8 虚空の領域・第三の扉
特に深い意味はないんですが、なんとなくの気分でタイトルに顔文字を増やしてみました。ながったらしいタイトルになっちった(´・ω・`)
作戦決行は明朝と決まった。
俺はキャロルやエルザとともに用意された客室に向かう。
「なあ、どうしてベアトリーチェって人をそこまで重要視してるんだ?」
長い廊下を歩く途中、俺はエルザにたずねた。
「四天聖剣が二人も派遣されて、国の上層部と取引して──」
「彼女が唯一無二の『空間操作』系の奇蹟兵装の使い手だからよ」
と、エルザ。
あくまで噂レベルだけど、と前置きし、
「ギルド上層部はその力を使って、何かをしようとしているらしいの。かなり重要な何かを、ね。ただベアトリーチェさんは気まぐれな性格らしくて、なかなか言うことを聞いてくれないとか」
「気まぐれなのか……」
「勇者になったのも、単なる好奇心かららしいし。ギルドからの魔族討伐命令も『面倒だから』とか『急にお腹が痛くなった』とか、なんだかんだ理由をつけて、全部断っているらしいわ」
苦笑交じりに説明するエルザ。
「普通なら勇者をクビになるところだけど、彼女はとにかく唯一無二の能力を持っているから、そういうわけにもいかないみたいね。ギルドも扱いに困っている問題児──という感じらしいわよ」
「問題児かー」
「勇者にも色々な方がいるのですね」
俺とキャロルは顔を見合わせる。
エルザはますます苦笑を強め、
「そうこうしているうちに帝国にさらわれてしまったから、必死で取り返そうとしている──という感じでしょうね」
うーん……具体的なことは分からないが、彼女が重要人物であることはなんとなく分かった。
「まあ、協力するって決めたんだし、全力を尽くそう」
「がんばるのです」
可愛らしく拳を握るキャロル。
「私も……といっても、マグナのスキルで目的地まで突き進むだけになりそうだけど」
その隣でエルザが笑った。
「突き進む……か」
ただ、今回の相手は基本的に帝国兵になるだろう。
つまり──魔族やモンスターじゃなく、人間が相手だ。
「マグナさん、前に『対人』のスキルを磨くと言ってましたよね?」
俺の内心を読んだようにキャロルがたずねた。
「明日の朝までにちょっと訓練しようと思ってる」
俺は答えた。
「【虚空の領域】に行って、な」
「前に入ったことがある、あの不思議な世界ですね」
「ああ。ただあの世界とここでは時間の流れが違うから、作戦に間に合わない可能性もないわけじゃない。前の感じだと、たぶん似た時間帯に戻れそうだけど──」
俺はキャロルとエルザを見て、言った。
「だから、万が一のときには、そのことをリオネスやクルーガーに連絡してほしい。頼めるか?」
「つまり、あたしたちは一緒に行けない、ということなのです?」
「今回は俺一人で行くよ」
ちょうど客室の前に到着した。
「お休み、二人とも」
「がんばってくださいなのです、マグナさん」
「気を付けてね」
「ああ、行ってくる」
キャロルとエルザに別れを告げ、俺は客室に入った。
そして──。
俺はみたび【虚空の領域】にやって来た。
あいかわらず灰色一色の風景だ。
俺が今いるのは第三層。
先日の戦いで、この領域まで入る資格を得たのである。
と、
「お久しぶりです、王よ」
涼しげな声が響いた。
「お前──」
近づいてきたのは、炎のように揺らめく黒いローブ姿の人物。
フードの奥から赤い瞳が俺を見つめた。
【虚空の焔】。
この世界の管理者である。
「ふたたびお目にかかれて光栄です」
言いながら、【虚空の焔】がフードを上げる。
その下から現れた顔は──。
息を飲むような、絶世の美女だった。
次回更新は2月5日(火)です。





