合体ラウルが、体当たりで彼を吹っ飛ばしたのだ。
「この私の目でも捉えきれんだと──」
「ほらほら、遅いぜ!」
さらに二撃、三撃。
拳や蹴りを受け、後退するリオネス。
「ちいっ!」
リオネスは大きく跳び下がり、体勢を整えると反撃を繰り出した。
青く輝く剣から水流と光弾が放たれる。
「だから遅いって!」
合体ラウルは超スピードでもって、やすやすと回避する。
「このっ……『トルネードボム』!」
「ボクだっているんだからね!」
クルーガーが竜巻の爆弾を次々に放ち、呼吸法で身体能力を倍加させたレイアが突進する。
だが、いずれも合体ラウルに触れることさえできない。
「きゃあっ……!」
反撃の蹴りを受けて、レイアが吹っ飛ばされた。
さらに合体ラウルが放った黒い衝撃波がリオネスを、クルーガーを、弾き飛ばす。
「速すぎて防御するタイミングがつかめない──」
エルザは背中から盾を抜いたまま、動けないようだ。
「はははは、あっという間に形勢逆転だな!」
勝ち誇る合体ラウル。
「おのれ……いきなりデタラメな強さになりおって」
リオネスがうめきながら、剣を支えに立ち上がった。
身に着けた東部大陸風の道着はあちこちが破れ、血がにじんでいる。
「今、治癒するのです~!」
キャロルは慌てて治癒の術を発動した。
リオネスを、クルーガーを、レイアを。
ダメージを負った三人の傷をまとめて治す。
「ふうっ……」
キャロルは大きく息をついた。
全身が鉛のように重い。
一度に傷の治療をしたため、疲労が大きかったのだ。
「ありがと、キャロルちゃん」
「これでまだ戦える──感謝するぜ」
レイアとクルーガーがキャロルに礼を言った。
「とはいえ、ピンチには変わりないか……どうしたもんかね」
「……最初からあの技を使わなかったのには、何か理由があるはずだ」
リオネスがつぶやいた。
「あまりにも強すぎる。貴重な戦力が二体から一体に減ってしまうというリスクを考えても、ありあまるほどのメリットだろう。なのに最初から使わなかった──使えなかったのか、使いたくなかったのか」
「確かに──」
「だね」
うなずきあうクルーガーとレイア。
「奴の動きには違和感がある」
リオネスが言った。
「言葉では上手く表せないが、不自然な部分があるのだ。あれほど圧倒的なパワーとスピードを持ちながら、何かが欠けている──」
と、リオネス。
「おそらくそれが──さっき言った理由に直結しているのだろう。それを見極めることさえできれば勝機はある。だが奴の攻撃力が高すぎて、こちらは防戦一方だ。奴の動きを見極めるタイミングが取れない」
「なら、私が盾になるわ」
進み出たのはエルザだった。
「エルザさん!?」
「私には他の人たちみたいな攻撃能力はない。だけど、この『奇蹟兵装アイギス』の『無敵の盾』ならしばらくは耐えられるかもしれない」
「囮になる、というのか……?」
リオネスが驚いたようにたずねる。
「時間稼ぎよ。その間に見極めてね」
エルザは、ぱちん、と可愛らしくウインクした。
「私だって勇者なんだから。私なりの役目を果たしてみせる──」
今にも陥落しそうですが、まだなんとか日間ハイファンタジーランキングにとどまっているようです……ありがたやありがたや(´Д⊂ヽ
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