表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/168

11 闇の剣士と超魔戦刃2

「飢えてる……だと」


 ルネがポルカをにらんだ。


「最強になった者の宿命だね。僕がその気になれば、魔王エストラーム様にだって勝てる自信があるよ」

「っ……!」


 不遜極まりない台詞だった。


 魔王に勝てる──そんな言葉を一言でも口にしようものなら、千年続く苦痛を与えられ、永遠に牢獄で幽閉されるだろう。


 だが──ポルカだけは許される。


 ルネは聞いたことがあった。


 鳳炎帝ポルカはいかなるものにも縛られない。

 そう、魔界の法でさえも。


 魔王エストラームが直々に彼に与えた特権だ。

 噂ではポルカを魔軍長に引き入れるために──ということだが。


 目の前の少年には、魔王が特権を与えるほどの価値があるということか。

 そして、それだけの強さが。


「だから、ハンデを上げるよ。僕に一撃でも当てられれば、君たちの勝ちだ」

「君……たち(・・)?」

「二対一さ。これもハンデだね」


 楽しげなポルカ。


「マグナ・クラウドっていう人間がすごいスキルを持ってるらしいんだけどね。いきなり戦って、すぐに殺しちゃったら、楽しみがなくなるでしょ? だから、先にここまで来たんだ」


 ポルカがニヤリとする。


「君たちくらいなら、ほどよく楽しめそうだ。ほら、あれだよ。マグナくんがメインなら、君たちは前菜ってとこ」

「面白え」


 ルネはどう猛にうなった。


「まずは10%の力で遊んであげよう。さあ、どうぞ」

「へっ、10%で足りるのか?」


 告げて、床を蹴るルネ。


 防御を考えない攻撃特化の動き──得意とする捨て身の突進だ。


「へえ……」


 ポルカの目がわずかに細まった。


「僕もお忘れなくっ」


 さらに逆方向からはラグディアが背中の触手を伸ばす。

 まるで刃のように尖った数本の触手を、


「無駄だよ」


 魔軍長最強の少年は、手刀でなんなく両断する。


「……? この触手は」


 何かに気付いたかのように、眉を寄せるポルカ。


「スキルが……進化しかけている……!?」

「ボーっとしてんじゃねーよ!」


 その隙にルネが距離を詰めた。


 全体重を乗せ、大剣を突き出す。

 亜音速に達した剣先が大気を切り裂き、ポルカに迫る。


「ふーん……?」


 その一撃を、鳳炎帝は指先一本で止めてみせた。


「くっ……!?」


 ルネは剣を突き出した姿勢のまま、硬直した。


 ビクともしない。

 自分の全力が、ポルカの指一本にも及ばない──。


「足りないどころか、10%でも余りそうだね」


 中性的な美貌に薄い笑みが浮かんだ。


 嘲笑──ではない。

 あまりの力の差を憐れむような笑み。


 嘲笑以上に屈辱的な、笑み。


「もっと減らそうか? 実力の5%程度でも、君たち相手なら十分だ」

「てめえ……」


 ルネは、ぎりっ、と奥歯を噛みしめた。


「ちょっと期待外れだなぁ。やっぱりここに寄らずに、直接マグナくんの元へ向かった方がよかったか──」


 笑顔のままで、鳳炎帝はすさまじいプレッシャーを放出する。


 以前、四天聖剣のリオネスと対峙したときに、その威圧感に竜のような映像を幻視した。


 対して、ポルカのそれは鳳凰のイメージ。

 全身を押しつぶすような、すさまじい畏怖。


「けど──今さら恐れるつもりはねーよ」


 退くつもりも、ない。


「最強だろうが、天才だろうが、関係ねぇっ!」


 ルネは床を蹴破る勢いで踏みこみ、跳び上がった。


「俺を──舐めるなぁっ!」


 体を大きくしならせ、全力の打ちおろしを繰り出す。


 封神斬術、戦牙刃(せんがじん)だ。


「無駄だって……ふうっ」


 ポルカは、今度は指どころか、吐息一つでルネを吹き飛ばした。


「無駄じゃねえっ!」


 空中で器用に体勢を立て直すと、ルネは大剣を投げつける。


「武器を手放してどうするのさ?」


 手刀であっさりとそれを弾き返すポルカ。

 着地したルネは、


「武器ならあるさ──」


 切断されて地面に転がっているラグディアの触手をつかんだ。


 右手と左手に、一本ずつ。


「二刀流!?」

「おおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 ふたたび捨て身の突進を敢行しつつ、以前に戦ったSSSランク冒険者ヴルムの二刀流剣技を思い出し、自分なりに再現する。


 右手に持った触手は、ポルカの指先に止められる。

 左手に持った触手は、ポルカの吐息に弾き飛ばされる。


「やっぱり無駄──」

「言ったはずだ、舐めるなって──な!」


 ルネはさらに踏みこんだ。


「!? がっ……!」


 そのまま、渾身の頭突きを食らわせる。


 華奢な少年魔族はよろめき、数歩後ずさった。


「はあ、はあ、はあ……」


 一方のルネは、それ以上動けない。


 体の限界をはるかに超える高速機動を連続したせいだ。

 四肢が軋むように痛む。


「頭突きとはね……ちょっと虚を衝かれちゃったよ」


 苦笑するポルカ。


「最初から狙ってたの?」

「へっ、体が勝手に動いただけだ」


 ルネは吐き捨てた。


「今のは僕の負けだね」

「……全力の一割しか出してない奴に一発当てたくらいで勝ち誇るつもりはねーよ」

「いや、勝負は勝負さ。君、すごいねぇ」


 ポルカは目を輝かせた。


「しかも、まだまだ伸び代が無限に見える。いずれは、僕よりも強くなるかもね──楽しみだ」

次回から第11章「決戦開始編」になります。

四週間ほどお休みさせていただき、3月19日(火)から更新再開予定です。

確定申告やら文章仕事やらで多少立て込んでいるので、少し期間が空きますが、気長にお待ちいただけましたら幸いです。


「面白かった」と思っていただけましたら、感想やブックマーク、最新話の下部にある評価を押していただけると励みになります(*´∀`*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


▼書籍化作品です! タイトルクリックで小説ページに飛べます!▼

☆黒き剣帝 元最強のアラフォー全盛期を取り戻して無双ハーレム

▼ノベマ限定作品です。グラスト大賞に応募中! 応援していただけたら嬉しいです!▼

☆冴えないおっさん、竜王のうっかりミスでレベル1000になり、冒険者学校を成り上がり無双

なんでも吸い込む! ブラックホール!! (´・ω・`)ノ●~~~~ (゜ロ゜;ノ)ノ
あらゆる敵を「しゅおんっ」と吸い込んで無双する!!!

モンスター文庫様から2巻まで発売中です! 画像クリックで公式ページに飛びます
eyrj970tur8fniz5xf1gb03grwt_p5n_ya_1d3_y





ツギクルバナー

cont_access.php?citi_cont_id=314270952&s

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ